何者のレビュー・感想・評価
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"新旧"若手実力派俳優たちが類型を凌駕!
生活のために就活せざるを得ない就活生、人生の理想を実現したい就活生、自分のスキルをどう活用すべきかが実は分かってない就活生、就活になど意味はないと言いつつ説明会会場へと急ぐ就活生、そして、そんな彼らを冷徹な目で分析しているだけの就活生である主人公、拓人も含めて、自分が"何者"かを探しあぐねている若者たちを通して、改めて、我が道を往くことの過酷さが浮かび上がる。各キャラクターを演じる"新旧"若手実力派俳優たちから、類型を凌駕する力演を引き出せたのは、監督の三浦大輔自身が劇作家として険しい道を歩んできた人であり、没個性へとひた走る日本社会に強い危惧感と怒りを感じているからではないだろうか。
就活ドラマ
Twitterなつかしい
吉田修一VS朝井リョウ その2
若者の空気感を「外から観察する」吉田修一と「内から暴く」朝井リョウ、どっちが心にヒットするのか?勝手な試みだけど、「パレード」を観たからこそ「何者」は面白い。
「何者」には、傍観者でいることを許さない吸引力があると思う。
就活対策本部、という名目で一部屋に集まる5人の男女。生活を共にするわけではないが、「就職」という人生の一大イベントを分かち合う行為は、私みたいな氷河期世代にとってはかなり理解し難い感覚だ。
自分の人生の舵取りを他人に見られてるなんて勘弁してほしい。妥協したり、落胆したり、必死にジタバタしている姿なんて、隠しておきたいものだ。
なのに一緒に過ごすなんて、これが若者の姿だとしたら、やっぱり恐ろしい世界だと思う。
そういう意味で、私は拓人に似ている。
「途中経過をイチイチ報告してアピールする」タイプが苦手なのも共通点だ。
自分にとって受け入れ難い醜い姿を、どうして晒せるのか。晒して満足出来るものなのか。それを自分だと受け入れているのか。
疑問は尽きない。
だから、何者にもなれていない自分は人目を忍んで、殻の中に閉じ籠るしかない。
いつか外の世界に晒されても、揺るがない完成された自分として歩み出す日を夢見て。
想像の自分と現実の自分が合致する日を夢見て。
それまでは、そっとしておいて欲しい。
否応なく、ある程度の歳になったら殻を割られる日が来る。その時を最高の形で迎えるために就職活動に精を出す。
実際に社会人になったら、会社とあわなくて辞めたり、家庭の事情で辞めたり、病気になって辞めたり、運命の恋に落ちて辞めたり、一発目の就職なんて大したものでもないが、それは経験しないとわからない。
圧倒的な経験の数で、「自分探し」「自己形成」などするまでもなく、気づけば「自分」になってしまった大人から見ると、就職活動中の5人は「青春真っ只中」の卵たちなのだ。
「パレード」がその空間から出ることを許さない物語なら、「何者」は明確にその世界が終わる物語だ。
それはやっぱり朝井リョウの目線が彼らの中にあるから。拓人でも、光太郎でも、瑞月でも、理香でも、隆良でもいい。誰かの事を「自分に似ている」と思う感覚が、その手助けをする。
そして、今まで自分を包んでいた世界に別れを告げる瞬間を共有する。
面白さも、キャストの魅力も甲乙つけがたいが、やがて恐怖を感じる「パレード」より、恐怖から飛び立つ「何者」の方が若干好みだったかな?
興味が湧いた方は、是非両方鑑賞して「自分」の世界を観察して欲しい。
ようやく自分に向き合えた物語
就職活動を通して主人公が語るのは、とても普通だがそれはあくまで表向きの言葉。
裏アカでしているのは仲間たちへの批判。
絶えず手に握りしめているスマホが一般的なのが、現代社会を上手に表現している。
同時にこういうのを書く私と主人公「タクト」との相違を考えさせられる。
思ったことがうまく表現できない。
多分タクトはミズキのことが好きだったのだ。
いつの間にか友人のコータローに彼女を取られていた。
それでも知らん顔で過ごす姿に、かつての自分自身が重なった。
タクトは、演劇が好きで脚本を書いているときが最も自分らしいということを就活を期に否定した。
おそらくその時から彼は自分ではなくなり、誰かを裏アカで批判することでしか自分自身を保つことができなくなったのだろう。
本心では演劇を続けているギンジが羨ましいのに、それを捨てた自分を正当化する。
ミズキがコータローに2度目の告白をして再びフラれたという彼女の言葉にショックを受けたタクトだったが、実際に心に響いたのは、「コータローは自分の人生の先にドラマを見つけて、その主人公になれる」と言った彼女の言葉だったように思った。
宮本の言葉やツイッターでの発信に対し、ミズキが思わず意見を言うシーンは、彼女の実家の出来事から否応なしに自分の就職条件を変更せざるを得なかった苦しみと悲しみが吐露された瞬間だったのだろう。
そして宮本も自分というものを見つめ直して、まともに就職活動を開始したいと、わざわざタクトに頭を下げるが、その際彼らが2年間も就活していた事に驚いてしまった。
最後にタクトが面接で自分自身を表現するシーンがあるが、その時ようやく彼は自分自身に素直になれたことが伺える。
タクトが言った「就活はダウト・ゲームのようなもので、バレなければ嘘でも構わない」
これは多くの就活生たちの本心だ。これに気づいた作者はすごいと思った。
それにしても、これは2016年の作品だが、1分間で自分を表現しろとか、Webテストとか、知恵袋にもこの手の質問がうじゃうじゃあるが、このシステムこそ社畜化の第一歩だと思う。日本はどんどん異常社会になっていく気がしてならない。
イタイ、イタイ……
煮え切らないラストシーン
就活生は見ない方が良い
就職活動を背景に自分自身を映す映画。
内容は、主人公の佐藤健と同居人の菅田将暉と同級生の有村架純と上の階に棲む山本舞香が繰り広げる就職活動を舞台に人間関係と人間模様その若者の心の機微を表現した作品。様々な問題に対する解決策を模索する姿が、観ているものを苦しくも楽しくさせる。印象に残った言葉は『一分間で自己紹介してください。』決まった時間に収まり決まらない最後の『すいません』には僅かな救いの光が見えカタルシスの解放を感じました。印象に残った台詞は、つけ麺を啜る場面で白いシャツに汁飛ぶよなぁと思ってしまいました。自分なら食べる物は汁物選ばないかもなと思いました。独特のカメラの演出とカメラワークで動揺を表す場面では、画面を揺らす度合いが凄すぎたり、回り込みからの寄りなど激しく動き過ぎて見ていて疲れてしまいました。深く切り込む主人公の内面も畳み掛ける終盤は面白かったです。人其々仮面を幾つも持っていて使い分ける事で社会性を保てる物だと思っております。就職活動がこれ程人間を浮き彫りにさせる様子は見ものでした。
こういった作品に出会う為に、邦画を見続ける。
恥ずかしくてみっともなくて、痛くて、苦しい。
2022.67本目
就職がテーマの映画でキャスト陣が若手の有名どころばかりだったので、軽さのある映画かと思っていたら、かなりカロリーのある映画だった。
痛くて、苦しい。でも観てよかった。
主人公の、斜め上から客観視をする感じ、既視感!こういう人いるよね。特に、にちゃんねるや、掲示板サイトとかのネットの社会には沢山いるよね。
みずきさんや、光太郎くんが、主人公のそういう面を知っていても、どこまでも優しく汚れがない存在なのが救いだった。
後半のりかさんとのやり取りからの展開は、ホラー映画かと思うほど鳥肌モノで吸い込まれた。
演劇の演出もよかった。「見られている」ということの表現といったらいいのかな…。「全部見られていた」と全力で走る主人公。恥ずかしくてみっともなくて、最高だった。
みずきさんがその劇を見ていたのと、Twitterのアカウントを見ていたのが、合致する感じでうまくできていた(上手く言えないけど)
劇「何者」が終わり、拍手とスマホのフリップ音。劇「何者」を評価する音。それから逃げるように走る主人公。
主人公が本当に主人公になった気がした。うん、よかったなぁぁぁ。
これは映画なのか…?
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