「パトカーとエレベータ」パラドクス kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
パトカーとエレベータ
ぐるぐる廻るループ世界。プロローグとしてウェディングドレスを着た老女がエスカレータに横たわっている。そして、ループする9階の階段に閉じ込められた刑事マルコと犯罪者の兄弟。もうひとつ、一本道のループに閉じ込められた4人の家族。
それぞれのストーリーでは過失致死と贖罪がテーマとして潜んでいるようで、赤い手帳やモルモット、そしてアレルギー症状と薬物など、様々な小物の伏線が散りばめられている。ループからは抜け出せないでいるが、食糧や衣服といった必需品も何度も現われ生かされているという虚無な生活に耐えている。誰かの「死」がトリガーとなり、老人が死ぬという展開でループから抜け出せるという寸法だ。
老人の最期は若者に忠告を与えるのだが、結局はその忠告を守らず、過去のループを反省できていない。そのおかげで新たなループという牢獄に閉じ込められる姿を描いているのです。老人の忠告を守るという教訓メッセージはあるが、とにかく無為な人生を繰り返す様子によって罪と罰の姿を投げかけてくる作品だと思う。
ウェディングドレスの新婦に関しては35年よりも長いような気もするが、彼女の人生が最も悲惨なのだろう。そして、80年代の一本道、現代のビル、エスカレータの悲劇。全て35年周期の年代別なので、いかに結びつくのかもわからないままでしたが、過去の記憶(水難事故)が語られることによって気持ち悪いくらいの因果応報に驚愕する。
しかし、構成は見事であるもののそれぞれのエピソードの中にはそれほどインパクトが無いので、ちょっと眠くなってしまうのが残念なところ。ただ、何度も観ると「名前」というキーワードとファビオラという架空の妻の名前。生き残る若者には罪がないことを考慮すると、巻き込まれ型のループ地獄といったところか・・・だとすると、やはり理不尽なループ世界だったんだなぁ・・・