SCOOP! : 映画評論・批評
2016年9月27日更新
2016年10月1日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
大根仁が引き出す、新しい福山雅治のカッコ良さ
本作の最も耳目を集めるポイントは何と言っても、あの福山雅治が汚れ役に挑んでいることだろう。日本の芸能界の「いい男」の代名詞とも言える彼がうらぶれた中年パパラッチをどう演じるのか、ファンならずとも大いに気になるところだろう。意外とハマるのか、単に奇をてらったキャスティングに終わるのか、鑑賞前は筆者も期待と不安がないまぜだったが、開始数分で心配で杞憂であるとわかった。ハッキリ言ってハマり役である。意外とハマっているどころではなく、驚くほど馴染んでいる。俳優としてはクールな役どころが多かった福山だが、バラエティやラジオでは下ネタ好きな一面を見せていたりもしたが、もしかしてこの方が素の彼に近いのかと思うほどだ。もちろん、撮影日外でも衣装を着て生活するなど、彼の役作りの努力の賜物でもあるのだろうが。
福山演じる都城静は、かつて敏腕カメラマンで週刊誌のエースだったが、今は借金まみれで芸能人のスキャンダルを意地汚く追いかける中年パパラッチ。そんな彼が新人記者の野火(二階堂ふみ)とコンビを組むことになり、仕事への情熱を取り戻していく。大根仁監督は「モテキ」「バクマン。」に続き、三度男が人生を見つける舞台に編集部を選んだ。今回は前2作よりもさらに泥臭く、社会から嫌われやすい写真週刊誌の世界。誰からも疎まれる、しかし求められてもいる。ゴキブリと罵られようと仕事を全うする。野火との出会いでかつての自分を取り戻した都城静はカッコいい。それは福山が演じるからだけではない。全力で仕事する男はやっぱりカッコいい。「モテキ」でも「バクマン。」でも泥臭く仕事に打ち込む男を描いてきた大根仁監督は、男のカッコよさの本質を知っている。何かに全力で打ち込む男が一番カッコいいのだ。
友情のため、仕事のため、自分を取り戻させてくれた女性のために、全力で叫び、駆け、這いつくばる。誰も見たことのない、過去最高にカッコいい福山雅治がスクリーンにいる。「福山雅治だからカッコいい」を遥かに超えたカッコよさを大根仁監督はこの映画で描いたのだ。
(杉本穂高)