葛城事件のレビュー・感想・評価
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Sad映画
すごく悲しい映画でした。
清には明らかに家族愛があるんだよね。しかし、それは空回ってばかり。理想を掲げて支配し抑圧するしかやり方を知らない。不器用というより愛するスキルが欠如している。そんな夫を嫌っているくせにノーと主張できず、「ここまで来てしまった」と嘆く伸子。父親の理想に殉じる良い子の保と、否定されて腐るしかない稔。
葛城家に共通するのは主体性がないこと。家族の中に、自分の力と誇りで人生を切り開き、自分を勝ち取るという価値観がない。清も金物屋の二代目を主体的に選んだとは思えない。家族全員自信がなく、臆病なのだ。清のクレーマー気質とかは、弱い犬ほどなんとやらのよい見本だ。理想の家族像とかにすがるのは主体性がない、すなわち自分がなく臆病だからだ。
そして、主体を持っていないから、互いに個人を尊重できない。人間を尊敬することができないのだ。支配-服従とか、不自然な関係にならざるを得ない。家族とか言ってるけど互いに信頼できないからみな孤独だ。
おそらく、これまで清も伸子も主体性や愛するスキルを学べなかった。家族とはそういうものだと思っていたらあんな事になってしまったのだ。本当に悲しい。
葛城家以外の重要人物・順子も相当アレな人で、空念仏の愛を唱えるメサイアコンプレックスのクソバカ偽善者(狂信者?)だが、終盤の自分のセックスを語るシーンや、清にキレるシーンで、生々しく情けない人間の顔が現れ、なぜかニンマリしてしまった。守りが破け、新しい展開を示唆している。
ほっこりシーンはアパートの最後の晩餐シーン。唯一の家族団らんですね。ここで、清の呪縛から逃れて伸子と稔は自主性を獲得しかける。精神発達のチャンス獲得場面だ。少し光が見える、なんともあたたかい雰囲気でした。
あそこで元の木阿弥になっちゃうのがまた悲しいんだよなぁ。
どうでもいいけどDV被害者のシェルターの重要性を連想してしまいました。
一つ一つのシーンが印象的
なんとも重厚な傑作。
家族全員が壊れていく様が時系列をシャッフルすることで一層際立つ。
三浦友和が怪演。不器用な父親は絶対的父権を維持するにつけ虚栄心の塊となり、家族から孤立するばかりか、家族の心を壊していく。しかし、あくまで家庭を第一に考える父親というところが虚しい。
一つ一つのシーンがなんとも印象的。
まずは食事。いっさい料理することなく、コンビニ飯かピザ。
冷蔵庫はガラガラだが、みんな牛乳を直飲み。どこかおかしい家族を象徴している。
通夜の南果歩、新井浩文の面接。田中麗奈の面会。カラオケスナック。全て忘れられないシーンとなった。
重かった。けど嫌いじゃない赤堀作品の魅力
赤堀さんの舞台は何度か鑑賞したことがありますが、映画は初めて観ました。
なぜこうなってしまったのか、本人の意思とは違う方へ回り始める歯車…日本のどこの家庭にも起こりうる話。重たい話だけど、嫌いじゃない。リアリティがあるからこその嫌さなのかも。
この話、最後はどうするんだろう…と思ったら納得のラストシーン。
同属嫌悪
観ていて、序盤から窒息しそうな緊迫感が嫌で嫌でたまりませんでした。
三浦友和さん演じる、清。
2人の息子たちの父親という点にシンパシーを感じながらも、思い通りにならないもどかしさに苛立ちを隠さず表す姿に、完全に自分を投影してました。
猛烈な嫌悪感は、彼の一面に自分の似た部分を感じるから。
私は清とシンクロしましたが、きっと人の親となっている方ならばどなたが見てもどこか似た点をこの夫婦に感じてしまうのかもしれません。
とにかく南果歩さん演じる妻と三浦友和さんの演技が鬼気迫っており、薄暗い背景にぼんやり浮かぶ姿には、徒労感と絶望感に満たされ、観ていて目を逸らしたくなりました。
が、評点4.5です。
壮絶、だけど普通の家庭の話
HPを見ると、「壮絶な、ある家族の物語」と書いてある。
確かに壮絶だ。
なにしろ2人の息子の長男は自殺、そして次男は無差別殺人事件の犯人だ。
だけどこの家庭、それほど特殊なんだろうか。
正直私は、何度も何度も「あるある!」と思った。
高圧的で自分を過信し、意見されることを嫌い、「これだから日本人は〜」みたいなことをすぐ言うオヤジ。
子供を溺愛し、家族の問題から目をそらし、「自分さえ我慢すればいいんだ」とヒロイックに耐える妻。
父親に気に入られようと「いい子」であることに必死で、身なりを気にし、一度しくじるとリカバリーが効かない男。
そして、きっと、多くの人が「あー、親戚の◯◯君っぽい」「近所の◯◯さん家の息子もこんな感じ」と近くの誰かを思い浮かべるであろう、大人になっても自分の人生を全く始められていない男。
「三浦友和演じる父親は最低の人間で、彼のせいで息子はあんな事件に至った」と思う人もいるだろう。それはある程度正しいと思う。
でも、あんなオヤジどこにでもいる。
最低だけど、普通だ。
リストラされた人も、バイトが続かない人も、引きこもりも、今の日本で全く特殊じゃない。普通だ。
今、この日本で、絵に描いたような幸せな家庭がどれだけあるだろう。
外から見れば幸せでも、世間体を気にして問題を隠していたりする。
「日本の家族あるある」だろう。
この映画は、壮絶だけど、普通の家族の話だ。
だから怖い。
本当にちょっとした歯車の狂いで、どの家庭にも、こんな事件は起こり得る。
特殊な事件の話ではなく、誰にとっても他人事ではない家族の話として、恐ろしくも興味深い映画だった。
家族がバラバラにコンビニ弁当を食べる画って、傍から見るとこんなにグロテスクなんだなぁ…。
最後の1分で★2増えた
三浦友和、いい俳優だ。
この役もよく演じている。
しかし、顔が若く見えるし、どうしても「青春スター」のキラキラ感と伝説の妻を持つ男のイメージがつきまとい、損をし続けていると思う。
本人も、芝居をするうえで、もっともっと汚く、みじめなイメージを出せないのかな、と思う。
本作でも、杖を小道具にしてるけど、体の具合悪そうにはまったく見えない。
もっと体重落として、よろよろするとか、髪の毛をすいて薄くする、たばこをよく吸ってたけど、歯を汚くする…とか。簡単な役作りで、それができるんじゃないか。
物語は脚本、役者の演技もしっかりしており、テーマとしても見ごたえがあった。
ただ、やはり、三浦の外見と存在の立派さが、このどうしようもないみじめな映画にそぐわず、最後まで「これは★4つ難しい。★2つどまり…」の思いがぬぐえなかった。
しかし、ラスト1分の描き方で、評価がひっくり返った。
最後の三浦の1人芝居、独壇場がぐぐっと気持ちをつかまれた。
あの場面から、オイラ(評者)は、原作・監督や、三浦からのひとつのメッセージを受け取った。じわっと来ましたよ。
ああいう印象深い終わり方の映画、描き方は、過去の作品にもないではないが、最後に全体の印象をがらりと変えさせ、ぐさりと突き刺さる作品って100本に1本くらいですよ。滅多にない。
その点は、立派。
ただ、やはり繰り返すが、三浦はもっとみじめで汚れた役もやってほしいし、やるべき。
セリフもいつもきれいな標準語が多い印象だし。
地方の労働者とか絶対できないでしょう。
前に、富山の電車の運転士をやった時も、ほとんど富山弁を話さず、違和感が残った。
せっかくマイナーな映画に「スター」が出ても、そこらへんで役作りを努力を惜しんでいるとしたら、もう一段上には行けないんじゃないかな。
その辺が、オイラを含めた百恵ちゃんをリアルに知る世代から、いつまでたっても、『百恵のダンナ』としか見られない理由なんだよ。
本人は、分かってるのかなあ。
まあ、分かってたらとっくにやってると思うけど。
分かってないんだろうなあ。
この映画同様、2人の息子抱え、長男がパッとしない点で、苦労も多いんだろうけど、応援し続けるよ、今後も。
友和さんが最高です
大の三浦友和ファンである私は、時々思いもよらない役柄に挑戦する友和さんを観てきました。
でも今までで一番強烈です。
映画みてから、しばらくはずっと何か心にひっかかる映画です。
感じ方はみなそれぞれ違うでしょうけれど、考えさせられる映画だと思います。
重たいけれど、みんなに観てほしい映画です。
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