葛城事件のレビュー・感想・評価
全118件中、41~60件目を表示
獄中結婚しても離婚できてしまっては。
『葛城事件』(2016)
息子が殺人をして死刑判決が出た。男親の視点からの映画らしい。家にペンキで人殺しと書かれた壁を男親は消している。男親を演じている三浦友和は若い頃の二枚目から既に完全に演技派の重鎮になっている。そこに、獄中結婚をした女(演者は田中麗奈)が訪ねてくる。私は死刑賛同だが、映画の女は、死刑に反対している。凶悪犯人の心も変えられると女は信じている。獄中結婚したことで、女は実の家族と別れてしまったという。私はこうした女に賛同できない。女が犯人と接見すると、花や菓子なんかいらないから現金をくれというが、なんだ愛情のないと思うと、男は、
家族なんだから正直な会話が必要だ。6万円もってきてくれという。それはそうかも知れないとお思わせる。獄中結婚した女にガラスの後ろで罵声を浴びせる犯人。冷静に応じる女。「ちょっとずつでもいいので、本当の家族になれたらいいと本気で思っている」と話すと、犯人は不信な顔をしてなにか言い残し、獄に戻る。そしてこれは時間が行きつ戻りつするタイプの映画のようだ。四人暮らしである。男親と犯人(若葉竜也)のほかに妻(南果歩)と長男(新井浩文)がいた。居酒屋でカラオケを歌う男親とそれをみる獄中結婚の義理の娘のシーン。男親はかなり酔っぱらっている。
男親は義理の娘を非難しまくる。娘は息子の話が聞きたいという。この映画では人殺しの親でも相手にしてくれる居酒屋の存在があるとみえる。他の客も眉をひそめるが、男親は一緒に飲もうという。とうとう自分の立場ってものをわきまえろよと言われてしまい、早くこの街から出てけと言われると男親はグラスを床に投げつけ、義理の娘と居酒屋を出る。歩きながら娘に話す。長男は良くできた子だったが、弟の犯人はへらへら遊んでいる。同じ兄弟でこうも違うかと愕然としたが、俺はやるべきことはやってきたんだと語る。時間が戻り、長男は会社を解雇される。相談するのが遅かったという先輩がいいことを言っていた。営業とは買ってくれるお客のところに行き、買ってくれないお客さんへは行かないことだが、熱意で買ってくれるものだと。家庭のトラブルのエピソードの後に、また接見のシーン。犯人は女に打ち解けない。女は「私はあなたを愛します」というが、無言で獄に戻る。犯人は無職のコンプレックスがあった。夫婦仲は冷え、妻は失踪したらしい。長男は解雇されたのを告げずに、勤めている振りをしているらしい。男親は工具を店で売る経営をしているらしい。長男は再就職の面接に行くが、冷や汗をかき、精神的になにか出てしまうようだった。アパートを借りて、妻と犯人の次男が隠れていて、長男が見つけて男親に連絡する。長男がどうするのと心配する。妻は時給850円のスーパーで働き、次男とコンビニのナポリタンを食べている。
それを見つめる失業を隠し営業をしている振りをする長男。やがて父親が入ってくるが、次男を足蹴にする。なぜ次男に父親は暴行したのだろう。包丁を次男に向けた途端に、妻が家に帰るからもうやめてと泣いて頼む。だが凄まじいシーンだが、本当に次男を刺すわけもなく、「とりあえずおうちへ帰ろう」と言って、そのシーンは終える。長男が死ぬ。遺書はレシートの裏に「申し訳ない」。
葬儀での嫁と姑の大きく重い確執の対話。愛憎。そして<普通の>街の描写へと転換する。獄中結婚の妻が歩いている。精神病院に車いすでいる女親の姿があり、語り掛ける。人間に絶望したくない。死刑は人間絶望の制度だ。彼には私みたいな人間がそばにいれば心を改めるのだ。今までそういう人に出会えなかっただけだからと女親に向けて叫ぶ。また時間がさかのぼり、長男の遺影に向かって一発逆転してみせると語った次男だが、なぜかナイフを手にする。そして、駅の中で、無差別通り魔を起こしだす次男。叫びながら、ナイフで何人もの通人を切りつける。これも凄惨なシーンである。なぜか逃げずに茫然と立ちすくんでしまう人たち。その頃、男親は家族四人の昔の写真。子供たちがまだ少年だった頃のにこやかな写真をみていた。カラオケスナックのシーンに戻る。男親は客に叫ぶ。「俺が一体何をした」。「奴を裁けるのは国だけだ。そういう仕組みを容認しているあんたらが国民が俺の息子を殺すんだ。それで勘弁してくれねえか。私は息子の血や肉体を差し上げます。奴の脳みそを分析し、今後の犯罪の軽減に協力できるならば、どうかこの変でご容赦できないだろうか」と言った後で土下座する。みんな帰ってしまう。スナックの老いた女主人は、あの家はどこか売り払って他にいったほうがいいよと諭す。みている獄中結婚の妻。そしてずっと昔の子供たちが少年時代のシーンになる。男親は「自分の城ですから」と仲間に
語っていたシーンが対比される。男親は決して異常な人ではなかった。精一杯やってきた人だったのに。6人も7人も殺しても、男親は獄中結婚の妻に、犯人の息子を死刑にしないでくれと頼む。
息子は獄中結婚の妻に、ずるずる死刑執行を伸ばすようなことはしないでくれと怒鳴る。すると、獄中結婚の妻は安い冷房のない部屋でも当時の交際相手と性行為してしまうという話を犯人に聞かせる。こういう面を良い思い出にしてしまうような感覚や、凶悪犯人に獄中結婚して立ち向かおうとする女の存在も変人なのだが、どうした考え方でそうした女が現実にもいるのだろうか。この異常な男女の関係の、ガラス越しの言い合いのシーンも凄惨である。男は軽く礼をして獄に入るようになっていた。涙を流す女。だが現実はこうしたケースもあるとしても、もっと修復不可能なサイコパスはいるはずである。本当はこう書くことが良心的である。これはフィクションだ。「葛城金物店」が閉店しているのが映し出される。男親は獄中結婚の妻に、死刑執行前に犯人は両親のことを何か言ったかと聞くが、別になかったが、死ぬ前に炭酸を飲みたいといったという。男が死刑執行をされて、獄中結婚の妻は、犯人の男親に別れの挨拶にきたのだ。「もうこれで息子との関係はおしまいか」と聞く男親。そして、男親は獄中結婚の妻をレイプしようとする。「唇くらいいいじゃねえの」「失礼じゃないですか。大きな声を出しますよ」「今度は俺の家族になってくれないか」「はい?」「俺が三人殺したら、おまえは俺と結婚してくれるのか」「ふざけないでよ。あなた、それでも人間ですか」驚いたような顔をみせたが、女は出ていく。残された男親は、妻と二人の息子の名前を呼ぶように叫ぶ。獄中結婚の妻は犯人には確かに向かい合えたかも知れないが、犯人が死ぬと関係を清算できた。交際相手とも性行為して別れられた女。しかし男親は。家の中のものをみんなぶちまける。壊す。家の中を滅茶苦茶にする。城だったのに。そして掃除機のコードを伸ばす。庭に出る。イスを持ち出す。木にかけたコードを首にかける。しかし、木が折れる。一瞬正座して立ち上がりまた部屋に戻る。滅茶苦茶な部屋の中で、食べかけていた蕎麦をまたすすりだす。
三浦
相変わらず三浦友和が素晴らしく、なっちゃんが頑張ってる。通り魔描写の、刺される側がなかなかリアル。ただ画が弱いし、この感じなのにエロがないのが弱い。どちも夜這未遂で終わる不甲斐なさが、韓国との差。新井浩史が、公園でタバコをポイ捨てして、しばらく経って戻ってきて、拾うエピソードが出色。
始終イライラ
まず、ストーリーが加害者サイド中心の身勝手すぎる内容でした。
獄中結婚にもうなずけず、相手が処刑されても涙すら流さないような結婚をする気持ちがどうしても理解できない。
三浦友和は時々オーバーアクションだと思います。
現代の家族描写が的確!!
強権的な父親が家族全員を蝕んだ結果を描いていますが、父親は一般的な面倒臭い団塊オヤジにしか見えないところがリアルだと思います。お母さんは息子を連れて脱出する判断力を持ちながらも、呆けてしまって怖かったです。中途採用やニートの就職は異様に難しいので、団塊の考え方とは決して相容れないのも上手く表現されていました。私も似たような状況ですが、実家に色々と問題を抱えている場合は、精神衛生上観ない方が良いと思います。襲撃シーンは良く撮れていました。色々やってまた食べるという何だか清々しい終わり方も印象的でした。本作の内容は十分起こりうる事で、誰もが皆自分が正しいと思っているのだから、別に狂ってはいないところがリアルでした。
狂っちゃった方がマシ
父親を正当化できないし、妻と息子2人に起こったことは彼が起こしたようなもの、だろうけども、若い時から懸命に築いたものとその努力を考えると、最も同情すべき人物のような気がした。最後、自暴自棄になるのはとてもよくわかる。
もしも獄中結婚の相手がいなかったら、葛城一家はどうなっていただろうか…
人格の崩壊は家族の中にある。
家族全員が壊れている。なぜ彼が無差別殺人を犯すことになったのか。
現実の事件の取材をもとに作られたストーリーは、過去に起きた悲惨な事件が犯人だけの原因ではないのではないかと考えさせられる。
狂ってる。
全てがひどい。
下品。
みんな壊れてる。
矛盾だらけ。
不可解すぎる。
理不尽。
何が悪いかすらもわからなくなる。
現代って、人との繋がりが浅かったり、周りに関心がなかったり、自分さえよければいいのスタンス。不都合があれば誰かに責任をなすりつけたり。今の荒んだ日本だなとおもいました。
なにかがキッカケで壊れていくなら、誰にでも起こりうるし、様々な場面に出てくる食事風景。一心不乱に食べている。コンビニのお弁当や飲み物カップ麺が印象的でした。
現代ニッポン
凄惨な事件が起きると、皆が一様に思うのが変な家族だったんじゃないのかとか、原因は親にあって教育を間違えたんじゃないのかとかいう話になります。日本では悲しい事件が、「普通の家族」「普通の自分」を確認できるツールとして、存在している感じがします。
作品を象徴しているのが、「普通の人」が見て見ぬ振りをしたり、評論家に徹するところでした。次男が包丁を持っているのを見ても何もしない。精神的に追いつめられた母親や長男を助ける第3者が誰もいない。ふと気づくと、日本はそれが普通になっていたんですね。他人に興味を示さず、スマホをずっといじってること事体、よその国からしたら「変な国」だったりして。日本は、葛城清みたいな政治家のオッサンだらけだし。だから葛城家はまさに現代ニッポンの象徴の様です。
正そうとしたいけど叶わぬ夢
デットマンウォーキングのような展開を期待してしまっていた自分がいる。
こちらの映画は死を目前にしても人は簡単には変われないという寂しい現実を知らされた気がする。
自殺であろうと死刑であろうと、病気や事故ではないのだから、自分の考えや行動で防げるもののはずが、葛城家には通用しない。
果てしなく「こういう人嫌い」で片付けたいけれど家族やご近所では、シャレにならない。
登場人物で唯一スナックのおばちゃんが好きです。
結婚して息子が2人授かってマイホーム建てて昭和のステレオタイプの家...
結婚して息子が2人授かってマイホーム建てて昭和のステレオタイプの家族像のままに全部手に入れて、人生のスタートラインに立つことができたお父さんは、この先もずっとレールを踏み外さないで生きたかったんだろうか?
それとも見栄?
子供には大学に行かせてホワイトカラーのサラリーマンになってほしかった。
嫁にはいつも家にいて自分の帰りを待っていてほしかった。
心からそれが幸せと思ったのかはわからない。
だけど家族はお父さんの所有物ではない。
家族それぞれの人生を選ぶ権利も無視し、理想をつきつけられ、暴力でねじ伏せても心が離れていくだけ。
犯罪を食い止めることができる唯一の手段である愛を子供に教えることができなかった親の罪はとても大きい。
自分の理想のままに家族をしばりつけた結果、一番大事な愛を失ったのだと思う。
とてもよい映画です。
テーマが重い&見応えのある作品。 普通の家庭に見えるが、崩壊してい...
テーマが重い&見応えのある作品。
普通の家庭に見えるが、崩壊している。
父親:昭和のような厳格、理不尽、わがまま、人のせいにする、DV、自分のいうことは絶対で、力づくで家族を自分のイエスマンにしようとする。
母親:大して好きでもないけど結婚し、2人の息子を甘やかして育て、自身は料理をせずにコンビニ弁当や店屋物で生きている。夫に服従し、精神を病む。
長男:一番まとも。リストラされたことを家族に言えず、のちに自殺。
次男:引きこもり&ニートで父親の暴力の対象。のちに無差別殺人。
殺人事件が起こり、死刑を反対して獄中結婚しようとする変わり者の女性と父親の平行線な交流と殺人に至るまでの崩壊具合が交互に描かれる。
食事のシーンはしばしば幸せの象徴として描かれるが、最後の晩餐がDV避難先のコンビニ弁当だったのか、と思うとせつなくなる。
まったくハッピーエンドではない、ずーんとした思いになるが、こういう作品も嫌いではない。
ホラー映画より怖い
最高に最低な映画でした(笑)
三浦友和の演技がスゴイ!威圧感がハンパない。ラストシーンでの一人芝居は息が詰まるくらいに凄まじい!
父親が1番見下していた次男が、結局は1番父親に似た人間になっている。アイロニー含めて面白いし、感慨深いものがある。
こんなの、全然エンターテイメントじゃないよ〜(スゴく褒めてます)
追記。
三浦友和が田中麗奈に「息子(次男)はオッパイ好きだろう」と言うシーン。その後に「オッパイなんて言ってる間は子供だ。オンナは尻だよ、尻!」と説くが、実はそんな事を議論する事自体が、ガキの現れでもあり、父親のキャラクターを上手く描いている。無駄のない演出。素晴らしい!
くっら~…(^o^;)
とにかくもう重い映画…。三浦友和がなんて嫌な父親を演じているのでしょう!!最高ですね!!
別居中、父親を抜いた3人で最後の晩餐を語り合うシーン。唯一ホワッとしたシーン。
あれがあったからこそまた三浦友和が現れての緊迫感。
どこかで流れを変えられなかったのか、家族の誰かが勇気を持てなかったのか、三浦友和もわかっていたはず。わかっていて見ないふりしていた。
どこの家族が陥ってもおかしくないからこそ怖い。
唯一謎なのは田中麗奈の存在。どうして獄中結婚まで思い立ったのか知りたかった。
葛城事件
自分の理想と現実のギャップに苛立ち家族を抑圧していく父親を三浦友和が鬼気迫る演技で好演してます。
ただちょっとした掛け違いでこんなふうな家族になってしまう家族もあるかと思う。
現実を見つめ対面し解決して行くことが重要と感じた。
家族という地獄
こんな家に生まれたら…と考えると恐ろしい。
毎日が地獄だ。
家族だから、逃げ場がない。
普通は一番心が安らぐハズの我が家が
一番心が落ち着かない場所になってしまっては
どうしようもない。
父は自分の価値観を
人や息子に押し付けるばかりの自己中人間。
母は息子を甘やかすばかり。
結局、恐ろしい殺人鬼を生み出すのは親なのか。
どうしようもない環境で愛を知らずに育った
人間の行き着く先が通り魔殺人では、
あまりに哀しすぎる。
通り魔のシーンがやけにリアリティがあって
スゲー怖かった。
三浦友和の演技をマトモに
観たのは初めて。
めちゃめちゃ渋くてカッコいい
オヤジだったんだなぁ。知らなかった。
全118件中、41~60件目を表示