葛城事件のレビュー・感想・評価
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俺がいったい何をした?
観客にエグい現実を突きつけてくる作品。
テーマ自体も救いがないし、見る側の心に食い込んでくるような演出。
観終わるころにはグッタリというか、すげー荒んだ気持ちになっちゃった。
ただね、タイトルにも書いたこの作品のキャッチコピーが秀逸だと思う。
無自覚ゆえの罪とも言えるけど、この父親(三浦友和)だけが悪い、でいいのか?と。
ここまで事態が悪化するケースは稀だとして
この家族それぞれが抱える歪さみたいなものって、
大なり小なり皆が抱えてるものなんじゃないのかと思ってしまった。
もちろん犯罪者を擁護するとかではなくて、
誰もが道を踏み外す可能性って意外と身近にあるかもねっていう。
いやー、傑作には違いないけど、もう二度と観たくねぇな。(苦笑)
身近にいるような人物造形
これは胸糞映画として最高峰の出来(褒めてる)
登場人物が胸糞悪い性格ばかりなのが徹底している。
カリカチュアされ過ぎず実際に居そうな雰囲気なのがエグい。
キャスト全員が凄いが、特に若葉竜也が演じた稔のウザさが秀逸。喋り方・使う言葉等、このリアリティはなんなんだ。
それと、死刑廃止を唱え獄中結婚する女性役の田中麗奈。こちら側も狂気が混じっているのがスゴイ。ここを良心として描かないところにある種のメッセージ性を感じた。
観客を選ぶタイプの映画だが、人の闇部分に関心がある人は観て損はないでしょう。
秋葉原
「バラが咲いた」を口ずさみながら、「人殺し」「出てけ」などと塀や壁に書かれた落書きを消す葛城清(三浦)。そして息子稔の死刑判決を真摯に受け止める裁判所のシーンが交互に描かれるオープニング。そして獄中結婚をした星野順子(田中麗奈)が清のもとを訪れる。
保(新井)は会社のリストラに遭い、辞めたことを妻にも言えずにぶらぶらしていた。そして、家族の行き詰った姿を見たため飛び降り自殺を図る。そうして、次男稔(若葉竜也)は通り魔として数人を殺傷・・・
明らかに秋葉原通り魔事件をモチーフにしている映画だったが、親とも同居していない長男の自殺ってのがどうしても理解できない。家族間の確執はそれなりに理解できるのだが・・・強い父親でありたいと家父長制を誇示したいがために、心が離れてゆく様子はなかなかの出来栄えだった。特に中華料理屋のシーン。
それにしても死刑制度廃止論者だけで結婚するというのは、何かのパクリだろうし、現実離れし過ぎている。終盤、死刑が執行されたと報告され、再び清のもとを訪れる順子。精神病院に入院するまでとなった妻(南)がいないためか、「家族になれ」とレイプしそうになる清。そのあとは部屋中を荒らしまくり、庭先のミカンの木で首を吊ろうとする。でも失敗。再び部屋に戻り、スパゲッティをすするのだった・・・
家族という病巣
赤堀作品は何作品が観てますが、だんだんと差し迫る精神的な怖さが絶妙だと思います。
三浦友和さん演じる父親がモラハラのクソ親父で、自分の意見・やり方が1番正しいと思ってて、周囲の人全てにそれを押し付けている人です。
結局、長男が自殺をしたのも、母親が精神的に病んだのも、次男が無差別殺人を犯したのも、この父親ありきとしか言いようがありません。
他の人も言っていましたが、獄中結婚のくだりはあまり意味がなかったような気がします。
家族って名ばかりで、簡単に壊れてしまう脆いものです。現代の闇とも言えるテーマだと思います。家はあっても、中は空っぽなんです。そこに愛はないのです。
どうしてこんな事になっちゃったんだろう?
まさにその通りで一つアクシデントがあったわけじゃない。
家族の些細なすれ違いが歪さを産み、やがて崩壊していく。
その中心にあったのがこの家の主・清の描いた彼なりの理想の家庭像にあったというのだから救いようがない。
父・清に抑圧された環境で育った長男は社会人になり家族を設けるも父親に意見を述べる事ができず、次男は引きこもりとなり不満を募らせていく。
そして全てが沸点に達した瞬間、次男はナイフを手に取り返しのつかない事件を起こす。
団塊世代の親父の昭和的家族像、故の愚かさ。醜さ。いたたまれなさ。
これほど見ていて辛い映画も中々ない。
とても他人事とは思えないのが怖い。
どのキャスト陣の演技も素晴らしかった。
普通の家族
誰にでも思い当たる節のある家族の日常。
この世代のお父さん像は「こうでなければならない」という
強迫観念じみた理想を刷り込みのように持っているのかもしれません。
なので、自分が間違っているなんて1mmも思ってないでしょうね。
それが全ての始まりであり終わり。
家族全員が家族に言えない弱さを持ち、押し殺す。
とにかく怖かった…普通だから。
見透かされ過ぎてツラい
・死刑の判決が下った無差別殺人が起きるまでと現在を交互に見せる
・前作でも見られた生活臭が漂うほどの部屋の描写のリアリティ、特に引きこもりの次男と両親との気まずい距離感は自分過ぎて見てられない
・ピザにお茶、ナポリタンにお茶、コンビニ弁当を食べる母、食生活から家庭環境がうかがえる
・父の金物屋のレジから見える外の景色の視界の狭さが分かるショットが秀逸
・公園で捨てた煙草を取りに戻った長男が立ちすくむ一瞬の間に覗かせた絶望感
・死刑よりつらい罰を与えたいならどうすればいい?獄中結婚した田中麗奈の行動原理だけ最後まで謎だった
・自殺未遂の父が散乱した部屋に戻ってのびたソバをすする姿で幕
団塊世代に観て欲しい
父親清の説明で、父親の思い、と書いてあるが、清は元々こーゆー人でしかない。常に自分が正しいとしか思ってない。
中華料理屋での話が特にそうで、自分の60代父親も昔、一見のトンカツ屋で同じ様な行動をした事があり、すごく「やだ見」だった。だから、団塊世代の父親というよりは、自分の父親に観て欲しい。かと言って、父親にあまり勧めたくもない。
個人的にはこの三浦友和の清がインパクト強かったが、この中の人物皆自分勝手、独り善がり。
母親南果歩は、一見優しそうで自分の都合ばかり優先させる。子供はかわいいのは当然だがそれだけで、厳しさを見せるのは面倒臭いのであろう。食事が全て自炊ではなく弁当や即席麺というのが象徴的。
兄新井は親のご機嫌を伺って優等生で過ごし、いざ社会に出ると取り柄がなく厳しさを痛感し、自分が正しいと思ってるから親にも妻にも相談せず、一人で抱え込んで終いにパンク。
弟若葉は優等生の兄と常に比較され卑屈になり、やりたい事が見つからない中、父には蔑まれ母からは優しくされるのみ。兄からも蔑まれてると思っているのでまともに会話も出来ず、終いには無差別殺人という勝手な結論で死刑を望む。
若葉と獄中結婚した田中麗奈も、死刑反対を大義名分に、自分なら若葉に愛情を注げるという勝手な思い込み。烏滸がましい。
若葉がナイフを取り出した際、後ろで見てたサラリーマンも、この後の事件を予測しながらも止めたり声掛けたりしなかったのは、自分の身可愛さ。でも同じ状況だったら自分でも声掛けないかも。怖すぎて。
田中麗奈の役は不要な気もするが、この家族、何処にでもある話。全部やだ見。
この話を少し楽しくしたのが、「ぼくたちの家族」で、こちらの方が救いがある。この話は皆不幸。
あまりお勧めでは無いが、忘れ難い話。
獄中結婚しても離婚できてしまっては。
『葛城事件』(2016)
息子が殺人をして死刑判決が出た。男親の視点からの映画らしい。家にペンキで人殺しと書かれた壁を男親は消している。男親を演じている三浦友和は若い頃の二枚目から既に完全に演技派の重鎮になっている。そこに、獄中結婚をした女(演者は田中麗奈)が訪ねてくる。私は死刑賛同だが、映画の女は、死刑に反対している。凶悪犯人の心も変えられると女は信じている。獄中結婚したことで、女は実の家族と別れてしまったという。私はこうした女に賛同できない。女が犯人と接見すると、花や菓子なんかいらないから現金をくれというが、なんだ愛情のないと思うと、男は、
家族なんだから正直な会話が必要だ。6万円もってきてくれという。それはそうかも知れないとお思わせる。獄中結婚した女にガラスの後ろで罵声を浴びせる犯人。冷静に応じる女。「ちょっとずつでもいいので、本当の家族になれたらいいと本気で思っている」と話すと、犯人は不信な顔をしてなにか言い残し、獄に戻る。そしてこれは時間が行きつ戻りつするタイプの映画のようだ。四人暮らしである。男親と犯人(若葉竜也)のほかに妻(南果歩)と長男(新井浩文)がいた。居酒屋でカラオケを歌う男親とそれをみる獄中結婚の義理の娘のシーン。男親はかなり酔っぱらっている。
男親は義理の娘を非難しまくる。娘は息子の話が聞きたいという。この映画では人殺しの親でも相手にしてくれる居酒屋の存在があるとみえる。他の客も眉をひそめるが、男親は一緒に飲もうという。とうとう自分の立場ってものをわきまえろよと言われてしまい、早くこの街から出てけと言われると男親はグラスを床に投げつけ、義理の娘と居酒屋を出る。歩きながら娘に話す。長男は良くできた子だったが、弟の犯人はへらへら遊んでいる。同じ兄弟でこうも違うかと愕然としたが、俺はやるべきことはやってきたんだと語る。時間が戻り、長男は会社を解雇される。相談するのが遅かったという先輩がいいことを言っていた。営業とは買ってくれるお客のところに行き、買ってくれないお客さんへは行かないことだが、熱意で買ってくれるものだと。家庭のトラブルのエピソードの後に、また接見のシーン。犯人は女に打ち解けない。女は「私はあなたを愛します」というが、無言で獄に戻る。犯人は無職のコンプレックスがあった。夫婦仲は冷え、妻は失踪したらしい。長男は解雇されたのを告げずに、勤めている振りをしているらしい。男親は工具を店で売る経営をしているらしい。長男は再就職の面接に行くが、冷や汗をかき、精神的になにか出てしまうようだった。アパートを借りて、妻と犯人の次男が隠れていて、長男が見つけて男親に連絡する。長男がどうするのと心配する。妻は時給850円のスーパーで働き、次男とコンビニのナポリタンを食べている。
それを見つめる失業を隠し営業をしている振りをする長男。やがて父親が入ってくるが、次男を足蹴にする。なぜ次男に父親は暴行したのだろう。包丁を次男に向けた途端に、妻が家に帰るからもうやめてと泣いて頼む。だが凄まじいシーンだが、本当に次男を刺すわけもなく、「とりあえずおうちへ帰ろう」と言って、そのシーンは終える。長男が死ぬ。遺書はレシートの裏に「申し訳ない」。
葬儀での嫁と姑の大きく重い確執の対話。愛憎。そして<普通の>街の描写へと転換する。獄中結婚の妻が歩いている。精神病院に車いすでいる女親の姿があり、語り掛ける。人間に絶望したくない。死刑は人間絶望の制度だ。彼には私みたいな人間がそばにいれば心を改めるのだ。今までそういう人に出会えなかっただけだからと女親に向けて叫ぶ。また時間がさかのぼり、長男の遺影に向かって一発逆転してみせると語った次男だが、なぜかナイフを手にする。そして、駅の中で、無差別通り魔を起こしだす次男。叫びながら、ナイフで何人もの通人を切りつける。これも凄惨なシーンである。なぜか逃げずに茫然と立ちすくんでしまう人たち。その頃、男親は家族四人の昔の写真。子供たちがまだ少年だった頃のにこやかな写真をみていた。カラオケスナックのシーンに戻る。男親は客に叫ぶ。「俺が一体何をした」。「奴を裁けるのは国だけだ。そういう仕組みを容認しているあんたらが国民が俺の息子を殺すんだ。それで勘弁してくれねえか。私は息子の血や肉体を差し上げます。奴の脳みそを分析し、今後の犯罪の軽減に協力できるならば、どうかこの変でご容赦できないだろうか」と言った後で土下座する。みんな帰ってしまう。スナックの老いた女主人は、あの家はどこか売り払って他にいったほうがいいよと諭す。みている獄中結婚の妻。そしてずっと昔の子供たちが少年時代のシーンになる。男親は「自分の城ですから」と仲間に
語っていたシーンが対比される。男親は決して異常な人ではなかった。精一杯やってきた人だったのに。6人も7人も殺しても、男親は獄中結婚の妻に、犯人の息子を死刑にしないでくれと頼む。
息子は獄中結婚の妻に、ずるずる死刑執行を伸ばすようなことはしないでくれと怒鳴る。すると、獄中結婚の妻は安い冷房のない部屋でも当時の交際相手と性行為してしまうという話を犯人に聞かせる。こういう面を良い思い出にしてしまうような感覚や、凶悪犯人に獄中結婚して立ち向かおうとする女の存在も変人なのだが、どうした考え方でそうした女が現実にもいるのだろうか。この異常な男女の関係の、ガラス越しの言い合いのシーンも凄惨である。男は軽く礼をして獄に入るようになっていた。涙を流す女。だが現実はこうしたケースもあるとしても、もっと修復不可能なサイコパスはいるはずである。本当はこう書くことが良心的である。これはフィクションだ。「葛城金物店」が閉店しているのが映し出される。男親は獄中結婚の妻に、死刑執行前に犯人は両親のことを何か言ったかと聞くが、別になかったが、死ぬ前に炭酸を飲みたいといったという。男が死刑執行をされて、獄中結婚の妻は、犯人の男親に別れの挨拶にきたのだ。「もうこれで息子との関係はおしまいか」と聞く男親。そして、男親は獄中結婚の妻をレイプしようとする。「唇くらいいいじゃねえの」「失礼じゃないですか。大きな声を出しますよ」「今度は俺の家族になってくれないか」「はい?」「俺が三人殺したら、おまえは俺と結婚してくれるのか」「ふざけないでよ。あなた、それでも人間ですか」驚いたような顔をみせたが、女は出ていく。残された男親は、妻と二人の息子の名前を呼ぶように叫ぶ。獄中結婚の妻は犯人には確かに向かい合えたかも知れないが、犯人が死ぬと関係を清算できた。交際相手とも性行為して別れられた女。しかし男親は。家の中のものをみんなぶちまける。壊す。家の中を滅茶苦茶にする。城だったのに。そして掃除機のコードを伸ばす。庭に出る。イスを持ち出す。木にかけたコードを首にかける。しかし、木が折れる。一瞬正座して立ち上がりまた部屋に戻る。滅茶苦茶な部屋の中で、食べかけていた蕎麦をまたすすりだす。
三浦
相変わらず三浦友和が素晴らしく、なっちゃんが頑張ってる。通り魔描写の、刺される側がなかなかリアル。ただ画が弱いし、この感じなのにエロがないのが弱い。どちも夜這未遂で終わる不甲斐なさが、韓国との差。新井浩史が、公園でタバコをポイ捨てして、しばらく経って戻ってきて、拾うエピソードが出色。
始終イライラ
まず、ストーリーが加害者サイド中心の身勝手すぎる内容でした。
獄中結婚にもうなずけず、相手が処刑されても涙すら流さないような結婚をする気持ちがどうしても理解できない。
三浦友和は時々オーバーアクションだと思います。
現代の家族描写が的確!!
強権的な父親が家族全員を蝕んだ結果を描いていますが、父親は一般的な面倒臭い団塊オヤジにしか見えないところがリアルだと思います。お母さんは息子を連れて脱出する判断力を持ちながらも、呆けてしまって怖かったです。中途採用やニートの就職は異様に難しいので、団塊の考え方とは決して相容れないのも上手く表現されていました。私も似たような状況ですが、実家に色々と問題を抱えている場合は、精神衛生上観ない方が良いと思います。襲撃シーンは良く撮れていました。色々やってまた食べるという何だか清々しい終わり方も印象的でした。本作の内容は十分起こりうる事で、誰もが皆自分が正しいと思っているのだから、別に狂ってはいないところがリアルでした。
狂っちゃった方がマシ
父親を正当化できないし、妻と息子2人に起こったことは彼が起こしたようなもの、だろうけども、若い時から懸命に築いたものとその努力を考えると、最も同情すべき人物のような気がした。最後、自暴自棄になるのはとてもよくわかる。
もしも獄中結婚の相手がいなかったら、葛城一家はどうなっていただろうか…
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