「鬱が好きな人に一番おすすめ」葛城事件 ぺさんの映画レビュー(感想・評価)
鬱が好きな人に一番おすすめ
初めて見た日は数日間、やるせない暗い気持ちを引きずりました。
数日間引きずるほどのショックを与えてくる展開の映画が好きなので、以来定期的に見ています。(定期的に見るものではない気がしますが…笑)
葛城一家崩壊のすべての原因は、父が自分のもつ家族に対する理想や愛を押し付け続けたことにあります。
愛し方を間違え続けている、それに長いこと気づかなかったからこんな結末になってしまった。
抑圧され続けた家族達も、もはや反抗を諦めてしまっていましたことも原因ではありますが、やはり一番悪いのは父ですね。
でも、愛する息子たちの成長を願って植えたミカンの木を見る父のその目は、間違いなく家族への愛に満ちた優しい眼差し。それが本当に見ていて辛かった。
そしてこのシーンが映るタイミングも、家族崩壊の全てを見せられた後であったことも尚更辛い。
星野にも拒絶され、父が本当に一人ぼっちになった時。
家族一人一人の名前を呼ぶ父の姿も本当に苦しい。
もう誰も帰ってこない現実、絶望を思い知らされる場面でした。
葛城清を見ていると、私の父も、自分が気に食わないことがあると大声で怒鳴ることがあり、私や母がそれに萎縮してしまい自分の気持ちを言えず、ただ頷き続けるしかないことがあったことを思い出し、少しだけ近しいものを感じました。
父が家族を愛していることも分かっているし、正しいことを言っている時もありましたが、自分はそれでもこう思っていた、という気持ちを言えずただ怒鳴り続けられるのは辛かったです。
そんなことを思い出しながら映画を見ていました。
「愛がなんだ」で若葉竜也を知り、痛々しいぐらい真っ直ぐな仲原を演じていたのに、その印象を引きずらず今回は我儘で弱い稔をしっかり演じていて、改めて役者はすごいな…と感じました。