「作中の殆どが待ち時間」マネー・ショート 華麗なる大逆転 movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
作中の殆どが待ち時間
邦題の華麗なる大逆転は間違っている。
本当に作品を観た人が付けたのか?
この作品から掴んだテーマは3つ。
①自分の目で見て考えろ
②選んだ選択を信じて辛抱強く待て
③仮に大きな賭けに勝てても、自分だけ得をして周りは損をしててもそれは本当に幸せ?
①はメインテーマ。
サブプライムローンの破綻など、立ち止まって自分の目で見てよく考えて、Googleが使えれば誰でも想定がつくような事。ウォール街や家を売る側にいたら実際の現場と離れててわからなくても、どんな社員も家に帰り地元があるでしょ?わざわざ郊外に行かなくても、経済に強いなら普通に生活の中で観察してれば予兆はなんらかでも掴めたはず。
でも、もし一瞬可能性がよぎっても、未来を想定できても、大船に乗ってる方が安心だし、周りと違う行動をしてリスクを払えば、変人扱いされるし、信頼を失う事もあるから、多くの人々は行動しない。
そして、羊の群れのように、盲目的に進んでいってしまう。
②そこに疑問を持てた者達は賭けを仕掛けたが、本当にサブプライムローンによる住宅バブルが崩壊して、読んだ筋道通りになるかという、疑心暗鬼の時間が作中の殆ど。諦めて途中で手放せば大きなリターンは得られない。チャンスをギリギリまで待って耐えたマークは本当に強いトレーダー。崩壊をいち早く予測したマイケルも批判に合うが、なんとか貫いた。ライアンゴズリング演じるジェレミーも、2年間の冷笑に耐えた。
果報は寝て待てと言いたいが、家族や生活が掛かってる実感があるからこそ、おじさんほどのんびり待てない。
まだ守るものが少ない若者2人は悪夢の予兆にはしゃぐが、そこに一喝するブラピ。まともで温かくて、良かった。
③待って、耐えて、やっと弾けたバブル。でもそれは、勝者が大金を手にするとともに、多くの不幸を意味する。それでも幸せを感じますか?まともな人間なら戸惑うはずだ。数十年金融界に身を置いてきた者達が出身銀行を否定する選択をして得たお金だが、同時に出身地の沈没も意味する。
経済界だけでなく、どこの業界も、絆や協力関係と言う名のしがらみに満ちていて、余程アウトローでないとそこから抜け出た単独勝負はできない。
でも、一生に一回くらい、個人的に莫大な資金を動かし、その責任を負って成功してみたいなとも思った。
多くはできないからこそ、その意味では、夢を見させてくれる作品。
もっと社会派かと思ったらかなり噛み砕いてくれていてわかりやすい。
そして、ちょこちょこ大物も出てきて、客寄せパンダ的に作品の豪華さを増しているが、それぞれの撮影は台詞さえ覚えていれば負担が少なさそうなシーンばかりで、マーク役と若手に注目が集まるような作り。室内シーンも多く、効率よく仕上がった作品だし、作中同様、ハリウッドの若手育成にブラピが携わる歳なのか、とほっこりした。