君はひとりじゃない
劇場公開日 2017年7月22日
解説
2015年・第65回ベルリン国際映画祭で監督賞となる銀熊賞を受賞したポーランド映画で、ポーランドのアカデミー賞であるイーグル賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞を受賞した、父と娘の再生を描いた人間ドラマ。病気で母を亡くした娘と検察官の父。心身を病んだ娘は摂食障害となり、日に日にやせていく。喪失感を拭えない父は、検察官として立つ事故現場で人の死に何も感じなくなっていた。埋められない溝ができてしまった父と娘は、お互いを傷つけあった。そんな娘の体を見かねた父は娘をセラピストのもとへと通わせてリハビリをさせるが、そのセラピストによる療法は普通では考えられないものだった。監督はポーランド人女性監督マウゴシュカ・シュモフスカ。ポーランド映画祭2016や15年・第28回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門で上映されている。
2015年製作/90分/G/ポーランド
原題:Body/Cialo
配給:シンカ
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2017年8月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
感動ものとして宣伝されているが、どちらかと言うとブラック・コメディ。首をつっていた男が、まだ生きていて突然あるきだしたり、霊を感知できるというセラピストが奇妙なセラピーを展開したりと、不条理劇的要素も強い。
原題は「BODY」とあるが、肉体とはなんなのかについての作品であるのは明白だ。翻って肉体以外の存在とは何なのかをも逆説的に問うている。
死体を見慣れた心が麻痺した刑事。拒食症のその娘。変わったセラピーを実施して異端扱いのセラピスト。3者の肉体と精神の関係が丹念に描かれる。
ポーランド映画というと、クシシュトフ・キェシロフスキが有名だが、監督はその影響を認めつつ脱構築するような気持ちで製作に望んでいるらしい。難解な面もあるが、ユーモアで上手く緩和している秀作。
2019年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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途中、伏線ばら撒きっぱなしで回収ナシなんじゃないかと思ったが、見事な着地点を見つけた風変わりな脚本。検察官のヤヌシュ、娘のオルガ、そして心理療法士兼霊媒師のアンナという3人の視点での物語は、最終的に3人が手を繋ぐところでまとまるのだ。
ヤヌシュの職業も、最初は警察官なのか医師なのかわからず、ひょうひょうとした態度で仕事をこなす太ったオヤジといったイメージ。そんな父親が大嫌いな娘のオルガ。ただ、一緒に暮らしているだけの存在なのだが、その存在自体が鬱陶しく思える思春期を過ぎた娘。
エピソードが上手く繋がるのかわからに上に、誰一人として笑顔を見せないという無表情演技が多い。BODYというタイトルからもわかるように、肉体と精神は一つじゃないことを意味しているように感じるし、霊媒師を否定もしないが、笑えるようなイメージでとらえたりもする。
墓場が水道管破裂によって困ってることを言い当てたアンナ。ちょっとは霊の存在も信じる気になったヤヌシュが彼女に相談するのだが、そろそろ自分でも霊を呼べるからと、机の引き出しに手紙を書けるように準備するよう助言するのだった。
最後には全然能力を発揮できずにイビキまでかいてしまうアンナだったが、そのおかげで父と娘は心を打ちとけることができた。この最後のシーンで思わず評価が上がってしまうのですが、笑いの無かった中盤から一気に表情まで氷解する展開が素敵。ほっこり。こんな可愛い子だっけ?とびっくり。
2018年12月26日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
親子の関係は他人には介入できないデリケートな問題が多い。目に見えるものと目に見えないもの、そのギャップは他の友好関係のそれとは全くの別物である。この作品では、そのデリケートな場所に踏み込んでいくある女性の存在がある。すこし余計なお世話だと思ってしまう行動が最初はとても気になっていたけれど、彼女は家族間の埋まらない溝は、家族同士でしか解決できないことを知った上で、助け舟をだした。その手法が可笑しくて、でも知的で、女性らしい柔らかさと凛々しさを感じた。観た後に感情が大きく揺さぶられる映画ではなかったけれど、ささやかな出来事の積み重ねこそが人生だと改めて知る事ができた良い映画だった。
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