ボーダーライン(2015)のレビュー・感想・評価
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映画は現実より奇なり
麻薬カルテルから家族を無惨に殺された、コロンビアの検事アレハンドロ。 復讐のために人間を捨て、泣く子も黙る修羅と化したー。 そこに、正義はあるのだろうか。 そこに、愛はあるんか、いや、あるのだろうか。 ベニチオ・デル・トロが、この際どい人物像を見事に演じている。 感情移入し辛いキャラクターだが、 脳裏に焼き付いて離れなくなるほどのインパクを放つ。 リアリティを持たせるのが難しそうなこの役に、よくもあれ程の説得力を与えられたものだ。 チャームポイントである?重く鋭い目つきのなせる業かー。 デル・トロと共に物語のリアリティを固めるのが、エミリー・ブラント演じるFBIの生え抜き捜査官。 状況の見えない場に放り込まれた捜査官の緊張と葛藤を、この俳優がまた見事に表現している。 この二人の仕事が、作品の完成度を高めていることは間違いない。 作品賞や撮影賞などの受賞で評価されているようだが、 個人的には、脚本がもっと評価されてしかるべきだと思う。 ちなみに、テイラー・シェリダンは、人間の心理描写が巧な脚本家で、「最後の追跡」という、大変面白い作品の執筆もしている。 メキシコや中南米の社会情勢を考えれば、この作品のような話が本当にあったとしても不思議ではない。 もちろん、映画と現実とは違うだろうが、この作品は、映画だからこそ表現できる「現実以上のリアリティと衝撃」をものにしている。 非常に見応えのあるサスペンスドラマである。
ボーダーラインとは
誰が決める?何処まであり? 善と悪のボーダーラインの基準って⁇ やられたらやり返す。 私はこっち派。 法の上に成り立つ現実世界では許されないけど、復讐が世界を救うこともあるのではとも思うよね。 この世に生きるべきじゃない人間って絶対いるし…。
善と悪の境で
メキシコの麻薬カルテルを撲滅しようと、命をかけて奮闘する女性FBI捜査官を主人公にした、アクション・サスペンス。 その主人公のFBI捜査官を演じのが、エミリー・ブラント。『クワイエット・プレイス』や『オール・ユー・ニード・イズ・キル』等で、美しい中にも激しいアクションをこなし、強く逞しい女優としての地位を確立している。 本作でも、男性社会が根強く残るFBI組織の中で、実力でのし上がり、怖い物無しに、なりふり構わず突き進むケイト捜査官を演じている。 ストーリーは、麻薬カルテルの大ボスを仕留める為のチームに、謎のコロンビア人等と共に、ケイトが招集される。そしてメキシコとの境界線を超えて、シークレット・ミッションが激しい銃撃戦と共に展開されていく。 ケイトはそこで、自分の命を守るために、他人の命が無造作に奪い取られる日常や、暴力と銃によって支配と服従が成り立っている現実を目の当たりにする。人としての善と悪の境界線の中で、命の尊厳に対しての葛藤を覚えていく。 いつの世にも、悪ははびこり、倒しても倒しても、また何処かで産声を上げる。諦めないで悪と対峙し、対決していかなくてはならない。しかし、この結末は、そこの妥協点を浮かび上がらせ、後味がスッキリしない現実と現状を突きつけてくる。
知らない世界のどこかで正義と悪はこんな風に戦っているのかも
ヤバい世界の雰囲気づくりが天才的。 映画なのに何処かドキュメンタリーのようなタッチが絶妙。 監督、カメラ、脚本、音楽がそれぞれ素晴らしく、高次元で融合している傑作。 ベニチオ・デル・トロとエミリーブランドの演技も秀逸。
地獄巡りの物語
法の力が及ばない、暴力と強欲の麻薬カルテルの世界。アメリカが秘密戦争を仕掛ける最前線では、ジョシュ・ブローリンとベニチオ・デルトロが演じるような男達が麻薬カルテルと闘う。 この2人がハマり役で、普通の神経では務まらないような恐怖と暴力にまみれた人生を送ってきた風格を漂わせている。デルトロは、麻薬カルテルに妻子を惨殺された元検事の役で、ただならぬ復讐心を抱いて秘密作戦を請け負っている。デルトロは顔が怖くて良い。 エミリー・ブラントは、FBIの捜査官役としては美人過ぎて不自然だが、この地獄の世界の案内役として、観客の立場を代弁している。法と善悪の判断に苛まれ、最後には銃を撃てない。 もはや現場では法も社会正義も無関係。個々人の逮捕や麻薬の押収ではどうにもならない、金と暴力に守られた地獄巡りの物語として、地獄と対峙する人々の物語として緊迫感に満ちた一級映画に仕上がっている。これが全くのフィクションでないのが怖い。日本に生まれてよかった。これを観て麻薬から離れる人が1人でも居たら良いと思う。 因みに続編も期待を裏切らない出来だった。
原題:SICARIO、邦題:ボーダーライン(境界線)。日本人向けの邦題が秀逸。
エミリー・ブラント演じる主人公ケイトの視点で、全てを知らされないまま麻薬組織壊滅作戦は進んでいく。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が意図的に作戦内容を伏せたまま、脚本家テイラー・シェリダンの名作サスペンス【ウィンド・リバー】の様に鑑賞者にそれぞれの”境界線”を引かせる作りはさすが。 その”境界線”とは何か。何に対しての”境界線”と感じるかは多分様々で、法であったり、倫理であったり、国境であったり、チーム内の役割であったり、、、住む世界であったり。 自分の生活していた現実。理想として思い描いていた現実、全く想像もしていなかった別世界の現実。だが全てが線引きされており、その境界線は見る事も実感する事も無かった。動揺と焦り、突然突きつけられる恐怖を、エミリー・ブラントが見事に好演。何より、ベニチオ・デル・トロ演じるアレハンドロが、目で素晴らしい演技を魅せてくれた。 重低音を多用する事で緊迫感を増す音響、無駄なアクションは無くし銃撃戦に特化、敢えて空撮という手法をとった演出、リアルを追求した潜入時のシーン、重苦しさなどはドキュメンタリーかと思う素晴らしさ。 全体的に難しく、理解に時間がかかるが、大人の娯楽としてオススメの作品。 原題の【SICARIO】はスペイン語。もともとはラテン語の意味が由来らしい。本来の【SICARIO】の意味は、知らないまま鑑賞した方が、ラスト30分の展開により緊張感が出る。 邦題:本作を総括的に見て付けられたタイトル。 原題:ある特定の人物にフォーカスを当てて付けられたタイトル。 是非、鑑賞後に意味を調べてみて改めて考察して楽しんで頂きたい。
宗教観的善悪の境界線
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のDUNEの予習の為に観てみたかった作品。監督独自の緊迫感のある重低音と俯瞰からの遠方撮影が世界観をよりリアルに見せる為にいい演出だと思います。内容は、監督が一貫して伝えたがっている何者かの抑圧からの解放か恭順か??監督の世界の見え方が麻薬組織に対抗する舞台装置として機能している時代性のある作品だと思いました。監督自身、家族や親子関係もよく使う素材なので物語が複雑になりながらも支配のボーダーラインに迫った様に感じました。
これぞ麻薬戦争の現実
FBI捜査官が麻薬組織撲滅作戦に参加し、 えげつなく振り回される話。 戦争映画のようなアクションを 想像してましたが全くの別物。 麻薬戦争の衝撃の事実を知ることになります。 誰もがルールや秩序を無視していて、 ボーダラインを超えたやつらばかりです。 この物語で明かされることが 事実なのかは分からないけど、 実際そうなってるんだろうなあと思いました。 正義とは何か問われるシリアスな話でした。 序盤はかなり緊迫感あってよかったですが、 終盤は迫力不足だったのでこの点数です。 リアルな作りを追い求めた結果かもしれないですが。
何をやってるのかわからない
ヘタをすると誰が主人公なのかもよくわからない。警察機構のどの辺まで上のヤツがどのくらいまで知ってるのかもわからない。それも分からないで通して主人公と一緒に私まで騙されなければいけないのか納得がいかない。まあどこに正義があるのかよくわからないような映画を作りたかったと思うのだが・・・見ていて胸糞が悪くなるだけだった。アンチヒーローならもっとアンチヒーローらしく描いてしまうべきだったと思う。そうじゃなくてヒーローぽく描きたいんだったらボスを入れ替えてどのようにしようというビジョンがめちゃないとだめだよ。 あるいは暗黒がいう混乱させてどうするとか、明確なビジョンを示してくれないとダメ。じゃなきゃボス殺したって次のやつが似たようなことするだけで意味ないじゃん。 大麻でもヘロインでもやりたいヤツはやればいい。危険だからやめようって自由を奪うのは私は反対だ。大事なことはそういうモンがどのぐらい危険かということよく教育することだ。 私がここで教育してあげよう。ドラッグをやると早く次のトラックをやりたいという強い衝動が頭から離れなくなる。 それは自動車で人を跳ねてしまって相手が今生死をさまよっているとか・・・そういうレベルのことが頭から離れなくなるので同じレベルで強烈だ。ただし全員が全員そうなるわけではない。あなたがそうなるかもしれないし、ならないかもしれない。それでもドラッグやりたければやればいいじゃないか。
いかに日本が幸せなのか再認識させられた
アマゾンプライムで観賞。 麻薬カルテルは武力が行き過ぎて軍隊顔負け、警察はそんなカルテルに尻尾を振る言いなり。世界でもトップクラスに治安が悪いと言われるメキシコに生まれ、生きていくだけでも至難の業だ。我が国日本がいかに平和で安全な国なのか思い知らされる、そんな一本だ。
怒りと惨さ、善と悪が混ざり合う傑作
ベニチオ・デル・トロの凄みと影が映画にどんよりとした深みを醸し出している傑作。 善を成すために悪に染まり、悪は単純に悪ではなく彼らにも愛する家族がいる。 普段の生活では感じることの出来ない世界観をリアルな描写で体感させてくれる傑作。
冒頭、ショッキングなシーンでそそってくるが、そこからがやや冗長。話...
冒頭、ショッキングなシーンでそそってくるが、そこからがやや冗長。話が重くて難しい。確実に分かったのはメキシコ🇲🇽はほんまにヤバいこと。壁を作りたくなる気持ちがわかる。 主役かと思ってたお姉ちゃんは実はそうではなかった。終盤の緊張感は半端ない。マジで怖い。 時々挿入されるサッカー少年のシーンがラストに生きる。悲哀。 BS12字幕版鑑賞
観る価値がある映画
硬派な対麻薬犯罪組織ドラマといったところ。ネガティブな要素は多いが突き詰める作業がちゃんとされていて観る価値がある映画だと思う。 主人公は女捜査官だが、物語の軸はデルトロが演じる元検察の部隊員ということになる。麻薬組織のボスに家族を惨殺され復讐を果たすため作戦に参加している。過去は映像として出さないのでぼけているが、そういうことらしい。 ようするに彼女は最後まで蚊帳の外。活躍する場面がなく、過酷な現実に愕然とし神経をすり減らしナーバスになっていく過程が描かれる。これは視点の設定という意味ですごく巧みだと思った。観る側も彼女の視点に立ち目の当たりにする複雑な事柄を共有させられる。 あのクライマックスはインパクトあると思う。妻子供を先に殺す、あれ。 なぜ、あれを描くか?そこに作品の芯がある。あれは考え得る限りの極刑。法に委ねるに値しない人間、というある意味反社会的な主張とも採れ、それを描く点に作り手の強靭な意思を感じる。。
終始緊張
ハラハラドキドキとかそんな生やさしいものじゃない。蛇に睨まれたカエル状態でずっと緊張する映画。 正義が存在しないかのような世界で自分の意思ですらない何者かにコントロールされているような気分だ。 誰もなんとも思わないささやかな存在が誰かにとっては大きな存在なのだ。大きな流れとともに描かれる警察官の死はこの映画にとってもささやかなものだが、僕らの心には強く印象付けられる。 まさにこの世の不条理の象徴的な存在として描かれている。
鬼
「ウインド・リバー」がめちゃくちゃ良かったので、シェリダン脚本ということで見た。麻薬カルテルの話なので、残酷な描写があるかもと思うと気が重い。が、ビニール越しだったり、遠景だったりで、多少は紛れたので助かった。グロいのがとにかく苦手なんで。しかし、たくさん人が死ぬのは間違いない。 命の価値が低くて、やりきれない。 ヒロインはちょっと線が細すぎな感じだけど、この映画に必要なのは迷う人だから合っているのかも。見た目が良いのも利用される条件だし。レジー役の人、どこかで見たなーと思ったら、「ゲット・アウト」か! ハンサムくんだね。 正直、作戦の内容はよくわからなかった。アメリカがどんだけ困っているのかもあまり知らないし。トランプがメキシコとの国境に壁を作るとか言ってたので、実際手を焼いているのだろう。そんな状況で妻子を殺され、鬼と化したアレハンドロ。ケイトと違い、迷いは一切ない。人間の一線を超えてしまったのか、感情が顔に出ないから怖い。水のボトルは何に使ったのかな…。
凄い世界を覗いてしまった
主人公も観客も何もわからないまま、麻薬組織が蔓延るメキシコに駆り出されて、撃ち殺し撃ち殺されるのが日常という世界を覗いてしまう。 主人公も観客も、なんとかついて行き、自分なりの正義を貫こうとするが、そういう世界ではないと知る。 凄い世界を覗いてしまった。
最近一番何回も見てる映画
アメリカとメキシコの国境周辺での密入国側ととそれを阻止する国境警備隊との小競り合いのはずが、メキシコの麻薬カルテル対掌握しようとするCIA側の攻防戦に。今や密入国は麻薬カルテルが取り仕切る時代になっている。 地元FBI女性捜査官(エミリー・グラント)に捜査協力を依頼するCIA局員(ジョシュ・ブローリン)とCIAに雇われた謎のコロンビア人殺し屋(デルトロ)の三人を軸に物語は進む。 兎に角映像がいちいち美しい。メキシコで犯罪者を受け取り、戻る黒のSUV車の列を空撮してるだけなのに何かスタイリッシュである。 静かで不気味な音楽が更に不安感にさせ、かつ映像を洗練させる効果が少なからずあった。 さすがヴィルヌーブ監督といったところ。 あくまでも法に則った走査をしようとするFBI捜査官とアメリカの正義を優先するCIA局員の対立しながら進む。 結局は小さな正義は大きな現実に敗れることになり、なす術もなくFBI捜査官は脱落者となり終わる。 「ボーダーライン」は邦題で、原題は「シカリオ」=殺し屋である。それをハッと思い出させるラストだった。
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