火の山のマリアのレビュー・感想・評価
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【今作は、序盤は望まぬ子を持った貧しき家に育った娘マリアとその家族の煩悶する姿を描き、最後半、2010年頃、グアテマラで起こっていた赤子人身売買の事実を世界に晒した作品である。】
ー 多分、人生初のグアテマラ映画である。
劇中ではグアテマラという国の名前は一切出て来ないが観ていれば分かる。-
■グアテマラの高地。
マリアは、火山のふもとで農業を営む両親と共に暮らすマヤ人の少女。
父親は生活苦から、マリアを地主イグナシオの後妻に嫁がせようとしていた。
ところがマリアは、農園で働く青年ペペの子を身籠ってしまう。
やがてその事実は、両親にも知られてしまう。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・最初は何処の国かな、と思いながら観ていたが、アメリカとメキシコの名前と、珈琲の生産地であることが分かったので、グアテマラの映画である事が分かる。
■ストーリー展開はシンプルで、少女マリアが貧しき家を助けるために、地主イグナシオと結婚することが決まるも、アメリカでの生活に夢を持つ恋人ペペと関係を持ってしまい、子供が出来る。
・今作の見所は、現地の人々を起用した出演者とドキュメンタリー風の映像である事と、ラスト30分で明らかになる、当時のグアテマラでの幼子の人身売買が明らかになるシーンであろう。
■マリアが蛇に噛まれ、堕胎した筈の子供の棺に入っていた石・・。
<今作が、ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した理由が分かる作品である。>
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■第80回ベネチア国際映画祭で、銀獅子賞を「悪は存在しない」で受賞した濱口監督、おめでとうございます。
凄い監督になられて行くなあ・・。
色々な?¿
他人ごとであり、また、他人ごとでない
無知であることがどれほど不利益を生むのか、
また、一見「頼りがいのある」実は「ならず者」を
のさばらせることになるのか、
これを観て、痛いほどよくわかった。
個人レベルでも、社会レベルでも、
それは同じはず。
もちろん、これは自分にも当てはまるはずだ。
「マヤだけで自分は関係ない」、と思うのは、
それもまた無知ゆえの発想と思う。
これからグローバリゼーションで、
自分より優秀な外人がガンガン入ってきたら?
英語や中国語ができなくて大丈夫?
人口知能の発達、ロボット技術の発達で、
専門知識の領域が機械に置き換えられたら?
今の自分のポジションは大丈夫?
ならず者は、きっと、置き換えを考えるはずだ。
ちゃんと生き抜けるよう、マリアから学ぼう。
次の一手を考えて、踏みだそう。
不思議の国のマリア
此所じゃない何処に、心置いてきちゃたマリアと、今、此所で娘の幸せを願う、ご両親。まるで噛み合いません。それでも、何があっても、娘を想う親心に、心動かされました。結果、誰が主役なのか、判らなくなりましたが。それと、結婚を成就するために、あらゆる手を使う彼は、善人なのか、危ない人なのか?。不思議なんですよ。監督の人柄なのか、誰もマリアを傷つけない。みんな優しい。普通なら、感情的になって、多くの人が、傷つけ合う話になるはず。ひょっとしたら、マリアとは、本人の意思と無関係に、しきたりに従わざるを得ない世界の象徴なのでしょうか。正直、解りません。いずれにせよ、子を大切に想う親心は、有難いですね。厳しい自然と、人の優しさに包まれた作品です。ちょっと、不思議の国ですけど。
見ていて楽しいものではない
先住民の文化などを守っていくことが果たして大切なことなのかどうか常々疑問に思ってしまう。結局は搾取以外の何ものでもない、かたちはどうあれ、損をするのは当事者だけ。そんな現実を突きつけられた思いがする。
確かに、その文化すべてが絵になりそうな印象を持つし、壊したくないという思いは理解できる。しかし、単に檻の中に押し込めてしまうようなものであるならば、いくらお金を与えたところで、その文化が平和に未来永劫つづくとは思えない。
もはや古い文化は記録とか形式としてしか存在し得ないのではないだろうか、悲しいかなそう思わざるを得なくなる映画であった。
見ていて決して楽しいものではないけれども、非常に意味のあるものだと思う。単に問題提起にとどまらず、最後まで興味を失わせないように作られているところも共感できる。
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