永い言い訳のレビュー・感想・評価
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純粋に悲しめない僕たち
この監督は何でここまで男の心理を読めるのか不思議です。
トラックの運ちゃんのように奥さんの死を真っ直ぐに悲しむのではなく、主人公のような状態になってしまう人に共感する男の方が多いというのが分かってるんでしょう。
主人公に対して知的レベルが低く、それでいて純粋な人を比較対象にして、ダメっぷりを表現するのは流石です。
最初の方で主人公の奥さんが浮気に感づいていたという前フリが、直接的には回収されず、それでいて見終わった後に気持ち悪い感じで残像のように残されるという効果があります。
欲を言えば、主人公が「俺のようなるなよ」みたいに悟るまでにもう一手必要だったかなと思います。
ラストは自分で片付けをして、本当の意味で「整理をつけた」ということでしょうか。
男ゴコロの機微
人によって「良い」の基準は違うだろうけど、鑑賞の前と後
自分の中の何かが変わるような作品はやっぱり「良い映画」だと思う。
本作はまさにそんな感じで、
派手なシーンがあるわけでもなし、謎解きの面白さがあるわけでもなし、
でも不思議と、静かに惹きつけられるように見入ってしまった。
肝心のストーリーは、ある男が別れと出会いを通してちょっとだけ変わるお話。
観る人に感情移入させてしまうモッくんの演技がまた秀逸で、
(当然あんなイケメンではないし社会的な成功もしていないけど)
「それって逃避ですよね?」って言われるシーンにはドキっとしてしまった。
最後に、モッくんの衣裳が非常にカッコいい。
調べてみたらビームスが全面協力だとか。
西川監督の作品、もっと他にも見てみようと思う。
すこし平坦?
もどかしい
じんわりと・・
遺された者の心の痛みを幾重にも描く
西川美和監督。本木雅弘。
結婚しているけれど不倫中。妻にはもう愛情が持てない。そんな妻を事故で突然亡くしても実感が無い。
家事が溜まっていくのが唯一妻を亡くした証なのが皮肉。
一緒に事故にあった友人の家族と、頻繁に会うようになり、子供の扱い方も分からないのに、仕事の日は子供を預かる約束をする。
戸惑う不器用な様子を丁寧に描いていて、だんだん馴染んでいく。
何故、子供を預かるなんて言ったんだろう。子煩悩には見えないし、謎の行動。家事が得意なわけでもない。
それは現実逃避なのか。
子供と触れあううちに何かが変わっていく。
他人の子供だけど、初めて家庭の営みを知った。羨ましいと思ったのかもしれない。
とにかく本木雅弘の演技が秀逸。
感情の起伏が大きく、クズだけど繊細な作家の孤独をよく表現している。
事故後に残された遺族の話
愛するということ
私はとても好きな作品
西川美和監督は「ゆれる」でとても印象に残っていたので、今回も期待していました。
この監督は、人間の微妙な心の動きを描かせたらピカイチだな、しかも男性心理描写がすごいのです。見栄とプライドの影に隠れる女と違った黒くて弱い感情。それが今回もひしひしと伝わってきてよかった。
配役もよく、もっくんの成熟した男の色気を拝見できるだけでも十分価値があるのでは。こういう作家いそう。それと真逆の竹原ピストルさんの人間味溢れる演技もよかったなあ。対比が文句なしによかった。
強いて言えば、あまりにラストがふわっとしており、物足りない人には物足りないかもしれません。でも、人間そんなに劇的に成長なんていきなりしないよ、という監督の意図だとすれば、それはそれでリアリティーがあり納得です。
題名の意味
どんでん返しではないけど、先が読みづらい作品。 妻が泣くなり、悲劇...
「悪いけど、後片付けはお願いね」「そのつもりだけど・・」
映画「永い言い訳」(西川美和監督)から。
妻が、親友と出かけたバス旅行の事故で突然、他界するところから、
この物語がスタートするが、私のメモ帳に残ったメモは、
なんと、そのバス旅行に出る前の「夫婦」の会話だった。
「悪いけど、後片付けはお願いね」「そのつもりだけど・・」
本当に何気ない台詞で、気にすることもないのだろうけれど、
事故で亡くなる前の妻の台詞だから、気になった。
自分の旅行中に、夫が不倫相手とエッチするだろうなぁ、と
考えていたかもしれない、そんな想像が膨らんだ。(汗)
だから「悪いけど、後片付けはお願いね」と声を掛け、
不倫がバレていることを知った夫は「そのつもりだけど・・」と
口ごもったのではないか、とまたまた想像が膨らんだ。
作品の中に隠されている「何気ない会話」「例え話」が、
作品後半になって、意味を持ってくると、なぜか嬉しいから、
こんな会話が「気になる一言」になってしまう。(笑)
あっ、この作品、原作があったんだよなぁ。
全然、関係なかったら、ちょっと恥ずかしいけれど、
今度、本屋で確かめてみようっと。
人間とは?とうったえかけてくる作品
とても人間らしい作品。よかったです。
本木雅弘と言えば、おくりびとのイメージ。人生に葛藤しながらも納棺師という職業を通して故人と向き合い、人生の意味を再発見するといったものだった。
今回の作品もある意味で人生の再発見をしている。この作品での役どころは、おくりびとのイメージとはうって変わって、夫婦円満とはほど遠いプライドのかたまりになってしまった亭主役である。
最愛だったはずの奥さんに愛想がつきてしまっている。奥さんが旅行で家をあけている間、ほかの女の人を家に連れ込んでしまっている矢先、奥さんが高速バスの移動中に事故に遭い、還らぬ人となってしまう。
しかし、愛想が尽きていたためか、主人公は、奥さんの死を目の前にしても涙はこれっぽっちも出なかったのである。情事にいそしんでいた自分を責めることさえもなかった。
そんな無機質な状況のなか、奥さんの友人であり、一緒に旅行に行き、命を落とした方の遺族との出会いを通して、葛藤しながらも、人を愛することの意味を見いだしていくといった感じの話である。
自分自身は、同じような状況ではないけれども、今の環境を愛して、大切にしていきたいなと思わせてもらった。
出ている役者、一人一人の表情やセリフがリアルで、とてもよかった。多彩な才能を発揮されているらしい竹原ピストルさんの演技がとてもいいなと思った。また、池松壮亮のセリフにも、グッとくるものがあった。映画っていいなと思った今日この頃である。
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