「少女漫画がお好きなら、幸せに浸れます。」植物図鑑 運命の恋、ひろいました とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
少女漫画がお好きなら、幸せに浸れます。
原作未読。
レビューを拝読すると微妙に違うらしい。
恋は盲目。さやかの気持ちは共感できる。
けれど、知人がこんな男と結婚すると言い出したら、全力で反対する。
大切な人に大切なことを伝えないで、大切な人を失意に落とす男。それで「ごめん」もなくて、どや顔。伝えない事情に必然性はない。性格にも必然がない(この辺の演技ができていないで、ただ王子様なだけ)。なんだそれ。
映画(漫画)なんだから…という設定の中だけでは、胸キュンの展開だけれども。
本当に相手を大切に思い、人生を共にしていこうと思うなら、今までのこと、これからのこと、ちゃんと話し合うのが、愛なんじゃないだろうか。
業績として形になるものがないと愛を語れないというちっぽけなプライドは、すっごく共感するけれど。
でも、目の前の大切な人はそこ、気にしているの?さやかは、日々の暮らしを共にしてくれることで幸せになっているのに。
「ちゃんと責任とれる男になりたい、もっと幸せにしたい」という気持ちはわかる。だったら、なぜそれを、「だからこうしたいんだ」もしくは「ふさわしい男じゃないから、ふさわしい男になるまで別れよう」とさやかに伝えない?勝手に一人で悦に入って酔ってる王子様。このあたりの葛藤がちゃんと表現されていたら、とっても素敵なラブストーリーになったのに。脚本にもないし、演技もできていない。ああ。
結婚後のすれ違い。一方的にさやかが合わせていくんだろうなあ。
高畑さんは、長い髪を下したショット等が、有村架純さんと被る。印象を分けた方がいいと思うのだけれども…。損している。映画の中での化粧も、この映画のインタビュー記事の服装も似合わない。高畑さんの良さがつぶれてしまっている。メイク・スタイリスト変えた方がと思いつつ、事務所の方針なのかな?
(映画での宮崎さんの化粧もタヌキ。樹はルージュ塗っている…そういうキャラ?樹というより岩田氏のまんま)
高畑さんに話を戻すと、
定評ある演技力。ちょっとはしゃぎすぎの演出にはブーイング。でも、母の「お正月は…」前後の微妙な表情・口調・態度。他にも、端々に、帰るところ・頼る人のない心もとなさ・寂しさが伝わってくるから、この映画の展開も、突っ込み入れつつ、共感してしまう。
そして、パーティから抜け出す直前のアップの表情等、映画館の大きな場面で浸りたいと思わせるショットも、ところどころある。この場面、映画館で観ていたら、不覚にもさやかからもらい泣きしているだろうな。
第一印象が、生真面目さが前面に出ていて硬くて、ぱっと華やぎのある女優ではないけれど。かわいいが、下手したらモブに紛れてしまいそうになるのだけれど。でも、映画の中では、こんな風に魅入ってしまう表情をする。”銀幕のスター”という言葉は使われなくなってきているが、やっぱり”スター”だ。
アイドル化なんてしないで、大切に育ててもらいたい女優さん。
映画としては、
自然に咲いている花々を、もっと情緒豊かに見せて欲しかった。ただの説明的記号にしか見えない。
胃袋つかむ系の映画では、やっぱり『かもめ食堂』『深夜食堂』等の足下に及ばない。料理はおいしそうなのに(さやかの箸使い等が行儀が悪くておいしく見えないということもあるが…。あの箸、さやかの手の大きさに合わないよ。細長すぎ)。
部屋のインテリアとか、一見凝っていそうなのに、物語やさやかの性格に合わない。そういう細かいところに気配りがない。
題材はいいのに、勿体ない。
一度見て忘却しそうな映画。
でも川端氏の言葉は、覚えておこう。