「王子様を待ちたくなる恋愛ファンタジー」植物図鑑 運命の恋、ひろいました ゆざわさんの映画レビュー(感想・評価)
王子様を待ちたくなる恋愛ファンタジー
「こんな出会い、ありえない!」とは思うものの、あったらいいな…とも思う。
出会いの場面。空腹で行き倒れていた樹を見つけて声をかけようと見つめるさやか。仕事はうまくいかない、実家の母とも母が再婚相手と暮らしているため疎遠になっている孤独なさやかが、倒れている樹の顔を少し惚けたような、見惚れているような顔で見つめるシーンが今後起こるすべてを暗示していたように思う。
倒れていた彼を見つけたさつきは、初めて樹を見つけた時から一目ぼれしていたのだろう。空腹の彼にとりあえずカップラーメンをごちそうしてやったところ、ガツガツ食べるのに粗野な感じはまったくなく、エサを一生懸命食べる子犬のようにかわいらしくチャーミング。エサだけじゃなくてミルクもあげたくなるし、汚れているみたいだからシャワーも貸してあげたくなる。ラーメンを食べたらきちんと片付けようとするし、お箸の持ち方も食べる姿勢も美しく、お礼を言ってすぐに立ち去ろうとする樹。最初からずっとさやかが彼に思いを寄せ続けていたのは映画を見た人ならすぐわかる。
さやか目線で物語が進むため、樹の気持ちはなかなかわからない。イケメンだし性格もいいし、どう見てもモテそうだから彼女だっているのかもしれない。ミステリアスな彼がさやかのことをどう思っているのか、半年たったら出て行ってしまうのか。
ハラハラしたりショックを受けたり。さやかの気持ちにとてもシンクロできたので途中ほろっと泣かされたりもした。ハッピーエンドだったので見終わった後の気持ちもさわやかだ。ただ、樹側の心の描き方がやや不足かなーと感じた部分も。樹はこのままで十分魅力的なキャラクターではあるが、彼の側の心情を出て行った後のことなど少し描いてみてもよかったかもしれない。父親との関係性など描かれていたらなーとはちょっと思った。