マジック・マイクXXL : 映画評論・批評
2015年10月13日更新
2015年10月17日より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほかにてロードショー
男たちの最後のから騒ぎ。アメリカンニューシネマの系譜を継いだ逸品!
宣伝の謳い文句によると「究極の女子会パーティエンターテイメント」。確かにそうかも知れない。マッチョなイケメン俳優が男性ストリッパーに扮しセクシーダンスを披露する。前作「マジック・マイク」の全米興行も7割が女性客だったそうで、チャニング・テイタムの胸筋と超絶ムーブにおひねりを投げたくなっても不思議はない。
が、男性側である自分は声を大にして叫びたい。本作は男の泣き所を刺激するほろ苦いロードムービーだと。いや、男女の隔てはない。日常の中でくすぶっている私たちを3日間の夏休みに誘ってくれる魅惑のグレートエスケープなのですと。
人気ストリッパーだったマイクが足を洗って3年。小さいながらも夢だった家具メーカーを経営し、それなりに充実感もある。そこに昔の仲間から呼び出しがかかる。引退を決めた彼らは、年に一度のダンス大会で最後の大花火を上げるのだと息巻いていた。
触発されたマイクもトラックに飛び乗り、大会が開催されるマートルビーチまでの珍道中が始まるのだが、この旅はいい歳こいた彼らの《修学旅行》だ。大会に出たところで何かが約束されているわけでもない。長すぎた青春の終焉を確認するための儀式なのだと、本人たちが痛いほどわかっている。
一方、ストリッパーである彼らは旅の途中で出会う女性たちにひと時の現実逃避を提供する天使のような存在でもある。浮世から遊離したしがらみのない関係だからこそ生まれるピュアな優しさを、マイクたちも女性たちも、観客のわれわれも学んでいく旅でもある。
前作のマシュー・マコノヒー、アレックス・ペティファー、コディ・ホーンは出演せず、伝聞として語られるのみ。大人の事情があるのだろうが、不在を逆手に取ったアイデアがみごと。彼らは停滞を嫌い、前向きに未来へと進んでいる。逆に今回登場する連中は皆、緩慢な日常に足をすくわれ、次の道が定められず宙ぶらりんなままだ。
現実に追いつけない男たちの最後のから騒ぎ。テイタムが「さらば冬のかもめ」を引き合いに出したように「マジック・マイクXXL」はアメリカンニューシネマの系譜を継いだ逸品として記憶されるべきだろう。
センスよく映像にまとめたのはソダーバーグから監督を引き継いだグレゴリー・ジェイコブズ……と言いたいが、なんと製作総指揮・撮影・編集をソダーバーグが兼任。弟子筋のジェイコブズには申し訳ないが、映画監督業から遠ざかっているソダバの変則的な新作として楽しむのもいいだろう。
(村山章)