「悪人も人間である事に変わりはない」スーサイド・スクワッド ゼリグさんの映画レビュー(感想・評価)
悪人も人間である事に変わりはない
映画という文化において、なぜか悪人は悪人として、善人は善人として描かなければいけないという決まりが、暗黙的に出来上がってしまっている。
この人はこういう人間のはずだから、この場面でこういう行動を取るのは理解できない、違う行動を取るべきだ。
人物の描写が出来ていない、と。
だが、人間の性格というものは、決まっているようで決まっていない。
個人的な考えで言わせてもらうと、知り合いでもなんでもない登場人物が取る行動の理由など、知ったこっちゃない。
悪人とされている人物が急に人助けをしようが、善人であるような人物が、急に人を殺そうが関係ない。
ただ「そういう人間」なんだと思うだけだ。
こんな事を語りたくなったのは、僕がこの映画を観て、監督が「映画」のいかにもな「悪役」を主人公にしようとしたのではなく、「罪を犯した人間」を主人公にしたかったのだと感じたからだ。
そこが気に入らない人も、もちろん居るだろう。
期待した人ほど、地味に映ったはずだ。
映画なんだから、もっと突き抜けろと。
コミック原作なんだから、もっと派手にやれと。
昔だったら、僕もそう思ったかもしれない。
けれど、映画はどんなジャンルであれ「人間」を描く事には変わりがないと思っている今では、僕の目から見るとこの映画は、良い人物の描き方をしているように見えた。
例えば、みんなに大人気のハーレイクイン。
一見するとネジが外れた女にしか見えないが、愛する人との生活に憧れ、その死に泣き、友情に厚く、友人には決してその弱みを見せない。
こういった映画には珍しく、性格が多面性を帯びている。
だが、そういった描写を意識しすぎて、余計なものまで付け加えてしまっている部分もある。
例えば火を武器にするディアブロの回想。
彼の葛藤だけは余計だと思ったが、わざわざ回想を入れて感傷的にするのはいただけない。
カタナの刀への語りにしても、いかにもな感じがして、格好悪い。
なので、各々の人物描写に関しては、良くもあり悪くもありと言ったところだろう。
最後に、全編を通じて画面のコントラストにあまりメリハリが無く、見づらく感じた。
大部分が夜の場面ばかりなのだから、もっと照明を頑張ってほしかった。