劇場公開日 2016年11月12日

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「日常(不変の)」この世界の片隅に ミハエルさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0日常(不変の)

2017年8月16日
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憧れ、夢、希望、恋、結婚、嫁姑、嫉妬、女の子の人生。
不変だよね、今も昔も多分これからも。
のほほんとした夢みがちな少女が結婚して様々な問題に悩み、それでものほほんと生きていく。なんて素敵なんだろう?昔も今も変わらないよくある話。
只、それが昭和20年前後の広島が舞台だってコト
僕達が知っている圧倒的な悲劇が確実に待っている物語だってコト
劇中ですずさんは困る、戦時下の大状況に周りの人たちも困る でも悲壮感はあまり無い「困ったねぇ~」って台詞で日常として昭和20年を生きている
そう、どんな時代だって悲壮感だけで生きている人なんていないんだよ
そこが悲壮感を感動にすり替える有りがちな映画との違い。
それがあたりまえの日常だと信じて生きてるんだから。

それでも数々の圧倒的な悲劇を通り過ぎて、すずさんは初めて感情を吐露する「こんなの納得できん、暴力で従えていたもんは結局暴力に屈するんか」と。
のほほん少女のこの台詞に僕は映画を見ながら初めて狼狽えてしまった。
戦時下っていう暴力的に不条理な大状況が他の暴力によって終わり、すずさんにとっての日常が心と体に傷を残したまま終わってしまう。
これほどのメッセージがあるだろうか?

反戦映画で有りがちな、ここで感動しなさいって押し付けが全く無く
すずさんが初めてみせる怒りが僕の心に突き刺ささる。
こんな体験した映画ははじめてだった。

後日談的に八月六日から暫くたった広島市内で見知らぬ孤児の女の子を拾って、「よう生きとってくれんさったねぇ」と声をかけるすずさんに我慢していた僕の涙腺は崩壊した。

これは残っていく作品だし
必ず残さなきゃいけない作品

ミハエル