リグレッション

劇場公開日:2018年9月15日

リグレッション

解説・あらすじ

「アザーズ」「海を飛ぶ夢」で知られる名匠アレハンドロ・アメナーバルが、「アレクサンドリア」以来6年ぶりに手がけた長編監督作で、「6才のボクが大人になるまで。」のイーサン・ホークと、「美女と野獣」のエマ・ワトソンが共演。1980~90年代初頭のアメリカで、悪魔崇拝者による儀式が次々と告発され、人々が不安にかられて社会問題となった騒動に着想を得て生み出されたサスペンス。90年、アメリカ・ミネソタ。刑事のブルース・ケナーは、父親の虐待を告発した少女アンジェラの事件を取り調べることになるが、当のアンジェラも訴えられた父親も、どこか記憶が曖昧だった。著名な心理学者に協力を仰いで真相究明を進めるケナーは、アンジェラたちの記憶をたどっていくうちに、事件が単なる家庭内暴力ではないことに気づき、町の各所で起こっているほかの事件との関連を調べ始める。やがてケナーは、町に秘められた恐ろしい闇に迫っていく。

2015年製作/106分/R15+/スペイン・カナダ合作
原題または英題:Regression
配給:ポニーキャニオン
劇場公開日:2018年9月15日

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(C)2015 Mod Entertainment Mod Producciones Himenoptero Regresion Canada Inc Telefonia Studios Regression A.I.E

映画レビュー

3.5 追う立場のはずが追い詰められる不条理

2018年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

怖い

興奮

アレハンドロ・アメナーバル監督の過去作では「アザーズ」を思わせるゴシックホラー風味の演出で、じわじわと恐怖をあおってくる。ただし本作、一筋縄ではいかない。「アザーズ」のような大仕掛けはないものの、事件を追う刑事と同様、観客も思わぬ方向へと導かれていく。

刑事役のイーサン・ホークは、追う立場のはずが精神的に追い詰められていく緊迫感と焦燥感を的確に表現。エマ・ワトソンは珍しくダークな側面を感じさせる役どころにチャレンジしている。

アメリカの地方のコミュニティーが抱える闇という点では、ダニエル・デイ=ルイスが主演した「るつぼ」を想起させる。ただし本作のベースになった出来事は80~90年台という。ごく最近までこんな騒動が起きていたということにも驚かされる。

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高森郁哉

4.0 意外にも掘り出し物。

2026年5月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

難しい

全く存在すら認識していなかった作品です。

とにかくじわじわと怖いのです。そして面白い。

銃社会、なのに銃が役に立たない恐怖。

イーサン・ホークのマッチョな正義感とエマ・ワトソンの狂気を帯びた美貌。

タイトルで損してるのと日本人にはピンと来ないテーマ(日本以外の国々でも酷評されたみたいですが)ですが、人間の奥底にある"純粋な邪悪"を見事に描いた佳作だと思います。

2026.5/23

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ケンドー鹿児島

3.5 【”純粋な邪悪。”今作は、悪魔崇拝思想が蔓延る1990年代に実際に起きた複数の事件をモデルにしたサスペンス・スリラーである。】

2026年5月12日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

知的

難しい

■1990年、アメリカ・ミネソタが舞台。
 ブルース・ケナー刑事(イーサン・ホーク)は、父親ジョンの虐待を告発した少女、アンジェラ・グレイ(エマ・ワトソン)の事件を取り調べる。
 ジョンは虐待の記憶がないにも関わらず罪を認めるのである。
 ケナー刑事はアンジェラの記憶をたどりながら事件の真実を追うが、自らも数々の悪夢を見て行くのである。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・今作は、公開時に映画評論家連中から酷評されたそうであるが、個人的にはとても面白怖かった作品である。

・序盤は、直接的に表れない悪魔崇拝者の影や、不穏な雰囲気に包まれた街とそこで暮らす人々の姿が、誰が犯人だが分からないまま、物語は進むのである。

・そして、アンジェラ・グレイを”虐待”したのが、ジョージ・ネスビット刑事(アーロン・アシュモア)である事が”告げられるのである”。だが、彼は嘘発見器に二度掛けられても、その行為は無かったと証明され、釈放されるのである。だが、刑事の職は失うが・・。

■今作は、終盤、全てはアンジェラ・グレイにより、創り出された事件である事が分かるシーンの、アンジェラを演じたエマ・ワトソンの端正な顔が、怖いのである。
 彼女は母の死の原因となった酒浸りの父、同性愛者の兄を嫌悪しており、二人を陥れようとした事、ジョージ・ネスビット刑事と恋に落ちつつも、彼と駆け落ちする事は叶わず、彼をも陥れようとしたのである。
 一番怖いのは、彼女がそれを”善”と考えて、ラストでも全ての出来事は悪魔崇拝者の策略であるとインタビューに答える姿であろう。

・そして、エンド前にテロップで流れる
 - 退行催眠は、虚偽記憶を引き起こす事が多い。- という言葉も成程なのである。

<今作は悪魔崇拝思想が蔓延る1990年代に実際に起きた複数の事件をモデルにしたサスペンス・スリラーである。>

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NOBU

4.5 美しさが仕掛けるもの

2026年5月2日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

『リグレッション』を観ていて怖かったのは、悪魔崇拝そのものではない。
人が「信じてしまう瞬間」だった。
この作品は、実際にアメリカで起きた悪魔崇拝パニックを下敷きにしている。
だが描かれているのは、悪魔の存在証明ではない。
曖昧な記憶と証言が、どうやって“現実”へ変わっていくのか、その過程だ。
退行催眠。
思い出された記憶。
児童虐待。
悪魔崇拝。
どれも強い言葉だ。
そして強い言葉ほど、人は冷静でいられなくなる。
特に児童虐待という問題は難しい。
本来、弱い立場の人間を守るために、証言は重く扱われるべきだ。
しかし同時に、人は「守らなければならない」という正義感を持った瞬間、見たいものしか見なくなることがある。
『リグレッション』の主人公ブルースは、まさにそうだった。
彼は悪人ではない。
むしろ正義感の強い刑事だ。
だが、だからこそ危うい。
父親ジョンの曖昧な告白。
アンジェラの怯え。
悪魔崇拝という不気味な噂。
それらを繋ぎ合わせるうちに、ブルースは次第に“真実”ではなく、“真実であってほしい物語”を見るようになっていく。
この作品で興味深いのは、そこにエマ・ワトソンがキャスティングされていることだ。
アンジェラは、美しい。
私はこの「美しさ」が、この映画において非常に重要だったのではないかと思った。
人は論理だけで他人を信じていない。
美しさや純粋さに、勝手に意味を見出してしまう。
守るべきものだと感じてしまう。
そしてその感情は、ときに証拠より強い。
ブルースはアンジェラに恋をしたわけではない。
だが彼は、彼女を「守るべき存在」として見始めた瞬間から、暗示にかかっていったように見える。
悪魔崇拝を信じたのではない。
自分自身の正義感に酔っていったのだ。
だから終盤、現実と幻想の区別が崩れていく。
悪夢のような光景は、本当に超常現象なのか、それともブルース自身の内面なのか、わからなくなる。
だが最終的に明かされる真相は、あまりにも人間的だ。
アンジェラは、ただ家族から逃げたかった。
ジョンは、妻を苦しめ続けた罪悪感に押し潰されていた。
ロイは、当時受け入れられなかった同性愛に苦しんでいた。
誰も悪魔ではない。
しかし、それぞれの傷や逃避、罪悪感が絡み合った結果、人々は「悪魔」という巨大な物語を必要としてしまった。
魔女裁判も、きっとそうだったのだろう。
誰かが「見た」と言う。
誰かが「感じた」と言う。
その瞬間、不安や恐怖は形を持ち始める。
そして人は、事実よりも、“信じたい感情”を共有していく。
『リグレッション』とは、悪魔の映画ではない。
人間が、自分の中の欲望や正義感や不安によって、どこまで簡単に暗示へ飲み込まれてしまうのかを描いた映画だったのだと思う。

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