「近未来設定の異常犯罪捜査もの第二作」秘密 THE TOP SECRET akkie246さんの映画レビュー(感想・評価)
近未来設定の異常犯罪捜査もの第二作
松竹WOWWOW2016年度作品。
近未来設定の異常犯罪捜査もの。監督の前作「プラチナデータ」は、原作からどろどろした部分を排除したつくりになっていたが、今回は少女漫画原作をリアリティ重視で濃密に再現しているように思う。
多分次回作の「ミュージアム」こそが、この刑事物三部作のラストを飾るに相応しい衝撃を与えてくれるのだろう。そしてその次の「三月のライオン」がどのような作品になるのか大変気になる。大友監督はどこに行こうとしているのか。
クリストファーノーランの「インセプション」では、ディカプリオが他人の夢の中に入り込んで駆け回った。「マトリックス」では、キアヌリーブスが他者とともに電子世界へ侵入して冒険をする。「ザ・セル」は、異常犯罪者の潜在意識に侵入した女捜査官の話だった。「マルコビッチの穴」では、俳優の意識に入り込んで他人になりきるような体験をする。
本作はただ、死者の脳内映像を再現して捜査するだけだ。とは言え、猟奇殺人犯人の主観映像のため、かなりエログロ要素が大きい。少女漫画原作を馬鹿にしてはならない。大友監督の手にかかれば、リアルな猟奇殺人犯人の意識に入り込んでその映像化を可能にする。
第九 警視庁内の極秘捜査機関。科学警察研究所法医学第九研究室。特殊脳内捜査チーム。自殺した凶悪犯貝沼の脳内映像を見た五人の捜査員のうち、三人が自殺、一人が発狂。まあ普通そんな映像は見世物にすべきではない。しかしどんな内容なのか気になるところでもある。
死んだ三人のうち一人は、槙の親友であり、戦友の鈴木克洋だった。鈴木はすでに死んでいるのだが、原作知らなければ少々分かりにくい。そこもミステリーのひとつではあるのだけれど。
死者の頭蓋を切開し、捜査員の脳と死亡した犯人の脳を電気的に接続。死んだ脳に入り込んで、映像記憶を辿ってゆく。すごいリアリティだった。
合成チームも美術セットも音楽効果も最良の結果をだしていると思う。正直なところ、このキャストで、大友監督でなければ、見ていなかったかも。映画館でみれたことは良かった。ただ、本作を誰にでも勧められるかというと、そうではない気もする。
貝沼の記憶に接続した鈴木の記憶を半日かけて読みなおす槙を、もう一度みるのは疲れそうだ。スタッフは何度もみているわけだが。
ネタバレになるが、ラストの盲人と盲導犬のエピソードがすこし唐突だったように思う。盲人たちを現場に連れてきたのも絹子だったのだろうけれど。もう一度見直すと印象も変わるかもしれないが。
映画全体としては相模原市の事件を彷彿させるようなエピソードばかりだ。これは大友監督たち製作スタッフのおそろしいほどの同時代性と先見性である。