「矢口蘭童は、金田一耕助か?」シン・ゴジラ さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
矢口蘭童は、金田一耕助か?
エヴァンゲリオン:テレビアニメ第一話と最終話を観て、「はいはい、こんな話ですねー。庵野、見切った!」つって、エヴァファンから「うをいっ!」と、度々マジ切れされる私が、「あらすじ読んだから、庵野監督が言いたいことはだいたい分かってるよ」つって、シン・ゴジラ観て来た人に、「うぐぐぐぐ」ってギリギリされる私が、やっと観て参りました!
"戦後は続くよどこまでも"
はてさて矢口蘭堂(長谷川博己)は、金田一耕助か!?
※役名は奥様:安野せんせの作品からとったらしいことは重々承知しています。
※注1 暴言注意。
※注2 ネタバレ?注意。
※注3 思い込み注意。
※注4 なげーです(笑)
以上、宜しくお願いいたします。
1954年、戦後9年に制作されたオリジナル・ゴジラは、戦争の痛みをなんとか乗り越えようとした日本人の心を、ぼっきり折る恐怖の対象として描かれてたと思います。
始まって40分以上も姿を表さないゴジラに、不安感が掻き立てられ、またあの苦しみがやってくるのか!という、逃げ惑う人達の恐怖というか、絶望が、観ているこちらにも、ひしひしと伝わって来ました。
本作は、ごてごてな政治家さん達の対応から3.11が思い出され、その点からゴジラ=災害として描かれてるという感想が散見されます。
でも災害であれば、憲法解釈云々の件は必要なくなりますし、自衛隊の立ち位置の問題、某国との侍従関係を語るシーンも必要ないと思います。
あと、アメリカがあの時と同じことをしようとするのを、日本が阻止するというストーリーが、やはりゴジラ=災害という描かれ方でないと思うんですよ、はい。
私はゴジラ=日本人に染み込んでいる恐怖(に近い、不安感)の対象として描かれていると思いました。それは、やっぱり戦争ですよね。近隣某国との関係ですよね。
なので私はやっぱり、ゴジラ=敵と観ました。
これ、きっと私だけだと思うんですけど、いや、言うと引かれると思うんですけど、いや、怒られると思うんですけど。
観てる間ずっと「(失礼をお許しください)観たか駿!ぶははははは」と、心の中で笑ってました。
ジブリ鈴木Pが宮崎駿監督の後継者は庵野秀明だ!とか仰ってましたが、庵野監督は宮崎監督とは全く違う思想の持ち主で、日本国が某国から主権を取り戻し、日本国を日本国民独自で守る=日本が"諸外国並"の憲法と自国を守る十分な備えを持ち、"諸外国並"の国家の存続を図るべき。
つまり、宮崎監督とは真逆の考えの持ち主であることが分かって、嬉しかったのです。
ほんと、見切ったとか言ってごめんなさい!
あと、岡本喜八監督リスペクトって、聞いたんですけど……。
確かに劇中、登場人物紹介テロップとか、ゴジラの研究をしていた牧教授の写真が、岡本喜八監督でしたよね?
でもここだけの話、あの写真が宮崎駿監督に見え、別な意味でざわざわしたのは私だけではないと信じたいです(笑)!
え、(失礼をお許しください)は、駿を殺した!?と。
ほんと、すみません。
だけど、夢の中で自分が登場人物の一人になるくらい"犬神家の一族"を何度も観てる私としては、失踪した?亡くなった?牧教授が残した暗号を解く為に、右往左往しているその道のスペシャリストの方々ってストーリー&その姿、会議で政治家さん達が、食い気味に、被せ気味に、早口で会話している姿、役者さん達がやや過剰に(特に石原さとみさん=犬神家の一族では坂口良子さんに匹敵する?)演技する滑稽な姿、的外れな提案をして観客を失笑させる政治家さん(名前忘れちゃった)の等々力警部ばりの「よし!分かった!」を彷彿とさせる姿を観るに、"エヴァ"とか"日本のいちばん長い日"つーより、市川崑「犬神家の一族」リスペクトだなーって勝手に思って、またまた嬉しくなったのです。
そう!"犬神家の一族"も、亡くなった犬神佐兵衛の遺言によって起こる惨劇がお話の軸です。そしてその根っこにあるのは、日本の古いしきたりや、伝統に縛られる、先祖代々や、本家や、分家と言った、切っても切れない血のつながり。
本作では政治家さん達の、切っても切れない縦横のいやらしい繋がりを描く反面、そこを潔くすぱっと断ち切きり、新しい若い政治家が活躍できるような思い切った脚本になっていて、あぁ、庵野監督って、こういうとこ凄いなって感動しました。
ほんと、すみません!
そこを切らなければ、政治家同士、派閥同士の足の引っ張り合いで、何事もごてごてになってしまう、今の日本そのまんまになってしまうし、それこそ同じようなテーマを扱いつつ、陳腐なアイドルの恋愛劇や人情劇にシフトして失敗した"日本沈没"みたいに、とっちらかってしまったかもです。
あ、今思えば"日本沈没"は、本当に勿体ない作品でした。阿蘇山噴火により、我が生まれ故郷の熊本が一番先に沈んで行くのを観て震えました。
本作では、ゴジラの炎で焼かれる街を観て震えました。
映画を観て、心の底から恐怖したのは初めてです。
"犬神家の一族"は、 閉塞感のある村で起こった陰惨な事件で、恐らく大都市に住んでいる人達にとっては別世界、「今どき、長男とか次男とか、本家とか分家とか、気にするのー?」な、ある意味ファンタジーです。
本作にも、似たようなことが言えると思います。
今までの日本で、政治家さん達があのように行動力と決断力を発揮して、事を丸く収めたことはない。
某国から主権を取り戻し、自分達で何か決めてやり遂げたことがないんです。庵野監督の脚本通りのことが起これば、日本も諸外国並に独立した国家となり得るのでしょうか?
そういった点で、途中からゴジラと政治家さんとのリアルとファンタジー(虚構と現実)が反転するところが面白かったですね。
そう、面白かったんですよ。
庵野監督、今まで本当に申し訳ありませんでした!
またハリウッドであれば、一市民が世界をとか地球を救う的なあり得ないパターンとなるところを、専門的な知識を持ったエキスパートでも、常にチームで戦う日本っぽさ。
従来の日本人の美徳であった、勤勉さ、献身的で思いやりのある、「人道」を重んじるところなど描いていて、好感が持てました。
てか、ラスト泣けた。
「希望」
もうひと頑張り、私もしなくちゃと思いました。
そういう映画、久々です。
PS
ゴジラ新作は2017年。なんと脚本が「虚淵 玄」です。
そう!"魔法少女まどか☆マギカ"の脚本チームですね。
つ、つーことは、ゴジラ=魔女かしらー?????
こ、これは、楽しみっす!