「向き不向きがはっきりする。」シン・ゴジラ クマおさんの映画レビュー(感想・評価)
向き不向きがはっきりする。
子供には不向き、難しくて怖くてトラウマになるかもしれない。
派手なアクションでスカッと爽快に戦闘や破壊を単純にたくさん見て楽しみたい人には不向き。
話の展開についていちいち説明や描写がないと理解できない・理解しようとしない、面倒くさがりな人にも不向き。
あなた頑張ってきてね、死なないでね的な安っぽいヒューマンドラマが無いと入り込めない人にも不向き。
過去のゴジラの見てくればかりに囚われている人にも不向き。
これは初代ゴジラや84ゴジラの本質に加えて、3.11で受けた恐怖や傷痕や警鐘や皮肉、そして目の前に迫ったり手の中に持っている恐怖に対してもどことなく他人事・他人任せな現代人への憂慮を織り交ぜて、この2016年の「背伸びしない、目の前に広がる日本」で表現してみせた、ゴジラ・ドキュメンタリー。
単なる怪獣プロレスや怪獣ヒーロー、人間ヒーローvs怪獣などの過去にゴマンと作られたありがちな怪獣スペクタクルを求めている層には全く違う作品。
その証拠に、この映画の中には「怪獣」という単語は一度も出てこないし、対怪獣用の空想特殊兵器は皆無、現有する攻撃力と知恵と組織力で対峙する。
過去のゴジラはもとより色んな映画や書物、物語、伝説などの「引っかけ」が数え切れないほど仕込まれており、作中で出てくる単語や名称などに対する復習が欠かせなく、とにかく知力と体力を使う。
エヴァじゃないかという声が多々あるが、監督自体が初代や数々の特撮に触発されてきた人であり、そもそも特撮の手法をアニメに落とし込んだ人なので、ゴジラ全作品を見たあとでエヴァというものを知ってすべて見た私には、そこで培った手法を「里帰り」させているように見えた。(某BGMだけは1~2回でよかったかな?とは思うが)
初代ゴジラや84ゴジラと入口は違えども出口は同じであり、ゴジラでなくても描けそうでゴジラじゃないと絶対に描けない。全てのゴジラ作品があってこそ成り立っている2016年版初代ゴジラ。
真の「ゴジラ」として最高の一作だと思います。