劇場公開日 2015年9月19日

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心が叫びたがってるんだ。(2015) : 映画評論・批評

2015年9月15日更新

2015年9月19日より新宿バルト9ほかにてロードショー

言いたいことを言えない空気を変える勇気の話

これは思いを伝える勇気の話だ。見る人の思い出を刺激しながらほんの少しの勇気の大切さを、痛みとやさしさをもって伝えてくれる。

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の監督、脚本家、キャラクターデザイナーが再結集した“あの花トリオ”の新作で、舞台も同じ秩父であるから、本作を“あの花”のイメージを持って鑑賞する人が多いだろうが、だいぶベクトルが異なる。この作品は、伸びやかな感動よりほろ苦さも交じる複雑な余韻を残す。

学校の閉鎖的で抑圧的な人間関係。面倒な実行委員を押し付け、やる気のない同級生、おとなしい子に向けられる冷笑。学生時代に体験した人も多いであろう、目立つと叩かされそうなギスギスした空気が充満する。

本作のヒロイン順は、幼い頃の発言で両親の離婚を招いたせいで、玉子の妖精に喋れなくなる呪いをかけられる。そんな彼女が本心を伝える唯一の方法が歌うこと。そんな順のために、もう一人の主人公、坂上はクラスの出し物でミュージカルの製作を提案する。呼応した彼女の勇気が少しずつクラスの雰囲気を変えていく。

もう一人のヒロイン菜月もまた本音をいえずに苦しんでいる。チアリーダー部の部長で優等生、社交的な彼女の言葉はまるで本音を隠すためにあるかのようだ。彼女も坂上との過去の諍いで(順とは別種の)呪いを自らにかけている。本作のテーマは、本心を言いづらい社会に、本心を伝えることの大切さ。両ヒロインがそれぞれ別の方向からテーマを体現する。順は言葉で傷つけることが怖くて、喋れなくなった。菜月は言うべきことを言えなかったから後悔を抱えた。その2人が終盤のミュージカルシーンでどのような配役になるのか注目してほしい。

言葉で人を傷つけたこと、言えなくて後悔したことのある人なら、スクリーンに自身の思い出が写されているような気持ちになるだろう。全てが上手くいったと言い切れないラストは、それでも登場人物たちの勇気で前向きな余韻を残してくれる。

杉本穂高

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