劇場公開日 2016年1月15日

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パディントン : 映画評論・批評

2016年1月12日更新

2016年1月15日よりTOHOシネマズみゆき座ほかにてロードショー

“紳士的なクマ”が大都会ロンドンで奮闘する、多幸感いっぱいのファミリームービー

モフモフとした毛並みのクマだが決してテッドではない。名前はパディントンという。トレードマークの真っ赤な帽子、青のダッフルコートはそのままに、世界中で愛され続ける児童文学のキャラクターがついにスクリーンデビュー。これが笑いと感動と冒険のたっぷり詰まったエンタテインメントに仕上がっている点に、まずはありったけの賛辞を送りたい。

そもそも“パディントン”とはロンドンにある主要駅の名前だ。ジャングルから新天地を求めてイギリスにやってきた主人公のクマさんは、このプラットフォームの片隅に立ち、自分に住居を与えてくれる優しい人が現れるのを待ち続ける。そんな姿を見かねて声をかけたのがブラウン夫人(サリー・ホーキンス)だった。「とりあえず、我が家へいらっしゃい」と促され、その時はじめてクマ語以外の、人間社会でも通用する名(駅で出会ったから、パディントン!)をつけてもらう。かくして彼の、波乱万丈のロンドン暮らしがスタートするわけだが……。

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このクマときたら、時々ちょっとだけ頑固なところがあるものの、基本的にいつも礼儀正しく健気で可愛らしい。もちろんCG技術なくしてこのリアルなキャラは生まれ得なかったわけだが、いやそれ以上に声を吹き込んだベン・ウィショーの功績は大きいだろう。「007」シリーズでも知られる彼のふんわりと優しい響きが耳の中に余韻を拡げる心地よさは格別である。また、一家の主人役のヒュー・ボネヴィルや悪役のニコール・キッドマンを始め、ベテラン俳優陣によるアンサンブルも緩急自在で実にお見事。

多くの人種がせめぎ合うロンドンが舞台なだけに、お互いの差異を受け入れ、困っている人に手を差し伸べる、といった普遍的なテーマをしっかりと織り込んでみせるのも魅力的だ。そうやってブラウン一家とパディントンの絆がぎゅっと強まるに従って、映画全体もホッコリとした温もりに包まれていく。この何とも言えない多幸感。まずは原作を知ってる人も知らない人も思い切って本作に飛び込んでみてほしい。子供向け? とんでもない! 年齢など全く関係なく、きっと誰もがパディントンの冒険に大きな笑顔をもらえるはずだ。

牛津厚信

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