罪の余白

劇場公開日:

罪の余白

解説

芦沢央による第3回野性時代フロンティア文学賞受賞作を内野聖陽主演、「FLARE フレア」「スープ 生まれ変わりの物語」の大塚祐吉監督により映画化。高校のベランダから転落死した女子高生の香奈。娘の死を受け止められず、自分を責める日々を送る父親の安藤は、事故か自殺か、娘の死の真相を知るために、娘のクラスメイトに接触する。そんな安藤の前に、校内カーストの頂点に立つ美少女・咲が現れる。安藤と対峙することになる咲役には、第13回全日本国民的美少女コンテストグランプリ受賞の吉本実憂。

2015年製作/120分/G/日本
配給:ファントム・フィルム
劇場公開日:2015年10月3日

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(C)2015「罪の余白」フィルムパートナーズ

映画レビュー

4.5妄想に溺れる

2024年7月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

2015年の作品
現在の作品との違いが少し見られるのが良い。これは決して批判する意味ではなく、作品の進化の過程を垣間見れるという意味だ。
しかしどこ?と聞かれれば言葉にするのは難しい。それは細部で、その感想は勝手な私の主観でしかない。
さて、
タイトルだが、犯罪にはならないグレーゾーンの「罪」について表現しているのだろう。
カナの父安藤 彼から見ればグレーゾーンは処罰の対象に映る。しかしそれは法律上の罪なのかどうかは別にして、人間的「罪」はあるのかどうか、それを物語を通して提言している。
結果、サキは安藤を突き落とした事実だけが罪とされており、カナを追い詰めたことは罪には問われていない。
結果だけ捉えれば、安藤は復讐を果たしたことになる。
ここに「問題」の根本的すり替えが起きているような気がしてしまう。
最後にサキが収監所の廊下を歩くシーンがあるが、彼女の眼は「私が何かした?」と言いたげにしている。反省の目ではない。それは、何か解決したと言えるのだろうか?
また、
この「復讐心」のモチーフが「闘魚」だろうか? いや、復讐ではなくもしかしたら「闘争心」かもしれない。
冒頭に親子で闘魚を選ぶシーンがある。魚を見る二人の映像が重なる。二人の意識が一つになっている。まぎれもない親子 同じ思いがあるのを感じ取れる。
カナは青いのを選んだ。その青い闘魚は安藤が入院している間に死んだのだろうか? この場合、目的を果たしたという見方もできる。
逆に、安藤は青色の闘魚を大学の自習ルームの大きな水槽に移し替えたのだろうか?
争う必要のない大きな水槽は、カナが望んだことでもあった。戦うことを終えた安藤の思いとカナの意識を、想いを自由にさせたかったのかもしれない。
また、
サキという人物は、感覚的に一定数いるように思うが、さらにデフォルメされたのがサキだろう。吉本美憂さんはサキ役を良くやり遂げたと思う。見事だった。
彼女の夢 映画女優 この夢をカナには話していたがマナには話してない。
このことは最後マナを激しく動揺させる。これこそがサキによる「支配」方法なのだろう。カナとマナの意識を絶えず自分自身へと向けさせるのだ。
そしてこの手法は出会うすべての人間に応用している。
担任 女性警官 クラスメイト(根も葉もないうわさ) 芸能事務所のスカウト女性…
ササガワナナオはサキの人物像を概ね見抜いていたのだろう。サキがカナ宅に弔問した際、自分をササガワナナオと言ったこと これが彼女最大の失敗だったと思われる。
安藤の執念も凄いが、されを見事にかわし続けるサキも見事だ。
ただ、オザワサナエに対する徹底したメンタリストのような見抜き方とダイレクトな物言いこそ、サキの人間性を物語っている。これはサキの完全勝利というよりも「諸刃の刃」だった。
このサキとオザワ、サキと安藤の描き方は秀逸だ。
さて、
安藤はサキが面接を受けた芸能事務所を訪れた。個人的には安藤の復讐劇を、彼女の夢を潰すことで始末した方がよかったように思う。安藤が「学校も警察もダメなら、このことをマスコミに話す」と言ったが、それでもよかったと思う。
しかし作家はその2つを選択しなかった。サキに犯罪を犯させるのだ。サキの限界点と稚拙さを表現している。
サキが安藤を突き落としたのは、サキが表面上は平気な顔をしていたが、相当追い詰められていたことを示唆している。マナの失禁でそれが表現されている。
安藤にもその手ごたえがあったのだろう。
ただ、学校のベランダにサキを呼び出し、「カナが落ちた時、悲しかったか? うれしかったか? どんな感じだったか教えろよ」と何度か叫ぶが、その声はサキよりも教師に聞こえるように叫んでいた。この時の安藤の目的がわからない。ただサキを追い詰めているということだけを表現したかったのだろうか? このことは手ごたえになっていたのだろうか?
もうひとつ、
サキが芸能事務所の面接直前、女性スカウトに声を掛けられる。話の流れでは「予定」されたことが伺えるが、スカウトが待ち合わせ場所で佇むサキに見惚れている。尾行していた安藤も、サキの佇む表情にサングラスを外して見とれていたようだった。
サキは佇みながら涙を流した。 なぜ?
これは何の表現だろう? サキは一体何を表現したのだろう?
二人はサキの女優としての輝きを見たのだろうか?
それともカナの死のことを考えていたのだろうか? 彼女にも些細な罪の意識があったのだろうか?
しかしチーフマネージャーとの面接では、そんな感覚は微塵もない。あくまで女優になりたいことを貫く。
この「演じる」ことこそ、サキが毎日の生活の中で得ている喜びなのかもしれない。
彼女は待ち合わせ時間にスカウトに見られるように自分自身を演じたのだろう。
時系列を整理すると、
酒を捨て戦う決心 サキを尾行 スマホデータ回復依頼 オザワにラップトップ サキを呼び出す スマホ復旧 二人を自宅に呼び出す…
いずれのシーンでもサキの人物像に変化がない。
モンスター それはサキの面接で指摘された甘さ、幼稚さと対比するのだろうか?
彼女の画一された人間像とは、成長できなかった心だろうか?
この部分が解決されていない。追及されていない。しなくていい設定かもしれない。
しかし、サキの「罪の余白」はいったい誰が解決するのだろうか?
面白く考えさせられる作品だった。
こんな些細な違和感の修正がこの後の作品で生まれ変わっているのを考えると、邦画の進化にワクワクが止まらない。

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R41

1.0共感はできなかった残念な一本

2023年8月10日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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talkie

2.0惜しい

2023年7月21日
スマートフォンから投稿
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きよ

3.0谷村美月が上司?

2022年3月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 ただただ吉本実憂演ずる木場咲が怖くなる。どう対処しても社会的弱者とも言える女子高生に世間は味方し、父親の安藤は窮地に追い詰められることになるのだ。他人の名前を使って父親とともに遺書を探す。自分の名前が書いてあるのではないかと不安だった咲。しかし、名前を偽ったという時点で不信感が強まる安藤だった。それにしても女優を志すだけあるわ!普段から演技してんだもんね・・・こわぁ。こういう女子が痴漢に遭ったとかいって冤罪事件を作るんだよね、きっと。

 大学では谷村美月が助教授であり、講師の内野聖陽から見れば上司にあたる。谷村演ずる小沢も心理学では上かもしれないけど、実践に弱そうな性格。対面して後から客観的には性格分析できるけど、咲にはボロボロになるまで罵倒されてしまうのだ。頑張れ!美月ちゃん。負けるな~と応援したくなった。車の運転も頑張って!

 クラスでは女帝という立場がぴったりで、彼女の目にかなった生徒しか喋ることはない。まぁ、仲間というより奴隷ですね・・・ガツン。将来もモンスター決定。ただ、スカウトされたのに自己主張しすぎたために落とされちゃったのはしょうがない。社長もビジネスライクなのでわかってらっしゃる。

 もうちょっと心理戦が見られるかと思ってたけど、心理学講師にしては相手に陥れられてばかりだったのが残念なところ。まぁ、あとは体を張るしかないよね・・・心理学の教職という設定にしない方が良かったかも・・・

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kossy