「人生の次のステージに進むこと=「セカンドチャンス」」トイ・ストーリー4 HBさんの映画レビュー(感想・評価)
人生の次のステージに進むこと=「セカンドチャンス」
ピクサーは「旧作を超えて語るべきテーマがない限り、どんなヒット作でも続編は作らない」がモットーだということもあって、
あの完璧な終わり方をした「3」を超えてもなお、
語られるべき「4」のテーマとは…とかなり構えて鑑賞しました。
語られる物語の結末が、
旧作ファンたちにはいささかショッキングだったこともあり、レビューを見ていると「否・嫌」が多かったのもわかる気はしますが、私はこの物語が(見ていてつらいところもあるけれど)とても好きです。
アカデミー賞短編アニメ映画賞を受賞した「Bao」も、
「シュガーラッシュオンライン」もそうでしたが、
「主役はもはや自分ではないということを認めること→人生の次のステージに進むのに必要な勇気と痛み」がテーマになっています。
なので「親世代」は見ていてキツいところもあるし、
しんどいし、受け入れきれない、見たくない、顔を背けたくなるところもあるかと思います。
実際「シュガーラッシュオンライン」は、
我が身と重ねて鑑賞しすぎて胸が潰れそうになり、
しばらく作品世界から抜けられませんでした…。
そのときに比べると、ボー・ピープや、
新キャラたちの存在が、この映画の結末を明るく照らしてくれたこともあって、
落ち込みは「シュガーラッシュオンライン」の時より少なく済んだように思います。
「シュガーラッシュオンライン」が、似たようなテーマを、
親離れする子どもの目線で(主に)描いているとしたら、
今回は逆で、子離れする親の新しい人生の始まりを、
親目線で描いています。
重要な物語の舞台でもあるアンティークショップの名前にもありますが、その名の通り「セカンドチャンス」。
人生の主役が自分ではなくなってしまっても、
自分が誰かの「一番」ではなくなってしまっても、
ただまた自分が主役の時がやってくるという「奇跡」を待ち続けるのではなく、
一歩踏み出す勇気を持つことで、
新たな「セカンドチャンス」という世界の扉を自分で開くんだ、とピープは教えてくれます。
「チャンスの神様は…」ってやつですね。
物語後半にウッディの取った行動は、とても優しく、
勇気があるもので、心からウッディを尊敬しました。
強すぎる正義感を持ち、
押し付けがましくもあり、周りをイラつかせることだって多々あった「みんなの保安官」ウッディですが、
持ち主含む「みんな」を優先して考えられるところは、
なににも変えがたい長所だと思います。
時々一生懸命になるあまり、周りが見えなくなってしまうところもありますが…。
そんなウッディが、
「次世代を育てる事しか役割が残されていないこと」を強く実感していて、
その役割に執着していく姿は、とても切なかったです。
でもそれは、親としての自分がよく感じることでもあるので、ウッディの気持ちが痛いほどわかりました。
「私」という人生の主役までもが娘にすり替わっていることに対して、時々「私自身がやりたいことって何だったっけ?」と迷うことがあります。
でも、それを優しく肯定してくれたのが、
他ならぬウッディ(とこの映画)です。
この映画は多くの「自分の存在意義を見失いつつある人」に、再度自分自身を肯定する「セカンドチャンス」を与えるキッカケになっていくのではないでしょうか。
私自身も、セカンドチャンスを素晴らしいものと感じていけるように、
一段上がったステージでの役割を楽しみながら果たしていきたい、と思いました。