フィフス・ウェイブ : 映画評論・批評
2016年4月19日更新
2016年4月23日より新宿ピカデリーほかにてロードショー
地球侵略を壮大なスケールで魅せながら、普通の女の子のリアルな成長物語を描く
「ハンガーゲーム」「ダイバージェント」とライトノベル原作SFのヒットが続く昨今。そうした作品でヒロインが闘うのは未来社会の体制だが、本作の舞台は人類滅亡の危機にある地球。さらに、新鋭の起用が常道のジャンルにあって、既にスターのクロエ・グレース・モレッツを主演に据えるあたりも一味違う。きっと、それも闘いのカタルシスではなく、ヒロインの成長を描きたかったからこそなのではないだろうか。
というのも、家族や大切な人を守りたいという行動の原動力は、ほかの多くの主人公たちと同じにしても、本作の主人公であるキャシーが闘う相手は人類を滅亡の危機にさらしている地球外生命体〈アザーズ〉。普通の女の子が戦うにはあまりにも大きすぎる存在だ。
実際、上空にとどまる巨大飛行物体が「インデペンデンス・デイ」の興奮を蘇らせる〈アザーズ〉出現の日から、電源シャットアウト、天災、感染、侵略と4つの段階を経て進行する地球侵略のスケールは壮大だが、キャシー自身のストーリーはまさに等身大。たった一人でサバイバルを続ける彼女を動かすのは、離ればなれになった幼い弟を救い出したいという思いだけ。
そう、壮大なスケールの中で等身大の物語を描いているのが、この作品のミソなのだ。しかも、主人公はついこの間まで普通の高校生だった18歳の女の子。物資がなくなった世界でスーパーマーケットの棚からバッグにねじ込むものに女の子ならではの大変さをうかがわせるリアルな感覚は、その後の恋愛模様にも活かされることになる。
アザーズが人類にまぎれ込んだ世界で出会ったミステリアスな青年は、はたして信じられる存在なのか。平和だった高校時代にときめいていたアメフト部の花形選手の影もあるなかでのキャシーの心の揺れ方も王道青春映画とは一味違い、むしろ大人女子が観ると共感できそうだし、クロエ・ファンのおじさまたちの心もくすぐりそうだ。
そうしたサバイバルを通しての彼女の成長物語の濃さは、アザーズの次なる攻撃〈第5の波〉のことを忘れてしまいそうになるほど。でも、それがかえって、〈第5の波〉の衝撃を大きくすることになっているのは間違いない。
(杉谷伸子)