「.」バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。謂わずと知れた第87回のオスカー四部門受賞作。喰わず嫌いで敬遠していたが、知人に薦められ観てみた。終始笑いっ放しで先入観が覆る程、とても愉しめた。出てる人が皆巧い。キャストを追尾するカメラワークは時間や場所、頭の中や幻想、心象風景等を自在に行き来し、交錯するが、シームレスに見せるトリッキーな編集はテンポが良く、中盤辺りから伏線も活きている。打楽器メインのBGMも新鮮に思えた。人が陥る狂気と悲哀が滲み出ており、アートを重視するニューヨーカーの芝居好きさを再認識させられた。80/100点。
・原題"Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance)"。パーレンの附いたタイトルでは、初めてのオスカー受賞作となったが、全篇デジタル撮影の作品でも初の受賞作となった。亦、119分と云う尺は、監督最短の作品である。
・インタビューシーンでは、日本人が特撮好きに描かれている。亦、劇中名前が登場するM.スコセッシは、“リーガン”役のM.キートンがブリーフ一丁でタイムズスクエアを闊歩するシーンで観客の一人としてカメオ出演している。
・ワンカットに見える長回しは、当初製作側の上層部に反対されたが、監督の拘りで実現し、これを自然に見せる為、丁寧なリハーサルを二箇月以上重ねたので、編集は僅か二週間足らずで終わった。ただ全編をよく観ると、少なくとも16のシーンでカットされた形跡がある。
・本作はJ.L.ゴダールへのオマージュとして、『気狂いピエロ('65)』や『メイド・イン・USA('66)』等で使用されたフォントをタイトルコール等に使っている。亦、バックステージの廊下のカーペットは『シャイニング('80)』の舞台、オーバールック・ホテルと同じ柄である。
・鑑賞日:2016年2月10日(水)