劇場公開日 2016年3月12日

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「家族、夫婦でも以心伝心はダメ、自分の気持ちは言葉で伝える」家族はつらいよ みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5家族、夫婦でも以心伝心はダメ、自分の気持ちは言葉で伝える

2023年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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全編、落ち着いて、穏やかな気持ちで観ることができた。山田洋次監督の持ち味である、“計算され尽くした台詞、無駄のないストーリー構成”に更に磨きがかかり、完成度が高くなっている。『男はつらいよ』には、熱さ、勢い、があったのに対し、本作には、穏やかさ、落ち着き、がある。山田監督の年齢の違いもあるだろうが、昭和と平成という時代背景の違いが、作風に色濃く投影されている。

本作は、山田洋次監督が最も得意とする喜劇作品である。長男夫妻(西村雅彦、夏川結衣)と孫二人、そして、独身の次男(妻夫木聡)と3世代同居していて、幸せそうに見える老夫婦(橋爪功、吉行和子)。しかし、妻が突然、離婚届けを夫に差し出したことで、混乱した家族が家族会議を開き、老夫婦の離婚を思い止まらせようとする姿をコミカルに描きながら、家族、夫婦のあり方を問い掛けている。

次男の婚約者である看護師役の蒼井優が、勤務する病院での入院患者の状態を申し送りするシーンが興味深い。細かな文字で埋め尽くされたメモがあるにも関わらず、蒼井優は言葉を発することで情報とともに気持ちも込めて伝達している。作品メッセージである言葉を発することの大切さの伏線になっていると思う。

本作では、蒼井優が、作品メッセージの先導役になっている。家族会議では、自らの両親が本音トークで話さずに離婚したのに対し、家族会議での本音トークが羨ましいとコメントする。また、ラスト近くで、老夫婦の夫(橋爪功)に、妻(吉行和子)が本音で離婚を迫っているのだから、夫も本音で妻に向き合うべきだと助言する。どちらのシーンも前述の伏線が効いているので、蒼井優の台詞には説得力がある。

気心が知れた家族、夫婦であったとしても、黙っていても、自分の気持ちは判ってくれるだろう、判って欲しいは駄目。言葉を発しなければお互いの気持ちは絶対に伝わらないという作品メッセージが明確に観客に示されている。

みかずき