「時代劇デビューに 最適の映画です。」駆込み女と駆出し男 年間100本を劇場で観るシネオさんの映画レビュー(感想・評価)
時代劇デビューに 最適の映画です。
まず時代背景を知ってから観ましょう。
江戸時代は天保の改革真っ最中で、男尊女卑。
曲亭馬琴(きょくてい ばきん)の読本、
里見八犬伝の最終話が刊行される少し前の話です。
今は離婚って紙切れ1枚だけど、
江戸時代の離婚は
男側から別れることはできても、
女側からはそれができなかったんですね。
そんな理不尽きわまりない最後の砦に、
徳川家康が作った幕府公認の縁切寺「東慶寺」が舞台です。
kakekomi_sub2_large
けど悲しく重すぎる物語ではなく、
登場人物たちの切なく前向きなエピソードが、
ちりばめられているんです。
それぞれが周りの人々の支えを借りながら、
人生を見つめ直して新しい一歩に向かう。
そんな実直な主人公に、思わず感情移入。
とにかく会話が面白くて、
言い回しもいちいち興味深い。
聞いたことのない言葉が早口でまくしたてられるけど、
大体予想がつくし台詞を聴いていて楽しい。
テンポのいい江戸時代の粋なリズムで、終始はねてるし。
それに加えて、
毒舌な大泉さんのキャラクターが
この世界観にばっちりはまってます。
江戸時代にこんな人いたんだろうなぁってカンジ。
競演陣も豪華ですね。
樹木希林さんはさすがの存在感だし、
戸田恵梨香さんの変っていく様は美しい。
満島ひかりさんの妖艶な熱演には、
引込まれてしまいます。
kakekomi_sub1_large
原田監督の
江戸時代のこだわりぬいたディテールは
当時の生活を浮き彫りにしてて、
様々な発見があって勉強になりました。
火の用心の提灯は、「火乃要慎」って書いてあるし、
治療の仕方もなるほどなぁと思うものばかり。
映像表現にもかなりのチャレンジがあって、
時代劇をいい意味で壊しています。
美しい四季折々の映像も健在。
これぞ邦画の醍醐味ですね。
時代劇はあまり観ないのだけど、
現在とのギャップを楽しみながら
日本文化に触れるのはいい体験でした。
コメディ要素も多いこの作品は、
入門作として最適かもしれません。
ぜひあなたも、
デビューしてみてください。