劇場公開日 2015年5月16日

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「時代劇デビューに 最適の映画です。」駆込み女と駆出し男 年間100本を劇場で観るシネオさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0時代劇デビューに 最適の映画です。

2015年5月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

まず時代背景を知ってから観ましょう。

江戸時代は天保の改革真っ最中で、男尊女卑。

曲亭馬琴(きょくてい ばきん)の読本、

里見八犬伝の最終話が刊行される少し前の話です。

今は離婚って紙切れ1枚だけど、

江戸時代の離婚は

男側から別れることはできても、

女側からはそれができなかったんですね。

そんな理不尽きわまりない最後の砦に、

徳川家康が作った幕府公認の縁切寺「東慶寺」が舞台です。

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けど悲しく重すぎる物語ではなく、

登場人物たちの切なく前向きなエピソードが、

ちりばめられているんです。

それぞれが周りの人々の支えを借りながら、

人生を見つめ直して新しい一歩に向かう。

そんな実直な主人公に、思わず感情移入。

とにかく会話が面白くて、

言い回しもいちいち興味深い。

聞いたことのない言葉が早口でまくしたてられるけど、

大体予想がつくし台詞を聴いていて楽しい。

テンポのいい江戸時代の粋なリズムで、終始はねてるし。

それに加えて、

毒舌な大泉さんのキャラクターが

この世界観にばっちりはまってます。

江戸時代にこんな人いたんだろうなぁってカンジ。

競演陣も豪華ですね。

樹木希林さんはさすがの存在感だし、

戸田恵梨香さんの変っていく様は美しい。

満島ひかりさんの妖艶な熱演には、

引込まれてしまいます。

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原田監督の

江戸時代のこだわりぬいたディテールは

当時の生活を浮き彫りにしてて、

様々な発見があって勉強になりました。

火の用心の提灯は、「火乃要慎」って書いてあるし、

治療の仕方もなるほどなぁと思うものばかり。

映像表現にもかなりのチャレンジがあって、

時代劇をいい意味で壊しています。

美しい四季折々の映像も健在。

これぞ邦画の醍醐味ですね。

時代劇はあまり観ないのだけど、

現在とのギャップを楽しみながら

日本文化に触れるのはいい体験でした。

コメディ要素も多いこの作品は、

入門作として最適かもしれません。

ぜひあなたも、

デビューしてみてください。

年間100本を劇場で観るシネオ