劇場公開日 2015年8月7日

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ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション : 映画評論・批評

2015年8月4日更新

2015年8月7日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

トムが体を張る極限アクションと王道サスペンスの有機的結合

離陸する軍用機のドア外部に張り付き、時速400キロで高度1500メートルに上昇する機体内へ侵入! イーサン・ハント率いるCIAの特殊作戦部IMFが不可能に思える作戦を遂行するスパイアクション物であると同時に、主演のトム・クルーズが自ら高難度のスタントを敢行する姿をとらえる実録としての魅力も併せ持つ本シリーズ。前作「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」のブルジュ・ハリファ(ドバイにある世界一高い超高層ビル)の外壁シーンもスリル満点だったが、それすらも超える極限のスタントを演じてくれるとは!

しかも、本作の目玉の一つである先述のシークエンスは、いきなり冒頭に登場する。いわば最初からエンジン全開で一気に緊張感の高みに至る状態で、もしや推進力が続かず失速?との懸念もよぎるが、そこは「ユージュアル・サスペクツ」でアカデミー賞脚本賞を獲得したクリストファー・マッカリー(本作では監督・脚本)が巧みに舵をきり、視覚的な刺激と知的興奮をコントロールし続けるので頼もしい。

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実際、全編を一貫して牽引するのは、ローグネイション(ならず者国家)と名指される多国籍スパイ集団“シンジケート”、英秘密情報部MI6、IMFそれぞれに属するエージェントたちが機密情報をめぐって繰り広げる王道の智略戦。三つ巴の駆け引きを基軸に、各組織内の力学も加わって複雑にからみ合い、先の読めない展開から目が離せない。ヒッチコックの「知りすぎていた男」を踏まえた歌劇場での要人暗殺計画のシークエンスが象徴的で、誰が敵なのか、誰を撃つべきかとイーサンが葛藤する中盤のハイライトは、サスペンスとアクションに格調高い優雅さまでもが有機的に結びつく印象的な名場面になった。

元のテレビドラマが生まれた1960年代から半世紀が過ぎ、様変わりした国際情勢も反映された。IMFが組織存続のため危機をでっち上げて解決を偽装、つまりマッチポンプをCIA上層部から疑われるくだりなどは、米国からならず者国家と呼ばれ9・11の報復戦を仕掛けられたイラクに大量破壊兵器がなかったこと、アルカーイダにCIAが資金援助していたことを想起させる。善悪が相対化した時代のリアリティーを織り込み、不可能ミッションに真実味を持たせる脚本は、シリーズ最高の出来栄えと断言したい。

高森郁哉

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