岸辺の旅のレビュー・感想・評価
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【黒沢清ワールドを、名優二人が彩る程よいバランスに浸った”あの世”と”この世”の繋がりを見事に描いた作品。】
ー 黒沢清監督が映画化し、第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞した作品。-
<深津絵里と浅野忠信の不思議な夫婦のあり様と、セリフが印象的な”あの世”と”この世”の繋がりを見事に描いた作品。>
<2015年10月2日 劇場にて鑑賞>
いい具合に心に染みる
もう、何回観たことでしょう。
死生観。なんて偉そうなものでもないけれど、自分の感覚にしっくりきて、何度観てもいい具合に心に染みるので。
ぼんやりとした薄気味悪さも、夢とうつつの曖昧なこの世界では当たり前のことのように感じられます。
淡い黄金色に満たされた宴会場の場面は特に印象深いです。
死んだ夫(幽霊)が帰ってきた。そして始まる死者たちとの交流。蒼井優...
死んだ夫(幽霊)が帰ってきた。そして始まる死者たちとの交流。蒼井優と父親役はマジホラー(笑)
一つ一つの話がお子ちゃま脳の私にはあまり面白くなかった。そしてそのまま最後まで。これってハッピーエンド?バッドエンド?
冒頭、「日本・フランス」ってあったところから嫌な予感はしてた。おまえらで感じろ!考えろ!系のなんともフランスっぽい映画。美男美女のフランス人が主演ならもっと評価は高かったかも(笑)
美しい、儚いものに宿命的に共存する「怖い」の表現。
冒頭、クールで強く生きているように見える深津絵里さん演じる主人公が、死んだ夫が突然現れたとたん泣きつくオープニングで一気に引き込まれた。
トラウマに対して素直に悲しむことって、心がタフじゃないと出来ないと思う。そんな悲しみの中におかれた素直で情熱的な女性を深津絵里さんはまさにぴったりという感じで演じているし、夫役の浅田忠信さんも、シャイだけど強いロマンチックな男性を、過剰になり過ぎない演技で演じているなぁと思った。2人の演技が、シュールな作品になんとも言えない気品のようなものを添えていると思う。
時系列や場所などがシーンごとによくわからないように展開することが、この世とあの世の近さを生々しく感じさせていると思う。また怖いとも感じさせるような急な照明の演出が、決してきれいなだけではない日常的な会話の貴重さ、美しさを際立たせていた。当たり前のものの美しさをチープさを出さずに描く事ってきっと凄く難しい事なのだと思う。
全体的に非常にシュールな台詞、展開なのに、すごく気品があって儚くて、この話の世界に引きこまれました。素晴らしい映画だと思います!
分かりやすくするためにいろいろ頑張った結果
主題としてはごくありきたりだと思います。
死者との境界線を少しずらすことで、日常の表皮の下に隠された情念に切り込む。
我々日本人にはもうおなじみの、見慣れた手法でしょう。
問題はこれをフランス人に見せなきゃいけなかったこと。
エンドロールに書いてありましたが、この映画はフランス政府から補助金を貰っています。当初からフランス側で公開されることを前提に製作されねばならなかったのです。
日本人であれば、死者の世界とのつながり方については、幾重にも共有された前提があり、自由自在にあの世とこの世を往還してもすぐにそれと分からせる手法がいくらでもあります。
でもそれを知らないフランス人にストーリーの展開を分かりやすくするためには、子供にもわかるような「お約束」をいくつも使わねばなりませんでした。
・死者の世界と繋がる時に照明を落とす
・主題が提示されるシーンでオーケストラの音量を上げる
・主人公夫妻が死者の/への思いを救済して回るエピソードの一つ一つに非常に図式化された役割を割り振り、主人公の夫の消滅を予め説明しておく
これが正直、かなりうっとおしい。映画全体が安っぽくなってしまいました。
ただ、主人公夫妻の演技と映像美は素晴らしく、こうした難点を補って余りあると思います。
かなりトウが立ってきた深津の顔をお化粧でのっぺらさせるのではなく、反対に「シミだらけか?」と思わせるほど陰影を濃くして、生者の生々しさを表現しようとしています。
愛人との対決シーンが誰にでも評判がいいのは、深津に対峙する蒼井の顔も同じようにメークされていたからでしょう。
一つの思いだけでこの世に留まっている死者の純粋さ・単純さに比べて、生者はなんと込み入った雑念に満ちていることか。それが生きるということだ、というメッセージなんでしょうね。
泣けます
日本映画は殆ど観ませんが、何となく観てしまった。
深津絵里が上手すぎる。
「悪人」もそうですが、深津絵里が映画の深みを何倍も増してますね。
そして言える事は深津絵里が嫌いであったり、この役が別人であったら評価はかなり下がるのかなと。
ツッコミ所を気にしてる様ではどんな映画も楽しめません。
良かったです。
幽霊らしい所がない幽霊とその妻との旅を淡々としたトーン描いた作品。
淡々とはしているけど終始、緊張感があります。幽霊なのでいつ消えていなくなるか分からないので。。
そんな事を感じながら退屈に思えるストーリーが進むにつれ、徐々にその世界観が体に蓄積されつつ自分の経験や思い出もリンクして「どっちも同じ」というセリフがとても素直に入ってきました。
泣けてきたり、ゾクッとしたり、ちょっと乗れないなぁと現実に引き戻されたり。。(笑)
ともあれ良い映画だと思います。
死んだ者と残された者
まだこの世に思いの残る死者と、残された者の死を受け入れるまでの気持ちの動きをゆっくり穏やかに描いている。
と言うと聞こえは良いが、抑揚も無く、無理に盛り上げようとする音楽も何だかしっくりこない。
つまらなかった。
ほんの一瞬出て来た蒼井優のシーンだけがやけに印象的。
浅野の乏しい表情が裏目に
タイトルとあらすじから良さそうだと思いましたが、凄くつまらないです。幽霊というよりは一時的に帰ってきた人という事はまあわかります。あらすじには世話になった人を訪ねていくとありますが、そんな話だっけと思うほどぼんやりした展開で大した事はないです。劇中の講演も取って付けたような演技と内容で面白くなく、わざわざ帰ってきたのに本当に心からこれがやりたい&皆は聞きたいと思っているのでしょうか。同じ監督の「クリーピー」で西島秀俊が犯罪心理学を講義しましたが、それにすら大きく劣ります。日本人夫婦の淡々とした日常を見せられるのは、カンヌのごく一部のマニアックな人々にとっては「ある視点」としてまるで宇宙人がサンプルを監視するかのように興味深かっただけなのではないでしょうか。「寄生獣」でも人外の怪物として共演した主演の二人ですが、浅野忠信は表情に乏しいので、深津絵里がいくら頑張っても帰ってきた夫の愛おしさは全く伝わってこず、つまらなさに拍車をかけたと思います。
人と人の縁って不思議ね
湯本香樹実の原作を読んだほうがいいのか。
フルオーケストラの音楽が大仰
深津絵里と蒼井優の女のたたかい
深津絵里のベッドシーンはやっぱりあっさり
いつもの上までボタンを留めたシャツ
彩度を抑えた画はいい感じ
この世の人とあの世の人
Jホラーの巨匠が心血を注いだ美しきラブストーリー
今回は劇場へ出向くのに正直、躊躇した。
黒沢清作品独特の心の底にモゾモゾうごめく嫌悪感が後引く余韻がとてつもなく苦手だからである。
『CURE』しかり、『カリスマ』しかり、『アカルイミライ』しかりetc. etc.
でも、やっぱし、行こうと決意したのはカンヌ映画祭で日本人初の監督賞(ある視点部門)受賞したのに琴線が揺れた権威への弱さと、Jホラーの真打が心血を注いだラブストーリーとは如何なるモノかと云う欲求の疼きに尽きる。
結果はってぇっと、大きな期待を応えるワケでもなく、裏切るワケでもない不思議な面白さに終始、支配された後、涙がポロリと一粒落ちていった。
ストーリーはってぇっと、こりゃまた説明が難しい。。。
ピアノ教師の部屋に3年間失踪していた夫が或る日突然、帰ってきた。
戸惑いながらも喜ぶ妻。
しかし、夫は、自分が既に死んだ身であると告白する。
そして、死後の自分が御世話になった恩人に挨拶をしに、夫婦の奇妙な二人旅が始まっていく。
愛してきた人の知らない過去、
死者が見える人間の葛藤。
こんなミステリアスだらけの題材やと、ふと、『シックスセンス』のような不気味な闇の世界を連想したくなるが、重苦しさは一切無い。
生と死を向き合う残酷な現実を、深津絵里、浅野忠信、夫婦其々の感情のフィルターを通す事により、
生命とは何か?
愛情とは何か?
家族とは何か?
について温かい視点で問い、観る者の人生観を見つめ直したくなる奥深さを感じた。
死者と人間とが何の隔たりも無く会話をし、滑稽なまでに交流を深めていく進行形の和やかな持続は、『死神』『野ざらし』『へっつい幽霊』『らくだ』 『地獄八景亡者戯』 etc. 落語における非怪談噺に通ずる愉しさが覗く。
だが、油断してはならない。
そんな愉快な距離感は、同時に、誰が死者なのか解らない猜疑心だらけの世界をも意味しているからである。
自身が死んだ事すら気付かず、漠然とした後悔を引きずりながら、現世に居残る者達の不穏な気持ちの揺らぎを、足音や影で静かに表現する物語こそ黒沢清ワールドの真骨頂とも云えよう。
刹那的な対峙の果てに、幽霊の概念なぞいとも容易く超越し、唯一無二の人間ドラマに到達する。
独り身なので上手く説明できない自分がもどかしいが、究極の夫婦愛が銀幕の向こう側に光を咲かせていると想った。
介護福祉士と云う今の仕事について随分、久しいけど、未だに生と死の境目とは?成仏とは何か?サッパリ見当がつかない。
自分自身が老うと尚更解らないし、其れゆえの恐怖心が加わり、人間は眼を反らし、死そのものをタブー視する。
つまり、死に臆病なのも、興味が湧くのも人間として当たり前の価値観ではなかろうか。
人間にとって、死とは、主が其れまでに出逢い、培ってきた数々の縁に対する大きな一区切りだと私は今作を通して想った。
其んな大切なターニングポイントをいつも傍で見守ってくれる人の存在は羨ましい反面、やっぱし、こそばゆいなと孤独に慣れきった帰り道にポツリ実感するのである。
では、最後に短歌を一首
『悟る窓 瞬く帰路に 抱く光 夢ぞ一粒 終の連弾 』
by全竜
幽霊になった夫との旅
3年前に行方不明になった夫(浅野忠信)が突然、戻ってくる、幽霊で。
妻(深津絵里)は夫と、色んな意味でお世話になった人たちにお礼の旅を始める。
幽霊にした意味がよく分からなかった。
やっぱり最初の5分でわかりますね
少し期待していたのだけど残念。
自分の気に入る映画かどうかは、やっぱり最初の5分でわかりますね。
この女優さんが案外好きなので頑張ってみたのですが、映画として抑揚がなくつらかったです。
映画賞絡みで初めておちました....
いやぁ久びさに辛い映画でした。
結構期待してたんですよ、カンヌの監督賞に。
予告篇も良く出来てたし、
様々な人々との出逢いで生前の夫を
知っていくという物語の設定も
映画向きな気がしてました。
ただ、
ある視点部門というカテゴリーには、
少し嫌な感じがしてたのですが...。
最初の30分でその予感は、
あえなく的中してしまいましたよ。
行方不明の夫が
突然死後の世界から現れて、
状況説明は一切置き去りのまま。
不在の3年間のお話すら、
無視なのね。
現実と虚構と霊界の境が曖昧のまま、
ふわふわとストーリーが
静か静かににながれていく。
驚愕したのは、
なぜか亡霊を
様々な人たちが受け入れてて、
ともに生活しちゃうなんて(笑)
ロジックも軸もないので、
何だかキモチ悪いです。
あれこういうのあったなぁなんて
デジャブなキブン。
そうだ2月に観た「悼む人」と同じだ。
それでもファンタジーに、
振り切るならいいですよ映画だもん。
けどね妻の虚構なのか、
ホラーなのかも中途半端で。
ギミックな驚きも、
怖さもありません。
幽霊と一緒に過ごしている
深津絵里さんは、
動揺するわけでも
葛藤も描くわけでもなく
終始ふつうの人。
だからなのか、
全く感情移入も出来ずじまいです。
死を受容できない狂気から、
幻覚をみたり死者と会話することもあるでしょう。
けどこんな平穏で妄想してる人
ただのサイコパスですぜ。
加えて亡霊の浅野忠信さんも、何だかふつう。
俳優たちは監督が何をやりたいのか
理解出来なかったのかな。
少しぎくしゃくな様子にみえちゃって、
可哀想な印象を受けました。
唯一5分だけ出てきた、
蒼井優さんは凄かった。
意味のない役柄であれだけの印象が残せるのは、
さすがです。
そんなこんなで、
せめてオチに期待してたけど、
あれれという終わり方で。
忙しいなか時間を作って、観に行ったのにね。
その頑張りも虚しく、後半は久びさに落ちてしまいました。
周りを見渡せば、両隣もこっくりですわ。
映画賞絡みの作品は必ず劇場でみるのがコダワリですが、
年に一回はありますね、こういうの。
頭を撫でた犬に噛まれた、残念感でした。
今宵は厳しすぎて、スミマセン。
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