岸辺の旅のレビュー・感想・評価
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原作のほうが良かった
原作は、上質なファンタジーだと思うのですね。(いわゆる普通のファンタジーとは、もちろん違いますが。)
でも、映画は、ホラーになりきれなかったホラー、みたいな感じがしました。
あと、岸辺の旅、というタイトルなのに、原作で描かれたような、常に水音の聞こえるところを旅しているという感じが、ほとんどしませんでした。
ベッドシーンだけは、本当に美しかったです。
これぞ黒沢印の「心霊映画」
心霊映画でロードムービーでラブストーリーで何より傑作。黒沢清の可笑しく美しく恐ろしい死生観に触れる至極の128分。死ぬほどファンタジックな設定ながら隙の無い演出と抑制の効いた演技が奇妙だが確かなリアリティをもたらしている。カンヌ「ある視点」部門監督賞受賞も当然!
誰の目にも明らかなように照明が素晴らしかった。時には笑ってしまうほどわざとらしく光と影を強調することで生と死の香りを常に感じさせるような…
本当に照明が凄い。バカにも凄さがわかるように確信犯的に(これやっぱり誤用ですか?)やってるはず
三宅隆太が言うところの「心霊映画」のお手本のようだった。つまり「何らかの理由(夫の死)で心の時間が停止してしまった人(深津絵里演じる妻)が再び時間を進める」というもの。とはいえ幽霊も出る!出ずっぱり!
是枝裕和『海街diary』といい黒沢清『岸辺の旅』といい日本が世界に誇る映画監督2人の死生観に触れることができた今年は幸せだったと思う。ちなみにどちらもラストは海が映って終わる。生命が最後に行き着くところを象徴するような…
久々の途中退席。
「岸辺」ってつまり彼岸と此岸(あの世とこの世)の境目なんでしょう?死んだ夫がまだ未練の残る妻を連れて、自身の生前ゆかりのあった土地を案内し、そこの人々と会い、かつての夫の人となりを知る。まあ、スジはわかりますよ。だけど、皆さんのレビューの通りでした。極力期待をかけずに行ったのに、それでも、なんだこれ!?とがっかりしてしまいました。いたるところで、設定に無理無茶が多くて、どっちつかず。セリフも陳腐。「先生」と呼ばれて久々の講義をしたところで、そんな宇宙の話、田舎の爺さんやガキがそんなに食いつく話かよ!っていい加減頭にきて、カオルと死んだ旦那の猿芝居を見せられてもう我慢が出来ず、僕は怒って出て行っちゃいました。昼間せっかく時間をとって観に行ったのに。一日1上映の理由がわかったような気がした。
頭を撫でた犬に噛まれた、残念感でした。
いやぁ久びさに辛い映画でした。
結構期待してたんですよ、カンヌの監督賞にね。
予告篇も良く出来てたし、
様々な人々との出逢いで生前の夫の人物像を
知っていくという物語の設定も
映画向きな気がしてました。
ただ、
ある視点部門というカテゴリーには、
少し嫌な感じがしてたのですが...。
最初の30分でその予感は、
あえなく的中してしまいましたよ。
行方不明の夫が
突然死後の世界から現れて、
状況説明は一切置き去りのまま。
不在の3年間のお話すら、
無視なのね。
現実と虚構と霊界の境が曖昧のまま、
ふわふわとストーリーが
静か静かににながれていく。
驚愕したのは、
なぜか亡霊を
様々な人たちが受け入れてて、
ともに生活しちゃう。
ロジックも軸もないので、
何だかキモチ悪いです。
あれこういうのあったなぁなんて
デジャブなキブン。
そうだ2月に観た「悼む人」と同じだ。
それでもファンタジーに、
振り切るならいいですよ映画だもん。
けどね妻の虚構なのか、
ホラーなのかも中途半端で。
ギミックな驚きも、
怖さもありません。
幽霊と一緒に過ごしている
深津絵里さんは、
動揺するわけでも
葛藤も描くわけでもなく
終始ふつうの人。
だからなのか、
全く感情移入も出来ずじまいです。
死を受容できない狂気から、
幻覚をみたり死者と会話することもあるでしょう。
けどこんなきょとんとして妄想してる人
ただのサイコパスですぜ。
加えて亡霊の浅野忠信さんも、何だかふつう。
俳優たちは監督が何をやりたいのか
理解出来なかったのでしょうか。
少しぎくしゃくな様子にみえちゃって、
逆に可哀想な印象を受けました。
唯一5分だけ出てきた、
蒼井優さんは凄かった。
意味のない役柄であれだけの印象が残せるのは、
さすがです。
そんなこんなで、
せめてオチに期待してたけど、
あれれという終わり方で。
忙しいなかやっと時間を作って、観に行ったのにね。
その頑張りも虚しく、後半は久びさに落ちてしまいました。
周りを見渡せば、両隣もこっくりですわ。
映画賞絡みの作品は必ず劇場でみるのがコダワリですが、
年に一回はありますね、こういうの。
頭を撫でた犬に噛まれた、残念感でした。
どちらかというと和風ホラー?亡くなって初めて知る“夫婦”の形。
【賛否両論チェック】
賛:様々な人々との出逢いを通して、生前は知らなかった夫の人物像を知っていく中で、主人公が“夫婦”について改めて見つめ直していく姿か印象的。
否:展開は極めて静かなので、退屈で眠くなるかも。内容も、見方によっては結構ホラーな印象。
若干設定に無理がある気はしないでもありませんが(笑)、亡くして初めて実感する“夫婦”という存在の尊さが、不思議な世界観の中で描かれていきます。
ただ、どうしても内容が内容なので、結構描写がホラーチックなシーンがあります。その辺り、怖いのが苦手な人には、やや向かないかもしれません。
展開もかなり静かなので、興味を惹かれないと眠くなること請け合いです。ゆったりとした雰囲気で、大切な人をそっと想い直したい。そんなすっごく大人の方向けの作品です(笑)。
あわい
黒沢監督前作『リアル』は、夢と覚めている時の境目が溶けていたが、本作は、生者と死者のあわいを溶かす。
「実は死んでいる」人が出てくる映画はシックスセンスほか結構多く、目新しいものではないけれど。
主人公二人が歩く田園がまるで天国のように穏やかで、ああこれは全員死んでいる人の話なんじゃね?と途中思ったが、そうでもなく。
私はてっきり柄本明や村岡希美も「死んでいる人」なのかとも思ったが、そうでもなく。
誰が死んでて生きているのか?はっきり分かるようで実は分からない。
いや、どう解釈するのが正解か?という類いの映画ではなく、その境目が溶けていくところが面白い。
バイクをかっ飛ばす小松政夫(死者設定・非現実)のシーンは日常的なよくある田舎の風景で、小松が死者だとわかるシーン(現実)はセットで作り物めいている。リアルと非リアルの逆転。
生きている筈の蒼井優が生き霊っぽいというか一番ホラータッチで撮られているのも可笑しくて面白い。生者と死者の逆転。
「はい、ここ怖がる所ですよ!」的な分かり易い怖さは無いけれど。
何気ない夕暮れの公園や、夜の商店街のシーン。言葉では説明できないけれど、何かがちょっと不穏な感じ。果たしてこの世なのか、あの世なのか。現実とも夢ともつかない、絶妙なホラー具合。静かな、そして繊細な映像の差異。
—
生きていようが死んでいようが、「消せぬ思い」というのはあるもので。
「消せぬ思い」は愛なのか執着なのか?そのあわいも贖罪とともに溶けていく。
「消せぬ思い」を核としたド直球のラブストーリーだったなあと思う。
前作同様に、誰かを「赦すチャンス」と、誰かから「赦されるチャンス」を描いた映画なのかなあとも思った。普段の生活ではそういうのって中々難しくって、わだかまりが溶けないままのことも多い。だからこそ心に染みる映画だった。
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追記
浅野さん小松さんの「フラがある感じ」は幽霊だからなのか、なんなのか。おかしみもあって良かった。
追記2
肉体の実存を生業としている首藤さんが一番肉体感がなく幽霊っぽいところも良かった。首藤さんが演じた幽霊には成仏してほしいなあ。
追記3
最近、葬式があった身としては、不思議と励まされる映画だった。黒沢清に励まされる日が来るとはビックリだ。
ファンタジーやホラーを感じさせない。
監督の黒沢清は尊敬する評論家・蓮實重彦氏の立教時代の愛弟子である。黒沢の作品は初めての鑑賞で、蓮實氏の講義を直接聴いていた作家がどのような映画を撮るのか楽しみだった。
TVドラマみたいな画だなというのが率直な感想である。死んだ夫の亡霊が妻を旅に誘い、そこで彼が人々に会ってもらうという物語は多分に映画的なのだけれど、浅野忠信や蒼井優、柄本明らの好演も素敵だったけれど、幽霊と一緒に過ごしているはずの深津絵里にその不思議な体験をしている人間の高揚感や恐れが見えてこないのは何故だろう。何年か出奔してふらりと生きて帰宅した夫にすらあのような尋常な態度でいられるだろうか。
映画なのだから、嘘八百の作り話なのだから、もっともっと不思議な体験を観客は望んでいるとは思わないのだろうか。
死せる夫とただ虚無空間を彷徨う妻の話
またまた黒沢清お得意の怪談ものかぁ。
でも、今回は、いわば「死んだ夫に連れられての道行の旅」、もしくは「道行からの帰還の旅」のいずれかだろう。
ならば、さしずめ、妻と夫の間でのドラマが展開されるのではありますまいか・・・
といった予想は、巻頭10分ぐらいで裏切られる。
不在の3年間の埋めるドラマが何処にもない。
もう、ひたすら虚無空間を彷徨う旅が続く。
黄泉との境を夫婦で旅するハナシなのかぁ。
死んだひとが、生きているひとに混じって、何気なく生活をしている。
それを誰も疑わない。
あの世とこの世の区別がない世界観は面白いが、なにせドラマとしての対立軸もなければ葛藤がなく、映画が進んでいく。
なんだか、こんなヘンな映画観たような気がする・・・
思い出すと、フランス人監督が阪神淡路大震災をモチーフに死者の魂を描いた『メモリーズ・コーナー』の希薄感を思い出した。
この映画もフランスの資本が入っているもよう。
うーむ、黒沢清監督も阿(おもね)っちゃったのかしらん。
それとも、ここへきて、ドラマを構成できない弱点が露呈しちゃったのかしらん。
深津絵里
1999年の夏休みの少女がモンペ長靴を履いた未亡人になる。彼女は顔や手のアップに耐えうる女優になっている。日本のどこにでもある美しくない風景が、どこにでもある感じに、ダサい感じに、掛け値なくピタリおさまっている。大友良英の時代掛かった音楽含め、まるでダグラスサークかどうかは分からないけれど、凄くエンターテインメント、メロドラマ。餃子屋の女房の美しくない涙、娘の生々しいチェックワンピース、奥貫薫の幸薄な白い顔、すき焼き鍋を投げつけもする小松政夫の怖い顔。なんだか本気。そのカメラワークに、対象の切り取り方に、アップとズームとキスに、ハッとさせられる。
癒やしの怪談譚
昔ながらの映画の生々しさ、リアリティがありました。まさに、監督らしいホラー感が表現されていて、なおかつ、笑えて、涙できて、しかも癒される・・・見事というほかありません。
絵の美しさというものとは縁遠い作品です。しかしながら、力強さはどんなアクション映画だろうが太刀打ちできないものがありました。
深津絵里という女優の素晴らしさが、非常によく表現されていたように思います。彼女の演技ひとつで恐怖し、笑い、涙しました。
すべてカットカットで表現されているように感じて、すげぇなぁと思った次第。
作家の想像力とは?
3年間行方知らずの夫が突然帰ってくる。
「僕は死んでるんだ」その言葉に、その姿に、夢か現実か戸惑う妻。そして「3年間の僕の足跡を追った旅をしてみないか」という言葉に、いまの現実もつまらないしのってみたのだが。
そんな冒頭のシーンから僕は試される。
あなたは現実=ロジックだけで生きているの?
それとも、霊的で幻想的な世界も受け入れるの?
当然、僕は、論理だけではない、情動みたいなものにも左右されるし、幻想的な世界も好きな人間ですよ。とは、答えてみたもののやっぱり、ちゃんとした筋がないと戸惑うよなという自分もいたりして。その世界にどれだけ自分を忘れて、ゆだねられるかというところが大きいわけです。
それでどうだったのか?
ある程度その流れに乗っている自分がいたんだよね。特にピアノのエピソードのところは自然に涙が流れたし。
妻の瑞希がこんな物語ってあり?、と思いながらもその世界を受け入れ、解放されていく様子も見て取れたのだ。それにしては、ラストシーンはちょっとあっさりしすぎだと思ったのは僕だけだろうか。
この作品、第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞したという。映画通には、国際的にもこの死生観は認められたのだろう。これを書いた小説家も、それを映画にしようとした黒沢監督も一般的な人からみれば、風変りな人。でも、アートの観点からは、きわめて想像力の強い人といえるだろう。
とても良い作品でした
一言でいえば夫婦愛を描いた作品となるかもしれませんが、それだけでなく普通の生活やそれにまつわる物事や人への慈しみ、などが描かれていたように感じました。
日本(または東洋)的な死生観もおのずと表されており、その点で河瀨直美監督や是枝弘和監督の近作とも共通するものを感じ、個人的には興味深かったです。
あまり多く黒沢清監督の作品を観ておらず、これが4作目ぐらいですが、断然一番好きな作品でした。
深津絵里は後半になるにつれてドンドン良くなっていったと思います。ラストの2つのセリフには胸が熱くなりました。
大いに評価されるべき作品だと思います。
素晴らしかった。
黒沢監督の作品は非常に好きで、これまで沢山観てきたが、今までの作品に比べとても映画として、強くなったという印象を受けた。
テーマの所為でもあるかもしれないが、大人な作品と、メッセージ性を強く感じた。
またセリフで多く語らせず、役者の表情や演技力で語る、それを映像として映す監督の表現の仕方にも感動した。
そのような意味でも、映画である必然性を感じた。
とても素晴らしい作品でした。
どうしても黒沢ワールドが好きくなれない。
どうしても黒沢ワールドが好きくなれない。分かる奴だけ分ればよい作品を製作する映画監督は、大っ嫌いです!!「トウキョウソナタ」もよく分からんかったが、今回の作品もいまひとつ。まさか黒沢流の死生観を描いた作品でもあるまいし。瑞希が、すりゴマの白玉を作っている最中に優介が現れる。優介の現れ方は、このタイミングで良かったのだろうか?もっと違う手法はなかったのだろうか。この映画は、難解で私には難しすぎたのだろうか?評論家うけする作品だったのだろうか?個人的には、幽霊を出してくるのは、ご都合主義の映画と、つい評価してしまう。女優 深津絵里を出演させる意味もよく分からない。優介のアインシュタインの話も????。光も粒もゼロであり、この世界は、「全てが無である??????」ただの歯科医の優介にそんなことを言われても…。
不思議なストーリー
予告編で、興味があってみました。
不思議なファンタジー的なストーリーでした。
奥さんの思いがゆっくりとした展開で旅?を通して昇華していくような。
現実派には向きませんが、夫婦はいろいろな形がある。
そう思えた映画です。
深津絵里さんの背中、綺麗でした(笑)
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