「まさかガスだとは・・・・」きっと、星のせいじゃない。 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
まさかガスだとは・・・・
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若い二人が出会い、恋に落ち、逃れられない別れを迎える、常道ラヴストーリー。
それが涙の押し売りに感じないのは、二人や周りの大人が現実を受け入れることに前向きだからだ。
ガスの死を迎えるまで、ヘイゼルの取り乱さない行動が切なくってしかたがない。
逃れきれない現実を、懸命に受けとめている姿が愛おしい。
ガスが、「メタファ」だといって火のついてない煙草を口にする。
はじめは、おふざけかカッコつけのポーズかと思っていた。
病が再発したガスは、自分で抗しきれない事態になってはじめて、ヘイゼルにさえ見せなかった弱さを晒す。
それまでの陽気さは、気を張って無理につくっていた虚勢だったのだ。
だけどヘイゼルは(もちろん僕も)、それを攻めるどころか、それまで「陽気なガス」を演じてくれていた勇気に感謝するのだ。
メタファは、つまり、自分への暗示・まじない。それをルーチンにすることで自分をコントロールできていた彼の苦悩が、まざまざと胸にせまってくる。
書きながらふと思った。
あのくそ作家には、酒浸りになってしまった辛い過去(子供が絡んでいる)がある。
酒を飲むことで逃げていた。そんな、人に会わず外出もしなかった彼がガスの葬式に来た。
ヘイゼルには、場にそぐわない無神経な奴に見えたろうが、僕にはあの場にいることの彼の勇気を感じずにはいられなかった。
たぶんあのとき、彼が手にしたボトルには、酒は入っていなかったのかもしれない。
「酒を飲んでいる」というジェスチャーが、彼なりのメタファなのではないかと想像した。
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