アルゲリッチ 私こそ、音楽!のレビュー・感想・評価
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娘が撮ったアルゲリッチ
原題は「Bloody Daughter」。
邦題はまったく作品の内容を表していないし、どのように本作品を解釈しても、アルゲリッチが邦題のようなことを言ったり示唆したりしているようには見えない。
この映画は、娘の一人が、母親であり天才ピアニストであるマルタ・アルゲリッチを追い、その人物に迫る映画であって、アルゲリッチの音楽ではなく、母親であり人間であり女性であるアルゲリッチを描いている。
奔放と言われる人生を送ってきた「天才」の内面を、わずかながらに垣間見ることができる、珍しい種類の作品だと思う。娘でなければ、こうした作品を仕上げることはできなかっただろう。
しかし、アルゲリッチは複数の男性との間にそれぞれ娘を設けており、その誰とも通常の母子関係を結んできたとは言えないので、娘にとってさえ謎めいた存在のようだ。この映画を通しても、アルゲリッチの内面が明らかになるというわけではない。
ただ、アルゲリッチ自身が、幼少期から現在まで、いろいろな葛藤や不安などに直面しながら、自分の人生を生きてきた、ということを、本人の曖昧な語りで察するだけである。
それでも、「普通の人」とは異なる距離感ではあるものの、娘に対する愛情やパートナーとなる男性への思いなど、人間としてのアルゲリッチがクローズアップで描き出されており、とても興味深かった。
子供の時からなんとなく聴いてたシューマンのアルバムが、この演奏家の...
娘が撮った母親の記録
またもや音楽ドキュメンタリーか! リトルグリー モンスター以外の音...
天才ピアニストを母に持った三人の娘たち
アルゼンチン出身の天才女性ピアニスト、マルタ・アルゲリッチのドキュメンタリーで、監督は三女のステファニー。
独特のキャラで、娘三人に守られているようだ。
才能を備えた美人で、いろんな確執があったと思うが、みんなの見つめる目が暖かい。
原題はArgerich!
ホームビデオ?
アルゲリッチさんは余韻を聴かせるよりは華麗なタッチで魅せるタイプのピアニストでエキゾチックな風貌とあいまって日本でもファンが多いですし、映画の中でも来日時の様子が垣間見られます。個人的にはしっとりとした演奏家の方が好みでアルゲリッチさんの熱烈なファンと言う訳ではありません。
さて本題は、主人公が稀代の名ピアニストであればホームビデオでも映画として成立するのか?ですが、微妙です。カメラマンが実の娘でも気を許す素振りは感じられず、いつも素っ気なく答えをはぐらかしてばかりです。三女のステファニーが母に買ってもらった日本製のビデオカメラで家族を撮り始めたのが作品のルーツのようです。自身も母となり、奔放な母の人生に向き合いたくなったのでしょう。
3人の娘は全て父親が違います、娘たちはアルゲリッチが引き取っていますが長女のリダ・チェンは訳ありで幼少期は施設で育てられ里親を転々としたようです。
父母ともに芸術家気質というか音楽以外には無頓着で、娘たちから見れば親の生き方に翻弄されたというのが実感でしょう。
ステファニーが戸籍上私生児のままであることを気に病み父に認知を頼むシーン、父のピアニストのスティーヴン・コヴァセヴィチは大使館のミス、紙切れなどどうでもいいだろうと悪気は無いのだが娘の気持ちさえ汲み取れない様子、そんな親ってあり?
幼少期からコンクール入賞を目指して英才教育を受けてきた歪だろうか、感性が命の芸術家ともてはやされても懐疑的になりそうな子育てエピソードには失望します。
ただ、アルゲリッチのネイルサロンのエピソード、指ごとに違う色にして、左右対称はいやと言った話は娘さんならではのエピソード、如何にもと笑えます。アルゲリッチの奔放な生き方をみるとシューベルトは苦手、シューマンが一番好きというのは分かります、映画には出てきませんが第10回ショパン・ピアノコンクールでの審査員辞退騒動でクロアチアのイーヴォ・ポゴレリチを擁護したのも自由人同士の共鳴と思えてきました、そういった意味では収穫ありかも・・。
人間として「神」を生きるということ
愛、美、自由…神の領域の精神性をこの制限された世の中に降ろす人生を選んだ(あるいは選ばされた)、ひとりの女性とその家族の人生を内側から捉えた素晴らしい作品。
心が揺さぶられ、魂に響く、実に味わい深いドキュメンタリー映画でした。また観たいです。
ピアニストアルゲリッチのプライベート映像
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