悼む人 : 特集
あなたはきっと、“本当に大切な人”を思い出す──
映画のプロも推奨、“良質” “本格派” “本気” “骨太”を求める映画ファンに相応しい1本
天童荒太の直木賞受賞のベストセラー「悼む人」を、堤幸彦監督が「明日の記憶」「くちづけ」の流れをくむ“正統派”スタイルで映画化。高良健吾、石田ゆり子、井浦新、貫地谷しほり、椎名桔平、大竹しのぶほか実力派俳優が集結し、人の繊細な心情を描き出すヒューマン・ドラマの見逃せないポイントとは?

■原作、キャスト、スタッフ、テーマ──
“本物”を求める映画ファンが見るに値する作品に仕上がった
人間の生と死、そして愛に向き合った骨太で正統派な作品が誕生した。「悼む人」は、“本物”の原作、キャスト、スタッフ、テーマによって支えられた、本物志向の映画ファンに相応しい作品だ。
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
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本作の原作は、「家族狩り」「永遠の仔」で知られる天童荒太が2008年に発表した第140回直木賞受賞作「悼む人」。累計70万部突破のベストセラーを天童が記すきっかけとなったのは、9・11アメリカ同時多発テロだったという。多くの命が失われ、世界に不条理な死が満ちていることを痛感した彼は、「各地を旅して死者を悼む人」という着想を得、自らも実際に各地を回って亡くなった人を悼む日々を日記につづった。そうした経験を基に生まれた同作は、東日本大震災によって再び多くの死に向き合うことになった我々の胸に、大きく響く物語なのだ。
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
生と死、そして愛を見つめる真摯な作品には、日本映画界を代表する実力派俳優たちがそろった。“悼む人”として出会う人たちの心に変化を与えていく主人公・静人役の高良健吾、夫を殺した罪にさいなまれ続け、静人と旅することになる倖世役の石田ゆり子を筆頭に、倖世を悩ませる夫の亡霊役の井浦新、静人の妹役の貫地谷しほり、静人の生き方に関心を持つ偽悪的な雑誌記者役の椎名桔平、そして、静人の帰りを待ちながら、最後までガンと戦い続ける母親役の大竹しのぶと、それぞれが登場人物の人生を熱演している。
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
メガホンをとったのは、日本映画をリードするヒット・メーカーのひとり、堤幸彦。「20世紀少年」や「劇場版 SPEC」シリーズなどのエンターテインメント作品が印象深いが、その一方で渡辺謙主演「明日の記憶」や竹中直人主演「くちづけ」など、現代日本の問題に焦点を当てた作品も手掛けている。本作ではその作風をさらに突き詰め、舞台化したほどほれ込んでいた原作を念願の映画化。舞台版でも組んだ大森寿美男(「アゲイン 28年目の甲子園」)が脚本を担当し、相馬大輔(「TOKYO TRIBE」)のカメラが、美しい自然と幻想的なシーンを捉えている。
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人はなぜ生まれ、死んでいくのか。人間の生と死、そして人の営みによって生まれる愛について、真っ正面から向き合うのが本作のテーマ。老若男女、さまざまな登場人物たちの心に抱えた傷を丁寧に見つめていくことで、見る者ひとりひとりが、生と死、愛について思いをめぐらせることを可能にしている。「悼む」とはなにか? それは「亡くなった者が誰に愛され、誰を愛し、どんなことをして感謝されたかを、生者が見つめて記憶しておくこと」だと作品は言う。ズンと胸に来るテーマ性に、誰もが自分自身を見つめずにはいられない。
■あなたは、この映画を見た後に間違いなく思い出す
「誰に愛され、誰を愛していたか、そして誰が本当に大切な人なのか」を
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

あることをきっかけに「死者を悼む旅」を続ける青年、愛するがゆえに夫を殺害した妻、愛する妻に殺されたはずなのに、幽霊としてつきまとう夫、別れた恋人の子どもを身ごもる女、愛など信じられない雑誌記者、余命幾ばくもない母と、本作にはさまざまな立場で「生と死」を見つめる人々が登場する。
その誰もが傷つき、しかし、その傷から逃げることなく向き合おうとする。年代も性別もバラバラな彼らの誰かに、見る者が共感できるのは確かだ。自分の年齢や立場に応じて、自分を重ねてしまうに違いない。
週刊誌のジャーナリスト・蒔野抗太郎(椎名桔平)は、死者を「悼む」ために全国を旅しているという青年・坂築静人(高良健吾)と取材先で出会う。蒔野は残忍な殺人や男女の愛憎がらみのセンセーショナルな記事を得意とし、殺伐とした情報に長年まみれていたことから、人の善意などすでに信じられずにいた。彼は静人の「悼む」という行為も単なる偽善ではないかと疑いの目を持ち、「化けの皮をはいでやろう」と静人の身辺を調べ始める。
なぜ静人は「悼む」のか。我々は蒔野と同じ疑問を持ちながら、物語を見つめていくことになる。だが、やがて静人の悼む行為と、彼の存在によって心に変化が訪れる周囲の人々の姿から、自分自身の内面にも変化がもたらされていることに気づく。そして、「自分は誰に愛されていて、誰を愛していて、誰が本当に大切な人なんだろう?」と考えてしまうのだ。
日々を生きるなかで、つい目をそらしてしまいがちな生と死と愛。あなたにとっての“大切な人”を、改めて自分に問い直す絶好の機会となる作品だ。
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■映画評論のプロフェッショナルも感じた、この“本物感”
そして、“大切な人を思わずにはいられない心情”が湧き上がる!
数々の作品を見つめてきた映画評論のプロには、本作はどう映ったのか。堤幸彦監督が挑んだ“本物”の境地と、作品が訴えかけるテーマ性について、映画ライター・村山章氏が述べた。
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