ぼんとリンちゃん

劇場公開日:

ぼんとリンちゃん

解説

監督デビュー作「ももいろそらを」でみずみずしい青春をモノクロの映像美で描き、第24回東京国際映画祭・日本映画「ある視点」部門で作品賞を受賞したほか、世界各国の映画祭で好評を博した小林啓一監督が、オタクたちの愛と正義をテーマに描いた監督第2作。地方都市に暮らし、年齢は16歳と42カ月と自称している四谷夏子(通称・ぼん)は、同棲中の彼氏から暴力を振るわれているという親友のみゆちゃんを連れ戻すため、ボーイズラブやアニメ、ゲームが大好きなオタクの幼なじみ・友田鱗太郎(通称・リン)とともに東京へやってくる。2人はネットゲームで知り合った友人に協力を仰ぎ、ロールプレイングゲームでボス戦に挑む勇者パーティのごとく、3人でみゆちゃんの家に突撃するが……。

2014年製作/91分/G/日本
配給:フルモテルモ
劇場公開日:2014年9月20日

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(C)ぼんとリンちゃん

映画レビュー

3.5オタク

2022年11月12日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

主人公(佐倉絵麻)はカレシから暴力を受けている友達を救い出すため、東京にやってくる。
連れてきたのは幼なじみのオタク(高杉真宙)だった。
会話劇だけど、驚きに満ちていて、退屈することはない。

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いやよセブン

4.0なんじゃこれ~!!

2022年7月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

庵野以来の天才かもしれない・・・小林啓一・・・このセリフ、全部シナリオに起こして演じさせてたとしたら演者も半端ないし、そもそも全く違う言語体系をこの監督ひとりでセリフに起こしうるのか???起こしうるとしたらやはり天才としか言いようがない太宰治か筒井康隆か・・しかもそれを映像に起こしている・・・・。

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mark108hello

4.5ハートがクソいてーのは君のせい

2022年2月8日
iPhoneアプリから投稿

オタクって生き物は往々にして何もかもに理由をつけたがるんですよね って誰かが言ってた って誰かが言ってた って誰かが言ってた メタの無限後退で言葉はどんどん摩滅していく だからみゆちゃんにぼんちゃんの気持ちは届かない

ぼんちゃんのさらに何が悪いかって 人の話を聞かないこと 他者の世界のなかに妄想的に意味ある場所をつくり上げる絶望的ないとなみをしてるワケ これ鷲田清一の言葉ね

ぼんちゃんはリンちゃんとゲームをしながら「私はすべてをわかりたい わからないものをわかるようにしたい」と言ったけど わかるっていう精神作用は自分の外にあるものを自分なりの機序で自分の中に接収することだから そこにはどうしてもエゴという夾雑物が入り込んでくる

良いコミュニケーションとは 「私の"わかる"」と「誰かの"わかる"」を混同しない客観性ないし良心なんだけど ぼんちゃんにはそれがわからない それでもぼんちゃんが数少ないとはいえ幾人かの友達を持っているのはたぶんリンちゃんのおかげ

リンちゃんはぼんちゃんとは対照的にあんまり喋らない 言葉を煮詰めるだけ煮詰めてからやっと放つタイプ コミュニケーションが遅いだけで 不能というわけじゃない だから厳密にはオタクじゃないっていうか オタクじゃなくてもやっていけるっていうか たぶん数年後には彼女とかいるんだろうな普通に

たとえばべびちゃんと友情の契りを交わしたとき リンちゃんは明らかに困惑めいた表情を浮かべていた 友達になるためにわざわざそんなことする必要ある?的な リンちゃんにはちゃんと人との関わり方がわかってる

リンちゃんはぼんちゃんが行きすぎた言動を取るたびに人間関係の基本事項を示唆的に説いたりしてて まあぼんちゃんはそんなのろくすっぽ聞いてないんだけど でもそのおかげでぼんちゃんはコミュニケーションの端っこになんとかしがみつけている

べびちゃんは筋金入りのエロゲギャルゲーオタで部屋にkiss×sisとか夜明け前より瑠璃色なのポスターをベタベタ貼っている その割に一番マトモにコミュニケーションが取れている オタクコミュニティってほんとに大体こんな感じなんすよね 歳取れば取るほどオタクはどんどんマトモになっていく 社会に出てるからかな

とはいえ若者めいたパッションがすっからかんに消失したわけじゃない むしろ体裁を気にして我慢してることのほうが多い だからべびちゃんはいきなりぼんちゃんに抱きついた 愛の告白をした ぼんちゃんはべびちゃんのことを「性欲の権化」と揶揄したけど あれは本当に可哀想だったな 元はといえばぼんちゃんが「オタクなら自分を貫け」的なことを言ったからべびちゃんは勇気を出して告白に踏み切ったのに あれじゃ浮かばれなさすぎる

性欲を極端に排除しようとするのもオタクの特徴かもしれない 排除というか存在しないものにしようとする しかも自分のことは棚に上げて ぼんちゃんは自分が好きな男性キャラや周りの男をすぐ性的に交わらせようとするくせに べびちゃんの性欲やみゆちゃんのデリヘル勤務には心の底から嫌悪感を示す

みゆちゃんに気持ちが伝わらないのは ぼんちゃんが自分自身の二重性にまったく無自覚的だから というのももちろんあると思う 「とりあえず処女捨ててみなよ」と悪口をぶつけたくなるのもわかる

ぼんちゃんはもともと賢いのだから 自分を神聖視することさえやめればいろんなことがもっとうまくいくと思う ハートがクソいてーというぼんちゃんの言葉は紛れもなく本音だろうけど それ自分自身のせいじゃないすか?負けたり折れたり諦めたりするところから始まる人間関係だって世の中にはある 誰かから必要とされてると思い込むことでなんとか生きてるみゆちゃんは確かにちょっと歪んでるけど じゃあ間違ってるって言い切れる?

ぼんちゃんが主導する自己没入的な物語とは別に ぼんちゃんの妹の佐和子とリンちゃんの妹のくるみによるメタ物語のレイヤーがあるのも面白かった 佐和子とくるみは姉や兄の影響で多少オタクなんだけど 基本的にはただの女子高生で 意味もないことをペラペラ喋ることができる

立ち位置としてはこの映画を見てる我々そのものというか アタシたちオタクだけどちゃんと状況俯瞰できてますよ的な ちょっとズルいポジション でも最終的にはぼんちゃんたちの原物語に引きずり込まれて うっかり死の恐怖なんかを感じちゃったりする これが「この映画を他人事として俯瞰できる人間なんかいないよ お前がオタクである限り」という呪いだと思うとマジで怖い

例に漏れず私もオタクだから冒頭から見知ったボカロ曲がいっぱい流れてつい気持ちが高揚した

ハジメテノオト/malo
未来の歌/malo
巨大少女/40mP
ショットガン・ラヴァーズ/のぼる↑
白い雪のプリンセスは/のぼる↑
モノクロ∞ブルースカイ/のぼる↑
鎖の少女/のぼる↑
恋はきっと☆急上昇/のぼる↑
迷子のリボン/40mP

08〜11年あたりにボカロを聴いてた層にはクリティカルヒットなんじゃないかと思う てかこの選曲の妙はマジで何

かと思いきや中盤でみゆちゃんの元カレが出てきたときは壁に三島由紀夫のポスターやら高倉健主演『日本侠客伝』のポスターなんかが貼ってあって振れ幅のデカさに笑う

『ももいろそらを』で気になったので小林啓一作品を と思ってこれを見たけど こんな手痛いパンチを食らうとは思わなかった やっぱり和製ジャームッシュの名声をほしいままにしている(してるのか?)だけのことはあった いやホントにすごいこの人は

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因果

3.5素晴らしい会話劇ですね。

2021年6月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

小林監督祭り二本目です。できる限り鑑賞したいですね。

やはり小林監督の脚本は見事だなぁと感心です。
セリフやセリフ回しが僕の好みにぴったりなのでしょうかねぇ。本作はヲタクさんたちが主人公です。故に、アニメや漫画ネタのセリフがバンバン飛び交いますし、ヲタクの方々が使っているであろう言葉を多用します。
だから観る方によっては「なんのこっちゃ?」なセリフも多数ですが、僕はそこそこ漫画もアニメも好きですからついていけました(笑)でも、結構良いセリフあるんだなぁ・・ってこれまた感心。

さてさて、「ももいろ〜」鑑賞してから本作だったからかもしれませんが、非常にわかりやすく描かれた作品でした。実と虚、理想と現実、価値観の相違、社会を知るという違和感などなど、なんとも思春期終わりごろの若者なら誰でも通る(であろう)葛藤を描いています。
ヲタクという衣を着た頭でっかち(っぽい)で理想を求める子と、社会での生活という具体的な現実を生きる子の対比でそれらはクライマックスを迎えます。クラマックスは見応えあります。

答えは一つじゃぁないんだよなぁ。。。ってつくづく思いましたよ。みんな、それぞれ、自分の「正」の上に生きていっていいんだと思います。生き方は押し付けられるものではないから。けど、同じだけ気にかけてくれる友人、そばにいてくれる人は大切。・・・結構、ちゃんとしたメッセージが受け取れる作品なのではないかなぁ?って思いました。
あと。。。。大人ってだらしないなぁ、情けないなぁ・・・。世の中の大人ってこう見られているんだろうなぁ・・・しっかりしなくちゃぁな。

会話劇として秀逸ではありますが、それを具現化させる演者さんたちは本当に見事です。しっかりとヲタクです。(僕が持つヲタクさんのイメージ通りってことです)まだ二本目ですが、小林監督はどのように演技をつけているんでしょうね。「きっと居る」って思っちゃうんだよなぁ。凄いなぁ。感心です。
それと、長回し!!長台詞!いやいや、凄いですよ。

非常にスッキリ!楽しめる作品でした。良作です。

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バリカタ