劇場公開日 2015年11月14日

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ローマに消えた男 : 映画評論・批評

2015年11月10日更新

2015年11月14日よりYEBISU GARDEN CINEMAほかにてロードショー

奇想天外なプロットを成立させるのは、じわじわと光る脇の実力者の名演技

選挙を目前に控えたある日、政権交代をめざすイタリア最大の野党を率いるエンリコが突如、ローマから姿を消す。参謀アンドレアはエンリコに双子の兄弟ジョヴァンニがいることをつきとめ彼を代役に立てる。心を病み収容されていた施設を出たばかりのジョヴァンニは、狂気と正気のあわいで歯に衣着せぬ熱弁をふるい、カリスマ的な人気を獲得、低迷していた党の支持率もめきめき上昇してしまう――。

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軽やかに笑いをまぶしつつ真に志ある指導者不在の今を突く映画は、日本の、世界の現実をも痛烈に思わせる。チャップリンの「独裁者」も視界に入れたこの風刺コメディの駆動力となっているのが「イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男」「ゴモラ」「眠れる美女」そして「グレート・ビューティー 追憶のローマ」とイタリア映画をしょって立つ芸達者トニ・セルヴィッロだ。表情筋を駆使して双子の陰陽を絶妙に色づけるおかしくてやがて悲しい快演は、時にやりすぎ感が漂いもする俳優の弱点さえも味方につけて退け難い磁力を発揮する。が、セルヴィッロのこってりと濃い演技の凄みをどこまでも受けの芝居で吸収し、じわじわと光るアンドレア役ヴァレリオ・マスタンドレア(「フォンターナ広場 イタリアの陰謀」)の存在も忘れるわけにはいかない。切羽詰って断行した替え玉作戦の成果についうっとりとなるさりげなくも微笑ましい一瞬。マスタンドレアの演技と見えない演技はぬかりなく観客の気持をそこで象ってしまっている。

いっきに突っ走る奇想天外なプロットを成立させているのが実はそうした衝撃吸収材的役割を確実にきめる脇の実力者。と改めて確認してみると、リーダーと同じ位に今、政治の世界が求めているのもそんな存在――などと、余計なことを口走りたくもなる。ボディブローのように効いてくる原作・脚本・監督ロベルト・アンドの風刺の牙のせいだろう。

川口敦子

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