「前篇のテンポの良さはどこへ?」ソロモンの偽証 後篇・裁判 カルストさんの映画レビュー(感想・評価)
前篇のテンポの良さはどこへ?
前篇では原作の長いエピソードを上手くカットし、テンポのよい作りになっていたと思います。対して後篇はどうにもテンポが悪いと感じました。一番の原因は、裁判シーンだと思います。検事役、弁護人役と証人とのやりとりがいかにもテンポが悪い上、1人の証人尋問が終わったら次の日に場面が移るので、そこでリズムが切れてしまいます。原作ではほぼ1冊を使い切って描写された裁判シーンなので大幅にカットするのは分かりますが、もう少しテンポのよい展開にできなかったものかと思います。例えば、中学生達が元校長を尋問した後、これまでの指導に感謝するシーンは涙を誘いますが、映画としては必要なかったのではないかと思います。同様に、森内元教諭が出廷するシーンも必要ないでしょう。これらのシーンを外せば、森内教諭の郵便受けから告発状を盗み出した隣人との対面シーンも削れますから、この分の時間を尋問シーンに使った方が良かったのでは?
演出についてはもう一つ疑問があります。キーパーソンである三宅樹里ですが、原作を読む限りかなりひどいニキビだったはず。女優さんに遠慮したのかもしれませんが、もっと思い切ったメイクにすべきだったのではないでしょうか。彼女があのような行為に走った動機に関わることなのですから、誰が見ても「ああ、なるほど」と思うようなメイクにすべきだったと思います。あの程度のニキビで、気持ち悪いだのなんだのといじめられるというのは納得いきません。
さて、前篇でいい演技を見せてくれた中学生役の役者さん達ですが、後篇では上手くはまったところとそうではないところがはっきりしてしまい、残念でした。しかし、これは演出と編集の問題でもあるわけで、キャストだけを責めるのは酷でしょう。
最後に、藤野涼子の回想で話を進めるのは悪くないと思いますが、彼女が教職を選んだという設定には違和感がありました。個人的な感想ですが、藤野涼子は教職は選ばないんじゃないかと思います。
色々文句を書きましたが、映画にするのが難しい、あれだけの分量の原作をなんとか前後編にまとめたことはたいしたものだと思います。