劇場公開日 2015年7月25日

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奪還者 : 映画評論・批評

2015年7月21日更新

2015年7月25日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにてロードショー

すべてが失われた世界、その絶望の果ての人間を見すえる終末映画

砂漠の荒ぶる大活劇「マッドマックス 怒りのデス・ロード」、ラクダと犬を従えた女性の自分探しの旅「奇跡の2000マイル」を観ると、オーストラリア映画の大自然はつくづく過酷だと思わされるが、この夏にはもう1本、必見と断じたい映画がある。「シルビアのいる街で」の撮影監督ナターシャ・ブレイアが、決して“詩情豊か”ではなく、ひたすら空虚で荒涼としたオーストラリアの原野と、そこにさまよう男たちを35ミリカメラに収めた「奪還者」である。

アニマル・キングダム」以来となるデビッド・ミショッド監督のこの新作は、いわゆる終末映画なのだが、そこで描かれるのは核戦争や天変地異やウイルスのせいで終わった世界ではない。グローバル経済の破綻によって豪ドルが紙くずとなり、無法地帯と化したオーストラリアが舞台になっている。そこには終末映画ならではの“決死のサバイバル”も“手に汗握るスペクタクル”も一切ない。あらゆる人工物が錆びつき、動物たちが死に絶え、人間の命さえ尊ばれない虚無的な世界を、ざっくりとプリミティヴに描いているのだ。

そんな殺伐とした荒野で、痩せこけた野良犬風のエリック(ガイ・ピアース)と迷子になった小犬のようなレイ(ロバート・パティンソン)がめぐり合う。図らずも旅の道連れとなったふたりは、それぞれの目的を成し遂げるために障害を突破し、奇妙な絆のようなものを育んでいく。しかし、これは単なる男同士の友情劇でも復讐劇でもない。はたして人間は、すべてが失われた空っぽの世界で生きる理由を見出すことができるのか。そんな究極的な問いを追求した終末映画なのである。

オープニングの時点ですでに絶望に染まっている映画は、心のよりどころなき男たちにさらなる絶望を強いていく。希望があるから人間は生きられる、というごく真っ当な考え方を捨て去り、本当に深い絶望のどん底に陥った人間を見すえ、観る者を驚くべきラスト・シーンへと誘っていく。そこに映し出される絶望以外の別の何か、すなわち崇高な瞬間を目撃した筆者は、しばし身震いが止まらない感動に打ちのめされたのであった。

高橋諭治

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