夜に生きるのレビュー・感想・評価
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映像美も楽しめるギャング映画
禁酒法時代のギャングを描く映画というと、古色然とした映像タッチになることが多いが、このベン・アフレック最新作はクリアで高精細な映像美を追求した印象。マイケル・マン監督の「パブリック・エネミーズ」も似た傾向があったが、あちらはデジタルカメラ特有の冷たさが気になったと記憶している。本作はクールだが味わい深い絶妙な映像に仕上げてきたように思う。
中盤まではアクションを比較的抑えめに進めるぶん、終盤のホテルでの銃撃戦シーンが大いに盛り上がる。アフレックの仏頂面も、感情を押し殺すこのキャラクターにプラスにはたらいたようだ。アクションといえば、屋上から人を突き落とすシーンなど、VFXをさりげなく使ってインパクト大の効果を生んでいる点でも楽しませてくれる。
不完全さが味わいのもと
原作はデニス・ルへインの同名小説。
チーム「We love Boston!」による映画制作、という趣なのかもしれない。
観る前は気にもとめていなかったのだが、彼が原作の映画を全て観ていたことにちょっと衝撃を受けた。
私もボストンマニアなのだろうか…。
ボストンでケチな強盗稼業を営んでいたジョーがマフィアとしてのしあがっていく話であると同時に、険しくも厳しい愛に翻弄される話でもある。
「夜に生きる」のジョーは戦地で心に傷を負ったことにより、自分の生きる指針を決めている。
「誰かの決定に従って、望んでもいないことをやって、それで苦しむのはゴメンだ。自分は自分のルールで決める」
その決定は一見ハードボイルドでアウトローな男の生きざまなのだが、もうこれ以上傷つきたくない、という弱さでもある。
その辺が、なんかこう、女心にグッとくるのか、危ない男なのに女性たちはみんなジョーに甘い。「悪い男だけど、好い人」みたいな評価であっという間にラブラブ。
禁酒法時代のアメリカで、宗教や人種の対立も色濃い中、世間のしがらみや常識にとらわれず、自分のルールだけを胸に生きているジョー。
夜に生きるからこそ自由で、夜に生きるからこそ非常な対価を支払う。
日のあたる世界で地道に結果を出した兄との対比が、ジョーの人生の影を際立たせ、そこがとても味わい深い。
私はアウトローな男はあんまり好みじゃないが、ジョーなりにベストを尽くそうという姿勢はなんだか愛しい。
多分、今回制作に名を連ねてるレオ様とかも含め、お気楽ハッピーエンドとはほど遠い「デニスワールド」には映画関係者を魅了する「ひと味違う」感があるんだろう。
何だかんだで全作品観ているあたり、私もその「ひと味違う」感を求めているのだと思う。
昼に生きる者も、夜に生きる者も、痛みとともにある。
どちらを選んでも不完全、だがそこが良い。
ブレンダン・グリーソン祭りー
ベン・アフレックによる語りで進むハードボイルド風作品でもあり、一味違ったギャング映画だった。
簡単には説明できないくらい、人種問題、政治問題が絡んでいて、最初はアイルランド系とイタリア系マフィアの対立というお馴染みの構図から始まり、ベン・アフレック演ずる主人公のジョー・コフリンが父親(ブレンダン・グリーソン)が警察幹部であることから、なんとかマフィアの傘下ではない少人数の強盗グループで生きてこられた。しかも、アイルランド系ギャングのボス・ホワイト(ロバート・グレニスター)の情婦エマ(シエナ・ミラー)と愛し合っているという、一歩間違えれば即暗殺という立場にあった。やがて、ジョー自身はアイルランド系であるものの、愛人関係を嗅ぎつけたイタリア系マフィアのマッソ・ペスカトーレ(レモ・ジローネ)に誘われることになる。そして、情婦エマは自動車事故で死亡・・・
失意のもと、ホワイトに対する復讐心のみでペスカトーレの部下となり、中西部に逃げたホワイトを追うように、フロリダ州タンパを任されることになったジョー。禁酒法時代、密造酒で瞬く間にのし上がっていったジョーだったが、そこでは警察署のフィギス本部長(クリス・クーパー)との密約があったからだ。ボストンでは父親の庇護のもとで刑も軽くなったし、今度は汚職警官かよ・・・といった感じで、とにかく悪はこうして蔓延っていく光景を見せつけられる。
タンパでは仕事仲間であったグラシエラ(ゾーイ・サルダナ)と恋愛関係になったジョー。アイリッシュと黒人という組み合わせも人種問題を打ち破る自由人ぶりだったが、ここでは対立するマフィアもいなくなり、KKKが彼らの行く手を阻むのだった。KKKの白人至上主義はマフィアよりも怖いことを見せつける。ジョーたちが経営するレストランでも平気で銃を乱射し、爆破もする。仕切っているRDという男と交渉しようにも埒が明かない。何しろRDはフィギスの義理の弟だったのだから・・・
そんな困難を打破できたのはフィギスの娘ロレッタ(エル・ファニング)がカリフォルニアで薬物中毒になっていた写真を入手したからだ。なんとかカジノを建設できるようKKKに一撃を与えたのだが、彼女が更生してキリスト教に盲信して聖母のような存在となり、カジノ建設をも思いとどまらせることになる。彼女を殺せば上手くことが運んだだろうにと、やがてボスのペスカトーレが乗り込んでくる・・・
ギャング映画というより、人種問題をテーマにしたジョーの半生といった作品(ただし、ジョー自身は人種のことに無頓着)。タンパの地下通路や脚本家であるジョーの兄なんて伏線もしっかり回収し、冷酷な裏社会の中にあっても愛を貫く男が描かれていた。汚いことは相棒のディオン(クリス・メッシーナ)に任せきりで、人殺しが嫌いだという設定も面白い。最後の映画館ではヒトラーも登場してくるが、第二次大戦までは予測できてなかったんだなぁ。そして、今や日本もギャングが絡んでるカジノを建設できる国になったんだという嘆かわしさ・・・
親と子と、悪と善と
デニス・ルヘインの「運命の日」に続くコグリン家の話。
「運命の日」の映画化をずっと希求するも大作過ぎるからなのか映像化はされず、息子の話の方が映画化された。こちらの原作は積読なのだが、映画はしっかりと楽しめた。
相変わらず登場人物が多く、さらに「皆まで言うな的」な場面転換が続くためで頭の中を整理しながら観ることに。
自由は誰にでもあるが、皆が自由を目指すと悪に、自らの自由を他者のために制約する時は善に、という相反する理不尽さが根底に流れ、それを象徴するような形で物語が進んでいく。
おそらく原作には映画の尺で描ききれない重厚な設定や語り口が満ち満ちていると思われるので本棚から探し出してみよう。
ベンアフレック、昔はスリムだったけど、体型はすっかりオッサンになってしまって、それが気になってやや集中を欠くかな…
淡々と話が進むギャング映画
奇をてらわずクラシカルで美しい
原作を読んでみたくなった。地味ではあるものの画になるし格式を感じる禁酒法時代のギャングモノ。すぐぶっ放さずでもクライマックスでトンプソン撃ちまくる爽快感。
エンディングテーマもあってる。
タンパ、マイアミの川、海、橋の景色が美しい。
最後のシエナミラーのクズっぷりが見もの。イギリスのドーチェスターってそんなに底辺の街なのか。
ゾーイサルダナは相変わらず細い、細過ぎ。
ブレンダングリーソンの親父っぷりがいい。
エル・ファニングも魅せる。
ポスターのシーンがクライマックスとは。
母を失う男家族三代記。
第一次世界大戦に行って誰の命令にも従うのをやめたアウトローの物語。
なるべく人は殺さず正直に夜に生きる。
夜への憧憬
現実味のあるギャング映画
与えられた人生はひとつだけ、それを生きる
禁酒法時代のボストン。父に反発しギャングの世界に足を踏み入れていく男の人生を描く。
「悪事は不況知らずだ」そんな優雅にかます男達も結局、因果応報な運命には逆らえずなんですよね。
禁酒法の時代を詳しく調べてみたら何とも穴の多い法律だこと。
征圧された生活の中で娯楽のお供となる女性たちはどんな存在だったんだろう。
自己主張なんて可能だったんでしょうか。そんなことも考えながらの鑑賞。
原作を読んでみたくなりました。
男性陣のセットアップにハットのスタイルは素敵。
ただエル・ファニングを筆頭に女性キャストをもっと艶やかに撮ってほしかったなぁ。
完全にベン・アフレック堪能目的でしたがやっぱり「パパが好き」に落ち着く。「ゴーン・ガール」のときのダメ男も捨てがたいけれどへたくそに笑う「パパ」なベンアフが好き…!
順当なノワール映画
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