劇場公開日 2017年5月20日

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「ベン・アフレックによる語りで進むハードボイルド風作品でもあり、一味違ったギャング映画だった。」夜に生きる kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ベン・アフレックによる語りで進むハードボイルド風作品でもあり、一味違ったギャング映画だった。

2019年1月1日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 簡単には説明できないくらい、人種問題、政治問題が絡んでいて、最初はアイルランド系とイタリア系マフィアの対立というお馴染みの構図から始まり、ベン・アフレック演ずる主人公のジョー・コフリンが父親(ブレンダン・グリーソン)が警察幹部であることから、なんとかマフィアの傘下ではない少人数の強盗グループで生きてこられた。しかも、アイルランド系ギャングのボス・ホワイト(ロバート・グレニスター)の情婦エマ(シエナ・ミラー)と愛し合っているという、一歩間違えれば即暗殺という立場にあった。やがて、ジョー自身はアイルランド系であるものの、愛人関係を嗅ぎつけたイタリア系マフィアのマッソ・ペスカトーレ(レモ・ジローネ)に誘われることになる。そして、情婦エマは自動車事故で死亡・・・

 失意のもと、ホワイトに対する復讐心のみでペスカトーレの部下となり、中西部に逃げたホワイトを追うように、フロリダ州タンパを任されることになったジョー。禁酒法時代、密造酒で瞬く間にのし上がっていったジョーだったが、そこでは警察署のフィギス本部長(クリス・クーパー)との密約があったからだ。ボストンでは父親の庇護のもとで刑も軽くなったし、今度は汚職警官かよ・・・といった感じで、とにかく悪はこうして蔓延っていく光景を見せつけられる。

 タンパでは仕事仲間であったグラシエラ(ゾーイ・サルダナ)と恋愛関係になったジョー。アイリッシュと黒人という組み合わせも人種問題を打ち破る自由人ぶりだったが、ここでは対立するマフィアもいなくなり、KKKが彼らの行く手を阻むのだった。KKKの白人至上主義はマフィアよりも怖いことを見せつける。ジョーたちが経営するレストランでも平気で銃を乱射し、爆破もする。仕切っているRDという男と交渉しようにも埒が明かない。何しろRDはフィギスの義理の弟だったのだから・・・

 そんな困難を打破できたのはフィギスの娘ロレッタ(エル・ファニング)がカリフォルニアで薬物中毒になっていた写真を入手したからだ。なんとかカジノを建設できるようKKKに一撃を与えたのだが、彼女が更生してキリスト教に盲信して聖母のような存在となり、カジノ建設をも思いとどまらせることになる。彼女を殺せば上手くことが運んだだろうにと、やがてボスのペスカトーレが乗り込んでくる・・・

 ギャング映画というより、人種問題をテーマにしたジョーの半生といった作品(ただし、ジョー自身は人種のことに無頓着)。タンパの地下通路や脚本家であるジョーの兄なんて伏線もしっかり回収し、冷酷な裏社会の中にあっても愛を貫く男が描かれていた。汚いことは相棒のディオン(クリス・メッシーナ)に任せきりで、人殺しが嫌いだという設定も面白い。最後の映画館ではヒトラーも登場してくるが、第二次大戦までは予測できてなかったんだなぁ。そして、今や日本もギャングが絡んでるカジノを建設できる国になったんだという嘆かわしさ・・・

kossy