ジュラシック・ワールド : 映画評論・批評
2015年7月28日更新
2015年8月5日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
スリルとアイディアとノスタルジーに満ちた恐竜王国の見事な復活
22年前、「ジュラシック・パーク」でスクリーン一杯にブラキオサウルスが映し出された時、間違いなく映画の歴史が動き、私たちは生涯忘れることのない驚きを受け取った。
最新作はあの一作目の感触に最も近い仕上がりと、そう断言しよう。シリーズは観客と同じく22年分の歳月を重ね、故ハモンド氏(リチャード・アッテンボロー)の夢は今やテーマパーク「ジュラシック・ワールド」となって結実。堂々たる外観に合わせあのシンフォニーが鳴り響くと、我々の胸中はたちまちノスタルジーと高揚感とで一杯になり、時おり感極まって涙さえ込み上げてくる。
だが、夢と希望は“危うさ”と表裏一体だ。永続的な来場者数の維持を目指す運営会社は、遺伝子操作によって特殊な恐竜を生み出そうと画策。そうやって誕生した凶暴な“インドミナス・レックス”が檻から逃げ出し、園内は未曾有のパニックへと飲み込まれていく−−−。
正直言うと、筆者の懸念は何よりも監督にあった。バトンを受け取ったのは長編第二作目となる新鋭コリン・トレボロウ。さすがに経験不足なのでは……。だが、どうだ!! さすがスピルバーグがその才能を認めただけあって、卓越した語り口に乗せて破格のスリルとアクションをブチかます。前言撤回。この抜擢、大正解だ。
特に後半、畳み掛けるような映像マジックには度肝を抜かれたし、来園者に向けておびただしい翼竜の群れが襲いかかるシーンはヒッチコックの「鳥」のイメージを凌駕するほどのスペクタクルな悪夢に仕上がっている。さらに意表を突かれたのが“ヴェロキラプトル”の登場だ。実はラプトルと人間の関係性はシリーズの一貫した裏テーマでもあった。彼らを忘却することなく、物語にさらなるツイストを仕掛けたところに本作の決定的な勝因があろう。
かくも恐竜たちの大饗宴で人間の色は薄くなりそうだが、そこはクリス・プラットやブライス・ダラス・ハワード、そして芸達者な子役達が飽きさせない。各々が人間性を成長させていく流れもまた見せ場のひとつ。観客も同様だ。大人から子供まで、劇場を出る時に自分が逞しくなったように感じられるのは往年のスピルバーグ映画さながら。さあ、22年目の大冒険が始まる。親子そろって恐竜の咆哮に身をさらす覚悟はいいか。新たな伝説が更新されるのを決して見逃さないでほしい。
(牛津厚信)