どうもさだまさしの小説の映画化作品は性に合わない。
どれも健全な感動作なのだが、何だか綺麗事過ぎて、理想的過ぎて。『解夏』とか『眉山』とか。唯一良かったのは、『風に立つライオン』くらい。
加えて本作は、難病モノ。
こりゃあ何処か説教臭くて押し付けがましい感動メッセージが明白…。
家庭を顧みず、仕事一筋の男。妻との関係は冷え、子供たちともぎくしゃくしている。
そんな時、同居している父親が認知症に。それをきっかけに、家族との関係を見つめ直す…。
話は普遍的で悪くはない。良かった点や突き刺さる点も。
認知症になった父を、家族は誰も介護しようとしない。仕事終わって家に帰り、介護という重労働。軽薄な家族だが、これまで無視してきたしっぺ返し。
しかし、家族は全くの見て見ぬフリという訳ではない。息子が影で介護してくれていた。ダメ息子と勝手に決め付けていたが、初めて知った一面…。
自分の人生の末路や老いも恨まない…そうしみじみと語る老いた父役の藤竜也が悲哀滲ませる。
突然の衝動に駆られたかのように、家族を連れて旅に出る。
父の記憶が失われていく前に、父の思い出の地を。
この旅の中で、息子は協力的。最初は嫌がっていた娘も旅を楽しみ出す。ずっと頑なだった妻も…。
家族がまた、一つになる…。
しかし、どうもここが都合良過ぎ。
これまで散々家庭を顧みないで仕事だけやって来て、突然家族との関係を取り戻そうとする。旅にも半ば強引に連れて行く。しかも、仕事で信頼されている上司から昇進を約束されていたのに、それを捨てるという今までの仕事一筋人間設定は何だったの…? 仕事より家族を選ぶは聞こえによっては尊いが、本作の場合説得力に欠ける自己チュー。
あんなにぎくしゃくしていたのに、あっという間に心を許す家族も家族。
何だかいずれも、都合のいい感動作の為のピースに過ぎない。
可もなく不可もなく…だったが、終わってみると、難点ばかり気になる。
やはり綺麗事事で理想的な都合のいいさだまさし感動作。