プリズナーズ : 特集
~あなたならどうする!? 3つの“心の迷路”に迫れ。~
「レ・ミゼラブル」を機に“迷わない男”に変貌したヒュー・ジャックマンに迫る
ヒュー・ジャックマン、ジェイク・ギレンホール、ポール・ダノ──屈指の実力派俳優3人が演技対決を繰り広げ、全米週末興収ランキングNo.1を獲得した話題のヒューマン・サスペンス「プリズナーズ」が、5月3日に公開。平和な町で起こった少女失踪事件に関わる父親、刑事、容疑者が心に抱える“迷路”とは何か? 父親役を演じたヒュー・ジャックマンに迫る!
■「この映画、ひと事じゃない。」=中身も普通じゃない。
アカデミー賞はじめ数々の賞レースに名を残す全米No.1ヒットの問題作!
もしも、最愛の家族の居どころが分からなくなってしまったら?──誰にとっても切実な、“ひと事ではない”事件を描いた衝撃のサスペンスが誕生した。
ある感謝祭の日、平凡な田舎町の、ある愛にあふれた一家から、幼い娘が消えた。すぐさま現場近くにいた不審者が容疑者として拘束されるが、自白も証拠も得られないまま釈放。有力な目撃情報も物的証拠も一切ないまま、捜査は暗礁に乗り上げてしまう。少女は何らかの事件に巻き込まれたのか? それとも、何か事故に遭ってしまったのか?
「プリズナーズ」は、突然起こった少女失踪事件の行方を、少女の父親と事件を追う刑事の視点から追いかけていく物語だ。何の手がかりも得られないまま、ただ時間だけが過ぎていく極限状態。与えられる情報は少なく、スクリーンからは冷たく重い空気感がかもし出され、少女は無事なのか、拘束された不審者が少女を誘拐したのではないのか、と、見る者までを緊張感の渦へグイグイと引きずり込んでいくのだ。
そのギリギリと歯ぎしりするようなスリルと、先の見えない不安感が描く衝撃は、サスペンス映画の傑作「セブン」に勝るとも劣らないインパクト。さらには、娘を愛するがゆえに常軌を失う父親の姿は、観客の心を揺さぶるヒューマニズムまでを実現し、見事に全米週末興収ランキングNo.1のヒットに輝いた。
娘を奪われた父親ケラー役には「レ・ミゼラブル」のヒュー・ジャックマン。事件を追う刑事ロキ役には、「ゾディアック」のジェイク・ギレンホール。そして、容疑者アレックスには「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のポール・ダノ。この屈指の実力派3人が繰り広げる鬼気迫る演技対決を軸に、ビオラ・デイビス、マリア・ベロ、テレンス・ハワード、メリッサ・レオら実力派揃いの共演陣が濃密なドラマを織りなす。
2010年の「灼熱の魂」でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたカナダ人監督、ドゥニ・ビルヌーブのハリウッド・デビュー作。撮影監督のロジャー・ディーキンスが本年度アカデミー賞撮影賞にノミネートされたほか、トロント国際映画祭、ハリウッド映画祭、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞など数多くの賞で高く評価された問題作を、見逃すわけにはいかない。
■大ヒット作「レ・ミゼラブル」との出合いがジャックマンを変えた
かつてないほどの難役へのチャレンジにも──“迷わない”俳優としての姿勢
「X-メン」シリーズのウルヴァリン役でアクション・ヒーローとしての人気を確立し、「ファウンテン 永遠につづく愛」「オーストラリア」で演技派俳優としての成功も果たしたヒュー・ジャックマン。だが、彼の才能をさらなる高みへと押し上げ、演技者としての新境地を切りひらいたのは、間違いなく「レ・ミゼラブル」だ。
多くの悲しみと絶望を背負い、人間に対する憎悪の塊だった男が、司教の情愛によって改心し、ひとりの娘に絶対的な愛を捧げる聖人として生涯を終える──ジャックマンは、人間の善と悪、すべての感情を内包するジャン・バルジャン役を演じ切り、ゴールデングローブ賞主演男優賞(コメディ/ミュージカル部門)受賞、アカデミー賞主演男優賞ノミネートを果たした。
俳優として“もう迷わない”という信念を勝ち取ったジャックマンが、「ウルヴァリン:SAMURAI」の出演を経て、ついに「プリズナーズ」へとたどり着いた。
本作で彼が演じるのは、愛する娘を突然奪われ、その愛情ゆえに、娘を取り戻したい一心で法とモラルを踏み越えるという父親役だ。
愛と狂気、相反する2つの感情を心に秘めたかつてないほどの難役に、“迷わず”に挑んだジャックマンが見せる鬼気迫る演技は必見。まさに、“新たなる代表作”の誕生と言っても過言ではないインパクトだ。
■娘のためにはどんな手段も。“迷わない”父親=ケラー・ドーヴァー
父として、男として、彼は恐るべきほどの信念と行動を貫く
父として、男として、そして“観客の代弁者”として物語をリードするのが、ジャックマン扮する父親ケラー・ドーヴァーだ。
「もし、最愛の我が子が何者かによって奪われてしまったら、あなたはどうするのか?」という究極の問いに、彼は“迷わない”信念と行動を貫く。だが、それは、容疑者を拉致・監禁し、娘の居どころを白状させるために容赦のない拷問を繰り返すという“狂気”でもある。
事件の捜査開始直後に逮捕された不審者アレックスが、証拠不十分で釈放されても、「あいつが娘に手をかけたに違いない」という直感を信じるケラー。進展しない捜査と、刑事ロキの人を食ったような態度に業を煮やした彼は、怒りと焦燥に駆られてアレックスを拉致する。
廃屋となったかつての自宅に拘束し、顔面が変形するほどに殴りつける。さらには、不自由な体勢で座るのがやっとの監禁部屋を施工し、真っ暗闇にいるアレックスに容赦なく熱湯を浴びせるのだ。「娘を救うのは父親である」との強迫観念に支配され、娘への強い愛をエネルギーに、アレックスへの拷問はエスカレートしていく。
「家族を守らざるをえない男には、激しい怒りがある。それは決して向き合いたくない怒りだが、いったんその感情が芽生えると、子どもを守るためにどこまでやるのか自分でも分からなくなる。僕自身がケラーと同じような行動に出るかどうかは分からない。それこそがこの映画の焦点であり、力強さでもある」というジャックマン。
“迷わない”父親ケラーが、その迷いのない行動の果てに何を見るのか──その結末を、我々も見届けるしかない。