「面白いのは周知の事実。ただ原作と比べると…」風の谷のナウシカ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
面白いのは周知の事実。ただ原作と比べると…
戦争により文明が崩壊した未来を舞台に、辺境の国「風の谷」と大国「トルメキア」の諍いに巻き込まれたナウシカ姫の活躍を描くSFファンタジーアニメ。
監督/原作/脚本は『パンダコパンダ』シリーズの脚本や『ルパン三世 カリオストロの城』の監督を務めた、アニメ界の伝説、宮崎駿。
なお、本作は宮崎駿にとって初の長編オリジナル監督作品である。
原画として、後に日本アニメ界の巨匠となる庵野秀明が参加している。
何度も見ている作品だが、DVD特典の庵野秀明&片山一良さんのオーディオコメンタリーが聴きたくて視聴し直しました。
見直して思ったのは、なんか世界が狭い。
原作では「トルメキア」と敵対する「土鬼」が世界観の構成に一役かっているが、映画版には出ないので小国「風の谷」、大国トルメキアの辺境制圧部隊、工房都市「ペジテ」の小さなコミュニティーの戦いになっている。
2時間の映画にする為に土鬼を削るのは正解だとは思うけど、こじんまりした世界の話になっちゃってる。
脚本もあまり良くないですね。
ペジテ市で発見された巨神兵を本国に輸送するというのがあまり納得できない。
ペジテ市を制圧したのだから、トルメキア軍をペジテに駐屯させてそこで研究させるというのが自然だと思う。
重すぎて輸送機ごと墜落というアホらしさ。
ラストでクシャナが巨神兵を従えていたが、その方法もわかんないし。
クシャナとクロトワは本来すごく魅力的なキャラクターなのに、それが活きていないのも映画版の問題点ですね。
色々と思惑がある人達で、決して悪役ではないはずなのだが、ナウシカの父ジルを殺しているから、最後まですごく悪いキャラクターだと視聴者は感じちゃう。
ナウシカと出逢って変ったような描写もあるが、それも中途半端。
特にクシャナの扱い方には大不満。全然賢く見えないしかっこ良くない!!
巨神兵の扱いもひどい。
物語の起点であり、クライマックスの展開の引き金になった存在にも拘らず、出番はほんの数分で退場。当時のアニメ技術で巨神兵を動かすのは大変だったのだとは思うけど、もう少し活躍させないとダメでしょ。
ラストの王蟲の暴走をナウシカが身体を張って止めるのも、個人的にはあんまり良くないと思う。
原作では自然を弄び戦争の道具にした土鬼はトルメキアの兵士とともに王蟲の波に飲まれる。
人間が自然を支配できると思うなどおこがましいということがここで示唆されています。
それを映画版のように奇跡で解決するのはやはりテーマ性がブレますよね。
そもそも胞子を抱えた王蟲の大群が風の谷の近くまで来ているんだから、あの一帯は腐海に飲まれるわけで、結局谷はもうダメだと思うんですけど…。
原作では王蟲の津波はこれから始まる壮大な物語の序章なのですが、映画ではそれがクライマックスとして語られる。
物語を華麗に終わらせるためにナウシカの奇跡を用いるのはある意味仕方ないのは分かるんですが、やはり安易だな、と思わざるを得ません。
色々と文句を言いましたが、やっぱり大好きな作品です。ダメなところもあるから、愛くるしいというか…。
アニメ映画として、原作の難しい所を排除して大衆的にしなければならないのは仕方ないですし。
ナウシカのキャラクター性は本当に凄い!1984年にこの映画を観た人は心を鷲掴みにされたのではないかと想像します😍
可愛さや格好良さ、美しさ、猛々しさ、父性と母性、エロスとフェティシズムを兼ね備えた本当に凄いキャラクターだ!
声優陣も本当に凄い!納谷悟朗さん、永井一郎さん、家弓家正さんなどの今は亡き名優の演技も素晴らしいですが、やはり島本須美さんは凄い!
普段の可憐なボイスから一変、ガンシップに乗り込んだ時の勇ましいボイスへの切り替えは超一流の仕事!
そして動きの気持ち良さ。執拗なまでに拘る風の描写と、メーヴェやガンシップの緩急のついた作画の凄まじさといったら!
特にアスベルがガンシップに乗ってトルメキアを急襲するシーンの静と動の使い方は最高!
音楽も気持ちのいいタイミングでバシッと挿入される。この時の久石譲は電子音楽に凝っていたのか、そういうジャンルの曲が多かったが、美しい楽曲を聞かせてくれる。
オリジナル劇場作品第1作がこれなのだから、やはり宮崎駿は100年に1人、あるいはそれ以上の天才であることは間違いない!
庵野さん、そうですか!
では、改めて「現在の」庵野さん作品をきちんと観てみようと思います。
ありがとうございます^ ^
押井さんは、今、夢枕獏さんの「キマイラ」を手がけてるハズですよね。
私にとって、キマイラも非常に大好きな大切な作品です。
押井さんの人生経験を経た現在の「答え」を、キマイラで観せて欲しいと思っています。
「巨神兵東京に現わる」ですか。
教えて頂き、今検索して詳細知りましたー。
なるほど、なるほど。
私、庵野さんもエヴァもダメなんですよねぇ。
「世界系」から日本が一気におかしくなってる印象があり(日本に限らず世界的現象のようですが)
宮崎駿さんや富野由悠季さんがエヴァや進撃を否定する倫理観はすっごーくよくわかるんです。
でも庵野さん、私より年上なんですよね。
「風立ちぬ」に「出演」した事やら、宮﨑監督が「クシャナ戦記」許した事やら、庵野さんも初期よりは成長なさっておられるのですかね。95年の時点で判断しちゃいけないか。
宮崎監督は「絵柄が苦手」というだけなのですが、庵野さん、押井さんは様々な点が色々嫌いです。
でも、もし庵野さんが変わったのなら、奥様の安野モヨコさんのおかげでしょうね。
シン・エヴァンゲリオン、観てみようかな?と思いました。
貴重な情報をありがとうございます^ ^
徳間社長が続編を再三依頼しても、宮﨑監督は「漫画でも描き切れなかったものを映画で描けるはずがない」と固辞し、
スピンオフを作らせてくれという庵野 秀明の企画には
「戦争ごっこをやりたいだけ」「くだらない最低のものになるのが決まっている」と断じてるんですよね。
(私も庵野監督ではそうなると思うんですけど)
でも「風立ちぬ」制作時、倒れて命の覚悟をした時に
「自分も亡くなった人の原作で、やりたいようにやっている」
「庵野もそんなにナウシカをやりたいなら、原作通りではなく好きにやってくれ」と許可したんですね。
一昔前ならば、漫画や小説のアニメ化や実写化は酷いものでしたが、最近は「ジョジョ〜」などに代表されるように、原作へのリスペクト溢れる秀逸なアニメ化が増えましたから。
もし庵野監督に「ナウシカ2」をいつか本気でやる気があるならば、原作ファンも満足出来るものに仕上げて頂きたいですね。
映画の感想、
まったく同感です!
特にクロトワとクシャナが残念でなりません。
しかし、宮崎駿という優れた才能を潰さぬ為には、あのタイミングでHITを出させる必要があったのでしょう。
1番悔しかったのは宮崎駿監督ご自身でしょうから、観客としては「歴史に必要だった1ページ」として受けとめるのが良いのでしょうね。
20回以上も見てると、次に出てくるセリフとか覚えてる自分が怖いくらいになります!
1984年に映画館で観ましたけど、最初はノーパン?かと会場がざわついていたことを思い出します。