マイ・マザーのレビュー・感想・評価
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グザヴィエの美しさよ
グザヴィエドランの自伝的な物語で、それを自ら主演・監督・脚本・制作した作品。 それが当時19歳なのだからとんでもない。 シングルマザー・LGBT・思春期が、絡まったような話です。 過干渉気味でマイペースな母。息子の教室やレンタルビデオに怒鳴り込んだりと、エキセントリックな面も。 グザヴィエも思春期が全開で面倒な感じ。 そんな事よりもグザヴィエの美しさに目がいってしまい、インタビューでのアップなどまつ毛の長さにびっくりします。 そもそも二人の合わない感じがものすごく、そんな二人の小競り合いが延々と続きます。 でも本当は二人とも愛していて、それがうまくできなくて一緒にいられない。 家族だからこそ難しい事もあるのですよね。 思春期の葛藤や理由の無い怒りなど、当時抱いていた気持ちをそのままに描いたような無垢なティーンムービーでした。
ドラン監督の原点
ドラン監督の作品はやっぱり音楽の使い方と選曲が凄くいい。場面にバチっと合った曲を入れてくるし、スローモーションや風景と相まって観ている側の感情を鷲掴みにする。 監督の思春期の頃の葛藤がそのまま描かれていて、ペンキのシーンとか、ドレス姿の母親を捕まえようと追いかけるシーンとか、あれは監督があの頃抱いていた感情をそのまま表現したんだろうなと思う。ダイレクトで嘘がない作品。 ちなみに後の監督の作品で同じく母と息子の葛藤を描いた「Mommy」は、本作より脚本も映像も更に洗練された素晴らしい作品となっていている。
【”母は死にました・・”母への嫌悪感と罪悪感の狭間に立つ青年を若きグザヴィエ・ドランが主演・監督・脚本で表現した世界の映画界を驚嘆させた作品。映像、音響を含め、独自の世界観が横溢している作品。】
ー 17歳の青年ユベール(グザヴィエ・ドラン)は、ケベック州の平凡な町で退屈な日々を送っている。 彼は、母親に対する苛立ちを抑えきれない。彼にとっては母親のやる事成す事総てが苛立ちの原因なのである。 父は近くに住んでいるが、別居状態である。ー ◆感想 ・劇中に挿入される”母親が棺桶に入っているショット”や母のお気に入りの皿を割るユベールの夢想シーンの効果的な事。 ・更に言えば、劇中屡流れる、鮮烈なピアノ曲の使い方の巧さ。 ・母が息子の同級生、アントワンの母親から同性愛者である事を知るシーン。 <ユベールが、母親に対し謂れなき憎しみと苛立ちを感じる背景には、自らが同性愛者であることを自覚した理由がある。 その姿を、若きグザヴィエ・ドランが、主演・脚本・監督を兼ねて世に出した事に驚嘆するレベルの作品である。 映像、音響を含め、グザヴィエ・ドランの独自の世界観は今作で、完全に出来上がっている。 世界の映画界が驚いたのも、納得の作品である。>
つらっ…
15歳の関係や感情を19歳でここまで落とし込むなんて4年でこの形に昇華が出来るなんてどう言う事。すげぇなおい。しかも良い絵で撮るなぁ…おい。 若さゆえもありつつ、この関係の上手くいかなさ若さだけとは思えなかった。理解してほしいから理解したいからその内わかるって訳でもないズレに対するモヤモヤが終始襲ってきて辛い…これ言うと思春期引きずってんのって勘違いされそうなのも辛い。 愛があれば片付く話でも話せば分かるなんて話でもない。世間一般の当たり前の愛が振る舞われていないと思う息子と、自分の確たると思う愛の形を変えない母。このジレンマ、世の中母の愛を全人類共通の物として無人格的にしすぎでは? 噛み合わせが悪い事この上ない。 ただの多感な時期の思い出話と言うよりは彼が自身の内面に、そしてそれを表現する事へ向き合わざるを得ない自問自答の原点を見せられた気がする。
どうやって育てたら良いのか苦悩する母親と、そんな母との関係に疲れた息子
思春期の息子と病を抱えた母との すれ違いや苛立ち、もどかしいながらも どこかお互いを思い遣る、母と息子の切っても切れない繋がり。 思春期って、親の言動とかって凄く気になりますよね(笑)。どこか異性(同性)として見ると言うか…自分の感覚と違うことに不快感を抱く…そんな年頃。 余り自分に関心を示していないように見える母親には、自分が同性愛者だということは敢えて言わないけれど、大好きな彼といる穏やかで開放感のある時間と、自由に生きる母親と過ごす時間のギャップがなんとも言えない。 実は、母親には心の病があり 息子も突き放し切れないという苦々しい思いが…。 それが冒頭のセリフに繋がる。 母との関係に疲れながらも、親子って 表面では見えない深い所で繋がってるんだよなって。
まぁ、ある一組の親子の話なんだけど...
息子がゲイとかは置いといて、 あぁ、こんなふうに、うっとおしく感じるわなー、このママの感じは。 でも、息子もたいがいのマザコンだわなー。 なんて、まぁ、ある一組の親子の話なんだけど、 なんだろ、グザヴィエ・ドランが撮ると、めっちゃオシャレなんだよなぁ…。
ドラン監督の母子関係
息の詰まるような母親からの支配と干渉に耐えられなくなる過程と互いへの抑えきれない嫌悪感に苛まれる母子関係がとてもよく描写されていて、ティーンエイジャーが作ったとは思えなかった。監督が自分の子供時代を弔うために作った作品のような気がした。 母子が互いに幸せになるためには離れなければならない、と告げた彼の判断は正しかったと思う。母親を嫌うことに平気な子供はいない。嫌いたくない。嫌う自分は悪い子。苦悩と忍耐の日々。でも、この母親からは独立する以外に、子が自分自身の人生を生きる道はなかったのだと画面から知る。 その後も、理解者である先生が遠くに旅立ったり、頼りにしていた恋人からこれ以上は甘えるなと厳しい言葉を投げつけられたり。現実の厳しさに耐えながら、大人への大きなステップを上ったことを讃えたくなった。
永遠に平行線の親子喧嘩
17歳の思春期真っ只中のゲイの息子と母親2人の複雑な関係を描いた監督の自伝的な映画。 . この世には親と友達のような良い関係が築ける人間と、拗れて拗れまくって上手く会話ができない人間とわかれると思う。私は完全に後者の方なので、この主人公(監督)の気持ちがよく理解できる。 . なにか決定的にダメなことがあるわけじゃないし、親の育てかたが悪かったとも思ってない。劇中に出てくるように、親のことを誰かが殺そうとするならそいつを殺したくなるけど、親は世界で1番嫌いな存在でもある。親と仲良い人には理解できない感情なんだろうな(笑). . 10年前に撮ったこの映画では2人の和解の兆しが見えなかったけど、『ジョン・F・ドノヴァン』では和解をするシーンがあったから、母親との確執は『ジョン・F・ドノヴァン』で多少は昇華されたのかな。 . 劇中にディカプリオへファンレターを送ってたっていうエピソードが出てきたり、主人公の部屋の壁にリバー・フェニックスのでかいポスターが貼ってあったり、最後の母親との昔の映像が『マイ・プライベート・アイダホ』を彷彿させるものだったり、『ジョン・F・ドノヴァン』への伏線があちこちにあって面白かった。 . 19歳のグザヴィエ・ドラン監督、ここらから始まったんだなっていうのを見れて良かった。 .
すごく複雑で深い親子の絆
母親と怒鳴り合いの喧嘩ばかりして自分が同性愛者であることを秘密にしている、というあまり身近ではない設定ではあるけれど作品の中で描かれている主人公の心情描写はすごくリアルで丁寧で自分の10代の頃の反抗期と重なってしまった。 反抗期、思春期という言葉では片付けられない程親が憎くて仕方ないのに、親の愛を心のどこかで欲してしまっている。無くてはならない存在なのに傷つけてしまう。この苦しさに共感できてしまうから、(いい意味で)終始胸が痛んでしまった。 今の私にはユベールに共感することしかできないけれど、もしいつか私が子育てを終える時が来るのならば、もう一度この映画をみたい。複雑な形をした強い愛の物語だった。
母親って難しい
ドランの中でも私の一番好きな作品です。 久しぶりにブルーレイで見ました。 specialと言われることに葛藤を覚える主人公、その愛憎の対象となる母、そして主人公の理解者となるジュリー先生(スザンヌ・クレマン)。 見るのは何度目かだけど、今までは気付かなかったり忘れていたりしたところが多々あって、楽しかったです。 息子がタイタニックを見てディカプリオに英語でファンレターを書いた、と母が言うシーンがあったり。→『ドノバン』 教養あるジュリーの住まいの内装が彼女の出自を表しているのだと発見したり。(ティーカップとかも)。 ユベールは、ジュリーと、俗悪な母を比べてしまいます。彼が詩を書くところは、後の『ロランス』の主人公が詩人になるところに繋がっていくのかな、と思いました。
家族という、学びのメイト
私自身、反抗期がなく、 親との対立というものを 過去にそんなに経験していないので 親子の関係において 共感はそんなにしなかったが、 共感できるできないは 重要じゃない。 私は、兄弟姉妹においては 似たような感情、 家族故の どうしようもないもどかしさ みたいなものは、わかる。 家族じゃなかったら 絶対関わってないだろうに! とか。 昔は仲良かったし、 素敵な思い出もたくさんあるけど、 物理的に、 あの頃には戻れないし。 子どもだったから故の 距離感もあるし。 愛しているけど、愛せない。 愛せないけど、愛している。 血縁関係。 唯一無二の関係。 あとから作れるものではない。 血縁関係があるからと言って ベストな人間関係を築けるかというと そうでもない。 不思議な、関係。 人生というゲームの チームメイト。 グザビエさんの演技は どことなく切なさが、あるよね。 それが色っぽく、湿り気が出て、 惹かれるものがあるんだろな。 ペイントのシーンは いろんな人のレビューでも好評なように、 良いな、って 私も思ったその一人。笑 あのシーンが、 この映画で唯一、 キラキラして、湿り気がなかったよね。
映画は上手だがリアリティは感じなかった
・母親と息子のぎこちない会話はあるあるだが、あんなに怒声を浴びせたり触れあったりはしないのでそこはお国柄なのか? ・何回か母親がコスプレしたイメージシーンが挿入されるが何の効果だろう? ・母子家庭の同姓愛者が感じるマイノリティはどれ程のもんだろう ・劇中にも棺に母が寝てるカットがあったが、副題になってる「僕は母親を殺した」の本当の意味が最後まで分からなかった ・同級生と絵のペイントをしてラブシーンになる時の音楽の掛かり方にセンスを感じた
アーティスティック…
私にとって「Mommy」「わたしはロランス」に続いて3作目の鑑賞になるグザヴィエ・ドランの作品。ストーリーは思春期のゲイの青年とその母親の衝突と愛を描いたもの。 上記の二作品にも共通して言えたことだが、とにかくグザヴィエ・ドランの作品は演出のクセが強い。時々、わけのわからない描写でキャラの心情を描いたりする。でも、色彩での表現であったり、カメラワークが個人的には好みである。 個人的に本作は上記二作品よりストーリーやセリフに魅力を感じなかった。とにかく終始漂う閉鎖感と鬱屈感に襲われる。ただ、キャストの演技は申し分なく、訴えかけるような表情での演技はアンヌ・ドルバルを始め、素晴らしかった。 他の彼の作品も見ていきたい。
じわじわ
はじめは思春期少年と母親の確執の映画だと単純に思っていたけど、見終わってからじわじわきた。 もう一度見て、感動が止まらない。 ペンキのシーンと音楽が美しくて惚れ惚れ。 ユーベルアントナン別れちゃうのかな? 最後わからなかった・・・
ドランの原点
ストーリー 私からしたら本当にダイレクトに今これって感じで、まあ正直映画で見る必要無いくらいなんだけど、それくらいリアルな15歳の少年と親との日常でした。あのビデオカメラの映像があることでさらに共感が生まれますね。もう少し歳をとってこれを観た時に笑って観れるようになったり、親になった時にこういう時もあったなと反省したりしながら観れたら最高だと思う。 台詞 「違いを理解する知性に欠けてるんだ。認めたり反対したりする勇気もない」 「僕が今日死んだら?」 「…明日死ぬわ」 これもう痺れたわ…親心がますますわからなくなる… キャスト ドラン作品に必須なあの女優2人。素晴らしいですよね本当に。女の象徴というか、母の象徴でもあり世界の象徴でもある。非常に重要なふたりですよね。そしてグザビエドラン。美しすぎる。 監督 彼の頭の中を観れるような映画に仕上がってましたな。
甘えん坊なゲイ
グザヴィエの「わたしはロランス 」に「Mommy/マミー」が誕生する為、そんな二作の前進映画的な?彼の記念すべき監督デビュー作。 母親に対しての執着心は恋人や友人、他人に向けられていたら異常に引かれるだろう。 母親、家族だからこそ受け入れられるし、感情を剥き出しに出来る。 母と子の絆、愛情も強く無限ではあるが父親の存在は省かれるような演出が目立つ。 哲学的にゴダールを思わせる?演出描写に面白味がある映像や正面を捉える人物と実験的なグザヴィエのセンスが随所に感じられる反面、音楽を絡めた演出の印象はまだ薄いようにも。 グザヴィエはどの作品にも父親という存在を男性を小っぽけに雑にする。
4.2
今まで一番もどかしくなった映画。息子と母親の愛情が空回りして、ぎすぎすしているのを見ると、悲しいと言うか本当にもどかしくなった。 母親の愛情、又は母親への愛情がテーマであると思うが、そういった愛情はほんとに力強いものだと思う。 主人公と年齢が近いので共感できるところが多くて、今見ておいて本当に良かったと思う。でも文化や境遇の違いから入り込めなかったところもあった。 あとフランス映画全般に言えることだが、なんとなくセンスが光っていて、映画全体的に哀愁を感じる。この映画は特にそうだった。度々流れるピアノのBGMがとても切なくて、心にしみた。 ドラン監督の演技にも驚いた。喧嘩をしているシーンでの白熱した演技には、ぼくまで気まずくなってしまうほどだった。 同じドラン監督の映画「mommy」も母親の愛情をテーマにした映画であるが、「mammy」の方がわかりやすいと思った。でも「マイ・マザー」の方が芸術性が高くて、ぼくは好き。こちらの方が感動は大きかった。(感動を比べることはナンセンスだと思うが)得に、最後の回想のシーン、別荘や岩場で仲良く母親と遊ぶところを見たら胸がじーんとして、目に涙が溜まった。
ドランのすべて、か…
同性愛の感情も、母子家庭の感覚も、自分には理解しきれないものがあるけれども、なぜかこの映画には共感してしまう。 真すっぐに、率直な感情が吐露されていて、こんなにも自らをさらけ出せるものなのかと、ただただ感心するばかり。 丹念に日常を描いているだけで、それが非常に面白い。普通ではない日常だから興味深く見ることができたのかもしれないが、普通のことでも感情を込めることで面白い事柄になるのだと、改めて気づかされる。自分の事を素直に出すことで、物凄い感情を表現できるのだろうが、まぁなかなかこうも素直にアウトプットはできないもの。 これだけドラン自らを出し切った作品であるのだから、これから彼の作品にとっても切り離せない重要なシンボルとなる映画であることは間違いない。
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