劇場公開日 2014年3月15日

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「せっかくの製作陣の想いが昇華されなかったような…」あなたを抱きしめる日まで KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0せっかくの製作陣の想いが昇華されなかったような…

2023年5月16日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

邦題名が「あなたを抱きしめる日まで」
だったので、最後には子供に会えて、
との話かと思い観ていたら、
作品の半ばで彼が死んでいることが判り、
この先はどうなることやらと
案じながら残りを鑑賞した。

途中、英米の文化の違いや
ジャーナリズムと市井の葛藤、
また、LGBTの現状や
性への欲望と純潔性との整合性等、
盛りだくさんのアプローチがあったが、
原作本を書いたそのジャーナリスト役の
言葉からは、
やはり宗教批判の視点からの作品のように
感じられた。

アイルランド修道院の酷い暗黒面を
採り上げた作品だが、
名優ジュディ・デンチを配役した影響が
あってか、生き別れた息子を探す女性が
主役的に扱われ、作品の中でも
米国行きを楽しんでいるのが彼女の方で、
問題により真剣に向き合っているのが
ジャーナリストのように
描いているのだから、
彼を徹底的に主役に据えた方が、
テーマがより明確になったような気がした。

また、各処に見られる微妙に長い間合いが
冗長さを感じさせ、
全体的に演出の妙も感じられず、
せっかくの製作陣の想いが
昇華されないで終わってしまったような
印象を受けた。

 5/17再鑑賞
皆さんの評価が押し並べて高く、
自分の理解が不充分ではなかったのかもと
思い再鑑賞した。
しかし、母親は冒頭から寛容性の高い女性
として描かれている中、
終始、彼女の人間性に変化があったようには
見えない。
むしろ、ジャーナリストが記事にしないと
言ったのは彼女の影響だったのかも
知れないが、
それに対して、彼女が記事にして良いと
事件を明らかにする行為は、
彼女の寛容性とどう関連付けたかったのか、
彼女の社会意識の芽生えとしたかったのか
分からなかった。
結果、今回も感動に繋がらなかったのは、
テーマの深刻さの割には、製作陣に
表現の上での技術的な不足があるように
感じてしまったためだろうか。

KENZO一級建築士事務所
きりんさんのコメント
2023年5月25日

お久しぶりですこんにちは

あのジャーナリストが宗教批判の手を緩めたのは、その宗教に沈溺“盲信”しているフィロミナへの優しさと配慮なのか、あるいは平行線のままで意の通わないフィロミナへの“軽蔑”と諦めからなのか・・
そのあたりは もやもやが残った私の鑑賞後感でしたが、
そこが他作品の「ジャーナリズムがタブーに切り込んで宗教や汚職を追求し、勝訴し、記者がヒーローになる映画」との違いなのだと思いました。
昨今のアメリカ映画的切り口ではない、昔のイタリアやフランス映画的な「不条理劇」の味付けで。

思い入れが強すぎるでしょうかね?
私は解決のないストーリーが好みなところがあるものですから。

ではまた。

きりん