少女は自転車にのってのレビュー・感想・評価
全16件を表示
サウジから生れた傑作映画
スニーカーとデニムを履いたサウジアラビアの少女が躍動する。自転車で男の子と競争したい彼女は自転車を手に入れるために奔走する。戒律の厳しいサウジアラビアでは大っぴらにそんなことはできないが、彼女は持ち前のポジティブさで諦めない。コーランの暗唱大会の賞金に目をつけた彼女は、コーランの猛練習をする。よこしまな動機でコーランを学ぶという皮肉が面白い。
一夫多妻制のサウジアラビアでは父親は常に家にいるわけではなく、別の妻の家と行ったり来たりしている。仕事に出かける時も、自分で車が運転できないので、男性のドライバーを雇わなくてはならない。サウジアラビアでの女性の不遇な扱いを描くことを監督は忘れていないが、告発めいたそぶりをこの映画は見せずに、快活な少女の成長物語としてさわやかに描ききっている。
シンプルでリアルな映像はキアロスタミなどのイラン映画にも近い印象を受ける。子どもたちの自然な佇まいも素晴らしい。
サウジアラビア
自由
サウジアラビアの女性の話。自叙伝?
慣習を守る母と、慣習の枠組みを超える娘の生き方の対比が見事。
しかもこの母子を対立構造で描かない。
慣習から踏み出せなかった母の変化が心に残る。切ないね。
この母子を中心に話が進むが、
慣習をものともしない母の同僚、
そんな同僚を同僚として認めて働く男性職員、
昔は主人公の少女のようだったと語るのに、今は…という校長。
同級生や先輩。
そして父、
少女に恋心を抱く少年、
自転車を、”少女のために”と取っておく店主、
運転手
と様々なスタンスを持つ人々が描かれる。
うん、慣習を守ることを信条とする人、強要する大人もいれば、
あまり気にしない人々もいるんだね。
監督ご自身も、このような国の出身で、USAに留学しているから、皆が皆、この学校で強要されていることに甘んじているわけではなさそうだ。
一夫多妻制も、
アフリカのある国は第一夫人が許可しないと、第2夫人を娶れないとか、
江戸・明治~昭和初期の日本や、昔の中国では、妾がいることが男の財力の証で、正妻はそんな妾をうまく管理することが”よき御寮さん(妻)”の証だったとか、
それぞれの国、時代で変わってくる。
通い婚が普通だった平安時代は、地位は男性に、財産は女性に受け継がれていたから、お互い佳き伴侶を得るために、簡単に他に乗り換えるし、多夫多妻状態もあったようだ。勿論、そこには相手を引き留める駆け引きもあり、相手の不実をなじっている人もいたけれど。
この映画のサウジでは、姑の力が大きくて、基本、日本の武家社会と同じで、跡取りとなる男児を得ることが目的とは切ないね。
女性は子を産む道具という発想なのかな?それは今の日本にも残る発想。
サウジの風習を見られて面白かった。
そして、
この少女を慣習をものともしないで自由へはばたくとみるとすがすがしい映画。
でも、私的には、少女の振る舞いがあざとすぎて、ちょっと評価を下げてしまった。
サウジ版「赤毛のアン」って感じ?
暗唱してやる・・・
男女別学。小学生の頃から別教育になっているだけでなく、いまだ男尊女卑の精神がうかがえる。女が自転車に乗ると子供を産めなくなる!みたいな感じ。大人たちはママをはじめ、そのコーランの世界を受け入れているが、ワジダは自然に振る舞い、それが他国から見ると楽しい。
校長先生も恋人がいるとの噂もある中、ワジダはコーラン暗唱コンクールの優勝賞金が800リヤルだと知り、猛勉強を始める。しかも現代的で、ゲームソフトを使うという珍しさも興味深いところ。見事に優勝したワジダ。しかし、賞金を何に使うか聞かれて「自転車を買います」と言ったところ、「パレスチナに寄付しなさい」と校長の鶴の一声。諦めてたところにママが自転車を買ってくれたのだ。
サウジアラビアを舞台にした平和的な映画だったが、それだけ。もっと中東情勢にも絡んだところを見たかったかな・・・
自転車に乗って「向こう側」まで!
うっわぁ…むちゃくちゃ良い。ホンマに良い。何なの?この、今まで経験したことの無い別質の感動!って言うくらい好き!明確に「名作」と言える名作だった。
ハイファ・アル=マンスールは、このあと「メアリーの全て」を撮ります。いや、分かる。彼女に撮らせた製作陣の判断。もっと撮って欲しくなります。とにかく感動してしまった。
「宗教」が人々を管理支配するための道具となった時、多様性の否定が始まり、暴力に行き着けば、殺し合いが始まる。
女性の権利の話が主題ですが、ムスリムが多様性を許容しない様には、軽い絶望感。こんな生き方、無いから。無い無い無い、絶対に無い。
少女の努力と希望は支配側に砕かれるけど、生き方を変え始めようとする母親が再生してくれる。自転車に乗って、向こう側まで。進め!進め!って応援したくなる、最高を超える最高の傑作だった、オレ的には!
金土と「天気の子」、「彼女は夢で踊る」と来て、コレ。三連続の満点の満足度で、かなり幸せです。
☆☆☆★★★ 《郷に入っては郷に従え》…とは言えども! 文化の違い...
☆☆☆★★★
《郷に入っては郷に従え》…とは言えども!
文化の違いを教えてくれるのが映画の良さでも有ります。
他国の文化をとやかく言う事は出来ない。
日本の常識だって、世界的には非常識極まりない事は数々有るに違いない。
作品中には。遠く離れた地に住む我々にとって、首をかしげざるを得ない事が多々。
しかしそれは、サウジアラビアの人達にとっては、極々普通の考え方に他ならない。
それを意識し。ワジダに感情移入しながらの鑑賞で有れば有るほど、ラストシーンに救われる思いを強く抱く作品ですね。
2018年9月20日 シネマブルースタジオ
・主人公が厳しい決まりにしばられてるというよりも、私が自由気ままに...
本当の世界はどちら?
●戒律と自由と。
コンバースの意味
健やか
サウジアラビア初の長編映画。成る程、私の様なサウジアラビアの歴史的背景・宗教上の規律に疎い者でわ如何とも感想を述べづらい。。。
そんな中ただ一つ、主人公ウジダの感情の動き方は何に対しても flat だと感じた。縛られた社会を良い意味で気にする事なく(それはそれで問題を巻き起こす事もあるが)、欲しい物は全力で欲し、柔軟 且つ穏やかな熱量で確実に手に入れる。そして友達や両親や教頭らとの付き合い方にも全く厭味がない。しかも同級生に比べたら大人びているのに、穏やかでもある。
だから劇的な展開は なくとも観ていて心地好い♪
永い間 此処 日本での生活しか味わっていない私では あるが、ウジダに共感する面が多数あった。
サウジアラビア初の長編映画──。
現地の人々は今作を観て どういった感想を抱くのだろうか。
全16件を表示