「目が離せなかった」フォックスキャッチャー ゆきさんの映画レビュー(感想・評価)
目が離せなかった
フォックスキャッチャー
「マネーボール」「カポーティ」の マネ ・ミラー監督が、1996年にアメリカで起こったデュポン財閥の御曹司ジョン・デュポンによるレスリング五輪金メダリスト射殺事件を映画化し、2014年・第67回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したサスペンスドラマ。
ロサンゼルスオリンピックで金メダルを獲得したレスリング選手マーク・シュルツは、デュポン財閥の御曹司ジョンから、ソウルオリンピックでのメダル獲得を目指すレスリングチーム「フォックスキャッチャー」に誘われる。同じく金メダリストの兄デイブへのコンプレックスから抜けだすことを願っていたマークは、最高のトレーニング環境を用意してくれるという絶好のチャンスに飛びつくが、デュポンのエキセントリックな行動に振り回されるようになっていく。やがてデイブもチームに加入することになり、そこから3人の運命は思わぬ方向へと転がっていく。
スティーブ・カレルがコメディ演技を封印し、心に闇を抱える財閥御曹司役をシリアスに怪演。メダリスト兄弟の兄をマーク・ラファロ、弟をチャニング・テイタムが演じた。
三人の演技がこの映画を支えていました。出だしから、最後まで息がつけない、緊迫感。いつ、どこで爆発してもおかしくない狂気。ラストがわかっていても衝撃的で、余韻がひどく残りました。
特に兄を慕いながらも兄から自立したい、一人の金メダリストとして認められたいチャニング・ティムの演技は、痛々しく、心も身体もボロボロになりながら、試合に立つ様や、兄から、そしてジョンから、逃れたい耐え難い表情など目が離せませんでした。ラストは、事件を本人がどう受け止めたのか、推し測りがたい……なんだか辛くて涙が出ました。
なんとも暗くなる作品ですが、サスペンスとしては、秀逸。